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私の家でもあり、みんなの家。だから、直せるならやってみようと思うのかも。

~ 住んでる人に聞いてみた(okatteのシェア住居)~

2015年4月にオープンしたokatteにしおぎは、もうすぐ10周年。まち暮らし不動産が10年を勝手に振り返る企画として、関わってくださった方へのインタビューを連載しています。第10回はokatteのシェア住居に住んでいらっしゃるMさんです。

okatteはシェアハウスでもあります。暮らしている人も「リビングメンバー」というokatteメンバーの一部です。

<Mさん>
2017年 6月 メンバーになる
2019年 8月 okatteのシェア住居の個室に住み始める。

聞き手・文:川越恵子(N9.5)
※イニシャルで登場する人の注釈はokatteメンバー向けです


最初はコスパ的なことを考えていた。

 okatteへの入居より前に、まずはメンバーとしてokatteを利用されていたそうですが、どのようなきっかけでメンバーになったのですか?

最初のきっかけは、手芸をしながらおしゃべりする会みたいなものをやりたいと思って場所を探していたところ、知人が「okatteっていう場所で、手芸をやってる人がいるよ。そこに入ってみたら」と教えてくれたんです。それで手芸をやっている人と会わせてもらいました。2016年ごろだと思います。

ー すぐにメンバーになったのですか?

当時は、住まいがokatteの近くではなかったので、頻繁に来られなくてもったいないかもと思い、メンバーにはならずにゲストとして手芸の会に参加していました。でも、1年ほど経ったころ、思いたってメンバーになりました。

ー どんな心境の変化が?

そうですね〜。もう記憶が曖昧ですが(笑)、最初はアクセスのよさやレンタル料など、場所の使いやすさとか、コスパっていうんですかね、損得みたいなことを考えていたのですが、okatteに行くようになってメンバーと接していると、ここを使っている人たちは、場所を借りて何かをするという意識より、みんなでお金を出し合って場を作っているという意識なのだということが分かってきました。コスパ的なことだけじゃないんだなって。自分もこの中に入ってみたら面白いかもと思いました。あと、メンバーじゃない自分がたまに来て使っているのが、ちょっと申し訳ない感じもして(笑)。

ー メンバーになってからは?

最初は、okatteに行けば誰かに会えるのが面白くて、定例会やお掃除(※)によく行ったり、誰かがやってくれるイベントに参加したり、徐々に馴染んでいったように思います。食べることが好きなので、メンバーと一緒に何かを作って食べる機会が増えました。

※okatteメンバーの「定例会」は、メンバーが「最近気になっていること」「やってみたいと思っていること」を話す会。「そうじデー」は掃除したあと、ご飯をたべる日。いずれも月1回あり、参加できるメンバーが参加するスタイル。ただし、開催日は、隔月で曜日を変えたり輪番で日程調整を行ったり、参加できるチャンスが公平に確保されるよう工夫している。

 メンバーとお料理するのは、okatteアワー(※)の時間が多いですか?

そうでもないですね。okatteアワーは平日の夜でなかなか行けないんです。住んでるのに。休みの日に予約して、メンバーと一緒に何か作って食べるほうが多いです。

(※)メンバーが予約をせずに使える時間(平日の18時~21時)。夕飯どきなので、買ってきたものを食べる人、材料を持参して作る人など、ふらっと来て割り勘でokatteを使うことができる。

初めてのシェアハウス

 okatteに入居されたのは、メンバーになってどれくらい経ってから?

2年ほどでしょうか。その前にも一度、別の部屋が空いたことがあって、そのときも、住んだら面白そうだなとは思ったのですが決めきれず。しばらくして、今住んでる部屋が空くという情報が回ってきたので、今度は引っ越してみようと決めました。

okatteのシェア住居の入り口は向かって左側。シェアキッチン&リビングの入り口とは別になっている。

 okatteに住む前は、シェアハウスではないところで、ひとり暮らしをされていたのですか。

はい。シェアハウスに住むのはokatteが初めてです。

 初めてシェアハウスに引っ越されるときは、どんなお気持ちだったのでしょうか?

メンバーとして、住人さんとも、オーナーの竹之内さんとも不動産屋さんとしての齊藤さんともお会いしたことがありましたし、住んでいる人たちが楽しそうだったので、生活についてはあまり心配していませんでした。それよりも、部屋にモノが入りきるかなとか、okatteには冷蔵庫や洗濯機があるので、使わない家電を処分しなくちゃとか、ちゃんと引っ越しできるかどうかが心配でした。引っ越しが本当〜に苦手なので。

 住む前に、シェアハウスでの暮らしをどんなふうに想像していましたか?

