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「”西荻で新しいことやるから来てみない?”って誘われて、ちょっと面白そうくらいな感じで参加しました」元・okatteメンバー 柏井 卓さん【INTERVIEW #05】

2015年4月にオープンしたokatteにしおぎは、もうすぐ10周年。まち暮らし不動産が10年を勝手に振り返る企画として、関わってくださった方へのインタビューを連載しています。第5回は、現在は静岡県伊東市にお住まいの柏井 卓さん。

<柏井さん>
2015年10月 okatteメンバーになる
2016年3月 静岡県 伊東市に引越し。メンバーは継続。
2017年10月 okatteを退会。その後もちょこちょこ遊びに来ている。

聞き手・文:川越恵子(N9.5)
※イニシャルで登場する人の注釈はokatteメンバー向けです


メンバーになったきっかけ

 okatteにメンバーになったきっかけを教えてください。

あんまり覚えてはいないんですが、2013年ごろ、つまりokatteができる2年前ぐらいに「おたがいさま食堂(※1)」だったかな? に行って、それでN9.5(※2)のやってることって面白いねと思っていたら、「西荻で新しいことやるから来てみない」って誘われたような気がします。竹之内さん(okatteの事業主、つまり大家さん)のことも、おたがいさま食堂で知っていて、齊藤さんや竹之内さんがやることなら、ちょっと面白そうくらいな感じで参加したんだと思います。

(※1)阿佐谷おたがいさま食堂:N9.5の齊藤が、2013年からはじめた活動。自宅近くのレンタルキッチンで月1回「ごはんをつくって食べる」だけの会。当時ワンオペ育児だった齊藤が、毎日子供と2人だけになりがちな晩ご飯を地域の人と共同化したらイケてるのではというアイディアから、「自分で自分の暮らしを救うため」に始めた。当時は「子ども食堂」が各地に少し出来始めた頃だったが、作る/作ってもらう、支援する/支援されるのような関係が固定化せず、おたがいさまの関係がよいと思って命名。子連れも単身者も関係なく、なんだかいろんな世代の人が来て、一緒にご飯を作って食べた。その活動がokatteにしおぎの企画にもつながっていく。

(※2)N9.5:いまさら改めてお伝えするのもナンなのですが、株式会社エヌキューテンゴ(N9.5)の不動産業としての屋号が「まち暮らし不動産」です。

 おたがいさま食堂のことは以前からご存じだったのですか。

Facebookで見たような気がします。その前に、齊藤さんとは杉並の別のイベントで先に会っていて、この人面白そうだなと思ったんでしょうね。そういうのなんかあるじゃないですか。それでSNSでおたがいさま食堂を見つけたときに、気になるな、しかもあの齊藤さんがやってるんだ、行ってみようと。

 そういう経緯があったのですね。

なんかね、「おたがいさま食堂」とか、打ち出し方が上手だったような気がします。ぼくは、新しいかどうかはどうでもいいんだけど、なんか価値がありそうだなとか、今からこういう生き方だよね、みたいに感じは大事に思ってて。かといって、精神論的なことではなくて、ちゃんと経済的なことも考えていて。なんかそんなことをやっている人たちだなと思って。この人たちの話だったら聞きたいな、なんか面白いなと思っていました。

2013年ごろの「阿佐谷おたがいさま食堂」。参加者であーだこーだいいながら料理する。
おたがいさま食堂では、「やってみる」を大事にしていた。ちいさな参加者も海苔巻きにチャレンジ。
おたがいさま食堂は、いろいろな世代が参加。親子連れが多い回もある。
参加者が増えすぎて月1回では収まらなくなってきてしまった・・・

だから、話を戻すと、okatteも、不動産のことは詳しくないけれど、シェアキッチンの先駆けだったんだろうなと。いや、それこそ本来のお勝手みたいに、価値自体は昔から全然あることだろうけど、それをやっぱり今作ることの見せ方が上手だなって。まあでも、ぶっちゃけ、N9.5がやってるokatteのワークショップに一回遊びに行ったぐらいのもんです。