なんか、家でもボロボロの服はもう着れないなとか、どこまでノーメイクでOKかなとか。あらためて見ると私の部屋着、けっこうヨレヨレかもって(笑)。

 なるほど!実際に引っ越してみてどうでしたか?個室から共用スペースに出るときは、一応整えて出る感じでしょうか?

最初は多少整えていたかな? でも、だんだん馴染んで気にしなくなっていった感じです。ほかの入居者さんもわりと同じくらいのテンションで(笑)。リラックスした姿を見慣れているので、逆に外でパリッとしている住人さんの姿を見ると、ハッとしたりします。実際には、思ってたよりひとり暮らしと変わらないというか。

楽しいっていうより、安心・・・かな・・・?

 住んでみてよかったことはどんなところでしょうか。

そうですねー。家のメンテナンスみたいなことって、ひとり暮らしだと全部1人でやらなきゃいけないじゃないですか。管理会社に連絡したり、来てもらったり。以前はそれがすごくストレスだったんです。でも、okatteでは、「あそこ調子悪いよね」ってみんなで共有できたり、グループウェアで、すぐにまち暮らし不動産さんに伝えられるので、ストレスがなくていいなと思います。びっくりしたのは、住人たちで直しちゃうときもあるんです。「それ、自分でやるんだ〜!」って。入居者さんの中にたまたま住宅設備に詳しい方がいて、自分で直してました。事前に状況を聞いたまち暮らし不動産さんは、大丈夫そうなところとわかったら「チャレンジ推奨!ここだけは気をつけて!もしダメそうなら駆けつけるから連絡して!」という感じで、できそうなラインは見極めてるんだと思います。

 住居について、対処するストレスが減ったということですね。

前に住んでいた家でインターホンの調子が悪くなったとき、ひとりでは故障かどうかの判断も不便だったことがあります。管理会社に連絡してもすぐには原因が分からず、結局は電池切れだったのですが、住人は電池が入ってることも入っている場所も知らないので、電池交換だけなのにとても面倒でした。okatteなら、すぐに相談できただろうなと思います。賃貸住宅に住んでいると、「住居のことは大家さんや管理会社の責任」として切り分けることが多いと思いますが、okatteは、みんなで管理してるという気持ちがあるのかなと思います。私の家でもあり、みんなの家だから、みんなで直せるものならやってみようという気持ちになりやすいのかもしれません。

 シェアして住んでいる方とは、どんなときに会ったりしゃべったりすることが多いのですか。

やっぱりキッチンが多いですね。誰かが料理しているときに自分が行ってちょっとしゃべったり、自分が料理していると誰かが来たり。逆に、キッチン以外で会うことがないというか。トイレやお風呂も共用しているけれど、一緒に使うわけじゃないので(笑)。

 そういえば、シェア住居のお風呂って、どういうふうにみなさんで時間を分けているのですか?
 
okatteの、今の入居者間では特に決めていなくて。あの人はなんとなくこの時間に入るから、私はこの時間に入ろうかなというのを感じながら暮らしています。

 それを負担に感じたことはありますか? いつもと違う時間に入りたいときもありますよね。

うーん、なんだろう。空いてたら入っちゃうみたいな(笑)。誰かが入っていたら、そろそろ出てるかなとちらっと見に行ったり。人数が少ないので、そこはそんなに困らないというか。

ー シェアハウスって、意外に普通ですね。勝手に大変さを想像していました。

そうですね。そんな劇的なことは起きないです(笑)。

ー めちゃめちゃ困ったとか、イライラするとかないですか? 例えば・・・冷蔵庫とか。

それがね〜。ないですね〜(笑)。冷蔵庫はみんなで収納を工夫して快適に使っています。何かでもめたりイライラすることもないです。もしなにかあっても、大家さんやまち暮らし不動産さんにすぐに相談できますし。コロナが流行りだした最初の頃は、どうなるかなって少し心配になりましたけれど、あれはちょっとイレギュラーな環境ですし、でも結果的にそれもあまり関係なかったなと思います。おたがい話せる環境があるからかな。

 みなさんで工夫して快適に過ごされているんですね。、Mさんのお話から、近くに知人がいる安心感のようなものを感じます。

そうですね。最初は、楽しそうというイメージで住み始めたのですが、住んでみると、とても安心できるなと思っています。隣に大家さんが住んでいて、他の住人さんたちと、家のことも色々相談できますし、西荻のことも教えてもらえるところがいいなと思います。

キッチンやリビングに誰かが来ているときは

ー 1階のリビングやキッチンにメンバーが来ている気配は感じたりしますか?