そんなに積極的ではなかったと思うんです

 okatteの話に戻していただいて、ありがとうございます(笑)。okatteができる前のワークショップ(※3)から参加されて、okatteができたときのお気持ちはどんなでしたか。

いや、そんなに積極的ではなかったと思うんです。okatteで行われた、おたがいさま食堂にも行っているし、遊びには行ってるんだけれど、メンバーじゃなくても行ける状況があるので、それはそれでいいかぐらいな感じもあったと思います。

(※3)ワークショップ:okatteの計画プロセスでは、プロジェクトチーム(まち暮らし不動産、オーナーの竹之内さん、設計のビオフォルム環境デザイン室山田さん)が、自分たちの目指すものを開示しながら、インタラクティブに計画を進めた。ワークショップ参加者はのべ50人ぐらい。どんなことが起きるかなどを一緒に想像してもらいながら、運営方法を検討していった。

 しばらくしてメンバーになったのですね。

まあ、けじめでしょうね。(笑)僕が言うのもなんだけど、メンバーになってお金(月額会費)を払うってすごく大事な行為だと思います。なんかねえ、それだけですよ。それまでは単発にしか行ってなかったけれど、そこからはちょこちょこ行ってるんじゃないかな。

 現在は静岡にお住まいで、引越しされてもしばらくメンバーだったとうかがっています。

そうですね。時々東京に来ることもあったので、寄ったりしていました。引っ越した時には、静岡にこんなに長くいるつもりもなかったので。

 齊藤が「東京に来るとき、事前に連絡してくれたら会えるのに、急に来る」と言っていました。

会えなきゃ会えないで幸せじゃないですかね。ちゃんと仕事やってるんだな、みたいな。わざわざ居てもらうのもなんだなって。そこまでしなくてもって。

 今は「メンバー」という形ではなくなっていますよね。やめようかなと思われたきっかけは何かあったんですか。

そんな深く考えてないと思いますけどね。でも物理的な距離ってあるじゃないですか。あとは、知らないメンバーが結構増えてきてるんだろうなとか、世代交代かなとか、そんなに行かなくていいかなあとか、フワーンとはしてますね。

花は買わないし、沸点も低い僕が

 okatte で印象的だったことはどんなことでしょうか。

そうだな。竹之内さんの誕生日にね、花を持って行きました。みんなに言わずに自分だけ花を用意して。花を買う人間とかじゃ全然ないんですよ、僕。むしろ人にプレゼントなんてあんまりしないんですけど。多分、やったら面白いかなと思って。あとは、みんなでご飯を食べたこととか、あ、僕、コーヒーカップを、作ってokatteに納品しましたね。竹之内さんから連絡いただいて。

 あのokatteのコーヒーカップは柏井さんの作品だったのですね。形も色も素敵です。

何年か前に、okatteのコーヒーカップがいくつか割れてしまって、okatteの備品として買おうかって言ってたらしいんです。もう僕はメンバーじゃなくなってる頃ですけど。オーナーの竹之内さんからお願いされて、そうそう。作って納品しました。

柏井さんがつくったコーヒーカップ

あとは、そうですね。少し話がずれますけれど。

 はい。

たとえば、普段SNSで何かちょこっと質問すると、レスポンスがいっぱい送られて来ますよね。知ってる人も知らない人も、我こそはと。いろんな意見が集まってきて。みんな「上から」色々教えてくれるんです。それで僕も、それに全てに真摯に応えてみるっていうことを、たまにしていて。

― はい。

この人たちって、その相手の状況を、いや、人って多分相手の状況なんて全く気にしてないんですよね。特にSNSで、顔も見えない状況になると。勝手に「こいつこんな奴」みたいな。俺の方が上だよ、知ってるよって。でもね、僕が知る限り、okatteにいた人たちは上下があんまりないっていうのが一番楽かなと思います。

 あー、なるほど。

これはもしかしたら僕がいま、田舎に住んでるからかもしれないですが。田舎とかSNSみたいに狭い社会だと、なんか俺の方が上だ上じゃないとか、なんかあいつは賢い賢くないとか、あいつは金持ってる持ってないとかになりがちで。でも、okatteは、なんかそういうのがなかったのが、すごい楽しかったかなっていう気がしますね。「この人これ詳しいからちょっと聞きたい」みたいなのがすごく身近にあったっていうのが面白かったかもしれないです。みんな尊敬できるかな、みたいな。みんなが面白かったかな。結局、人ですよね。

 okatteもメンバーの人数から考えたらそんなに広い世界ではないですよね。窮屈に感じなかったのはなぜでしょう。

やっぱり都会だから?(笑)都会の人って摩擦を起こさない技術を結構持っていると思うから、そういうのもあるとは思うけど。でもやっぱり言いたいことを言える雰囲気みたいなのを齊藤さんとか、竹之内さんとかが作ってたんじゃないかなって思いますね。そういうのって、「そういう人を集めよう」と思って集まるものじゃないと思うし。

 そんな中でも、柏井さんは、例えば話が煮詰まったときに、サッと助け船を出すのが上手な人だったとうかがいました。それも、飄々とした感じでと。

いやでも、多分それ、たまたま共通言語っていうか、そういうのを持っている人同士だからできるだけであって、全然それができないことが多いんですよ。
で、僕たぶんね、その時は意識していなかったと思う。今、意識してそれをやろうとすると、できなかったりする。僕ね、結構沸点低い人なんで、カチンってくるんですよ。それが何かこう、共通言語という言葉が正しいかわからないけど、そういうのがあると、頑張らなくても深いコミュニケーションができるっていうのはありません?なんかそれがokatteの人たちとはできてたような気がするかなぁ。なんか不思議なんですけどね。

こういう不思議さの話、竹之内さんとするのも面白かったな。居心地の良さみたいなところはあったかもしれないです。だから多分、「場を収めなければ」みたいなことは意識していない。揉めてりゃ揉めてるでいいじゃん、と思ってるし。自分が気持ち悪いと思ったら言うんでしょ。「それ気持ち悪いっす」みたいなことだと思います。

 言いやすい場所だったということもあるのでしょうか。

そうかもね。意外と言える場所って少ないですよね、実はね。勝手にこっちはブレーキ踏んでる、言ってもしょうがないなみたいな。多いですよね。そういうときって自分でその土壌を作っていくしかない。その土壌のありそうなところに入っていくしかないじゃないですか。

 今もokatte回りでお知り合いになった方と交流されていますか。

えーと、Kくん(※長野の富士見と2拠点居住のメンバー)は長野のおうちに行ったことありますよ。うん。あのー、そうね、ときどきFacebookみると、Nさん(※okatte稲作部を作ったメンバー)が書いてるの、面白いなって思うんです。面白いって思う人、なかなかいないじゃないですか。竹之内さんには最近会ってないかも。そんなにたくさんの人は知らないんだと思います。

 okatteメンバーの人は、柏井さんをご存じの方は多いかもしれません。

okatteの冷蔵庫に竹之内さんが貼ったおしらせ。「元メンバーの柏井さん」が登場する。
なんとなく面白いから貼りっぱなしになっている(笑)

勝手な想像をされているだけかもしれませんけどね。(笑)実際に会ったらどんな表情になるかな。なんか思ってたのと違うなとか、思った通りだなとか。

 今回この記事で写真が載ったら、あの木のお皿の!コーヒーカップの!柏井さん!っていうことになるかもしれませんね。

【柏井さんのベスポジ】

 さて、インタビューの最後に、みなさんにokatteベストポジションをうかがっています。それぞれありそうだなと。

あー。土間だと思います。土間の窓側の席にダラッと座って、畳のほうを見ながら、竹之内さんとコーヒーを飲むとかがいいです。僕は時間帯は昼間が好きかな。夜じゃなくて。

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