誰か来ていれば分かります。最初の頃は少し音が気になった気もしますが、今は全然。誰かいるなっていう感じです。お子さんがすごく元気な時もありますけど、全然嫌じゃなくて、逆に「好きに過ごしておくれー」と思います。メンバーのお子さんかなと思うと、多少気持ちが違うのかもしれないです。シェア住居の他の住人さんの音も、最初は気になったり、自分の音がどれくらい聞こえてるのかなと思った気がしますが、それも、隣の部屋に誰かいるなーぐらいの感じになりました。

 知り合い同士の音だからでしょうか?

生活音に関しては特にそうですね。メンバーがokatteを予約してワイワイしてるのも、グループウェアのスケジュールを見れば何時まで使うのかがわかるので、あまり気にしていません。もしそれが、誰がいつまで何をしてるかが分からなかったら、ちょっと不安になるのかもしれません。お互いがどんな人か知っているので、受け止められるのかなと思います。

ー 住民(リビングメンバー)の方は、他のメンバーが使えない夜の時間、つまり平日の夜9時から翌朝の9時まで、1階のキッチンやリビングを使えるそうですが、よく使われますか?

たまにオーブンを使ったりします。住み始めてすぐの頃は、朝ご飯をokatteのキッチンで食べたりしていたのですが、コロナのときに、みんなそれぞれの部屋で食べるようになってからは、リビングやキッチンで過ごす時間は少し減ったかもしれない。でも、ご飯の後にちょっと作業したり。そういえばクリスマス前は、アドベントカレンダーを作ったりしました。

 クリスマスパーティーがあったんですか?

いえいえ、okatteに来た人が開けたら楽しいかもと、他の住人さんが発案されて、面白そう!と一緒に作りました。去年と一昨年も作りました。小さなお菓子を入れた袋を25個作って、12月1日から25日までの日付を付けて。その日最初にokatteに来た人が開けられることにして、誰も来なかった日は住人が食べて(笑)。誰が来るかは分からないのですが。夜の時間もそういう、何かちょこちょこと楽しいことをしています。
 
 手芸がお好きなMさんらしいですね。okatteのシェア住居に住んでみて、印象的だなと感じることはどんなことでしょうか。

家に居ながらにしていろんな人と会えるってことでしょうか。年上の人も年下の人もいるし、普段友だちとしてはあまり知り合わないような年齢の人と関われるのはすごくいいなと思います。

 手芸部的な活動は、今はされていますか?

しばらくやっていなかったんですが、今はズボンを作る会をやっています。

 あっ! 杉本さん(okatteインタビュー#06)からも少しお話をうかがいました。ズボン作りはMさんの提案で?

そうです、そうです。私が言い出しました(笑)。去年の夏にokatteのメンバーと郡上八幡に旅行に行ったんですけど、石徹白洋品店というところのお洋服がとっても素敵で。でもけっこういいお値段だったので、作り方の本を買って、竹之内さんと杉本さんに「一緒に作りましょう!」ってお誘いしました。

 さすが手芸部。本を見たら作れるぞと思うのですね。

はい、作れると思いました(笑)。みんなで作ったら面白そうだなと。okatteには、元メンバーの方から譲ってもらった職業用のミシンがあるんです。自分の部屋で布を広げようとすると、片づけたり何かを移動させないと始められませんが、okatteのリビングは広いし、気兼ねなく布を広げられるので、作業がはかどります。それで、自室分の部屋用のカーテンを作ったこともあります。

 たしかに!あの広さは裁縫にはありがたいですね。

Mさんのベスポジ

ー 最後に、みなさんにokatteの「ベスポジ」、ベストポジションをうかがっています。Mさんはどこでしょうか。

他の方のインタビューを読んで、「ここからみんなが見えるから好き」という見守り視点のベスポジが多くてびっくりしました。私は、okatteの中から庭に植っている木を見るのが好きです。ここに住んだ理由のひとつでもありますね。ストーブの奥にヤマボウシがあって、例年は冬がとてもきれいなんです。ヤマボウシが見える場所がベスポジです。

窓の外にヤマボウシが見える





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