やりたいことが増えていく。本当の意味の「多目的スペース」。
2015年4月にオープンしたokatteにしおぎは、もうすぐ10周年。まち暮らし不動産が10年を勝手に振り返る企画として、関わってくださった方へのインタビューを連載しています。第7回は昨年の夏にokatteメンバーになった伊藤美渚子さんです。
<伊藤さん>
2023年8月(確認) okatteメンバーになる。メンバー継続中。
聞き手・文:川越恵子(N9.5)
※イニシャルで登場する人の注釈はokatteメンバー向けです
思いのほか自分にマッチしていた。その理由。
ー あの〜、伊藤さんはokatteで「よしこさん」と呼ばれているそうですが。
ええ。あだ名がよしこです。本名はミナコです。以前の職場でついたあだ名で。okatteのメンバーさんも私のことを「よしこ」だと思っていると思います。
ー そうなんですね。じゃあ、今日もよしこさんってお呼びしますね。okatteメンバーになったきっかけはどのようなことで?
最初に興味を持ったのはokatteではなく、八王子のOMOYA(※1)のほうで。その頃、三鷹の端のほうに住んでいたのですが、もう少し郊外のほうに引っ越したいなと思っていたんです。それで、八王子や立川辺りで物件を探していたときにOMOYAに空きが出ていて、面白そうな物件があるなと行ってみたのがきっかけです。
ー 郊外のほうに住みたいと思われたのは?
そうですね〜、どうしても引っ越さなきゃいけないわけではなくて、環境を変えたい、生活リズムを変えたい、それならもっと郊外かなと思って。OMOYAは、結局条件があわなくて引っ越さなかったんですけど、内見に行ったときに、そういうお話をしたら、「それなら西荻にokatteっていうところがあるので、ご興味あればどうぞ」というお話をいただいたんです。
ー そうだったんですね。
はい。それでokatteの説明会に行かせていただいて。ここなら家からも近くて引っ越さなくてもいいし、面白そうと思ってメンバーになりました。
ー 引っ越さなくても生活が変えられそうと感じたのですね。
そうですね。最初に郊外って思ったのも、明確にこういうことがしたいという目的があったわけではなく、何か新しいことを始めるきっかけになればくらいの気持ちだったので。OMOYAを見つけたときに、ファクトリーキッチンがついていたり、住人やメンバーとの共有スペースがあったり、そのスタイルに共感したので、同じようなことが西荻でもできるなら、ここで一回やってみようかなと思いました。引っ越しはやっぱりちょっと大変なので。そしたら、思いのほか自分にマッチしていたという感じです。
ー マッチしたと思われたのは、どんなところでしょうか。
okatteは、「こういうふうに使って」というふうにルールを一方的に決められているわけではなく、その都度使いやすいように、メンバーさんがみんなで主体的に話し合う雰囲気がすごくいいなと思っています。自分が入ってるな、携わっているなと感じられるところですね。okatteとは別の、例えば一般的なイベントスペースでのワークショップやイベントにも参加したことがあるんですが、主催者さんがいて、参加者がいて、立場がはっきり分かれているのがなんとなく嫌で。自分が主催者側に明確になるかと言われると、そこまで明確にやりたいことではないけれど、受け身ではいたくないっていう思いがありました。その距離感がokatteはちょうどよかったと思っています。うまく言語化できているかわからないのですが。
ー ありがとうございます。とてもニュアンスが伝わります。行動や気持ちを振り返って言語化するのはなかなか難しい作業ですよね。
okatteでの隔月出店?
ー よしこさんは、オープンデーで”コーヒー屋さん”をされているそうですね。
はい。私がメンバー説明会にうかがったときが夏で、okatteで流しそうめんをやったお話を聞いて、めちゃくちゃ面白そうだなと思ったんです。今の仕事はIT系なのですが、以前、飲食業をやっていたことがあるので、せっかくだから何かやってみたいなと。飲食を提供する機会は、自分ひとりではなかなか作れるものではないですし、せっかく会費を払ってメンバーになっているので、いろいろできたらいいなと思いました。
ー コーヒー以外のラインナップもあって、美味しくて視覚的にもかわいいお店だと聞いています。
飲食業でコーヒーを淹れていたときに、カフェラテなどミルクが入ってちょっと甘いものが一番よく出ることを経験として知っていたので、そういうものも準備してます。コーヒーをやってる人間はブラックが一番好きなんですけど、コーヒーを推しすぎると近寄りがたい雰囲気になっちゃうかなと思って。それと、オープンデーにはお子さんがたくさん来るので、小さいお子さんが飲めるような炭酸のないジュースみたいなものもいいかなと思いました。
ー なるほど。オープンデーに訪れる人のことを考えたラインナップだったのですね。
あとは、例えば牛乳があったら、カフェラテを作ってチャイも作れるなとか、できるだけ材料を使い回せることと、ワンオペでもいけるかなということを考えてメニューを組み立てるようにしています。
ー 久しぶりに”コーヒー屋さん”をやってみていかがでしたか?
実は、会社にコーヒー好きの人がけっこういて、ハンドドリップで淹れられる環境があるので、コーヒーを人に出すこと自体は久しぶりじゃないんです。でも、人からお金をいただくのはとても久しぶりだったので、やっぱりちょっとドキドキしました。商品として出して大丈夫なものになってるかなと。でも、喜んでもらえて楽しかったです。見た目であんなに喜んでもらえるのが久しぶりだったので、気分が上がりました。
ー 手ごたえを感じられたのですね。
そうですね。知り合いのキッチンカーの手伝いをすることなどはあるのですが、自分でメニューを企画して提供することは、もうあんまりないだろうと思っていたので、それができたことがとても新鮮で、またちゃんと勉強してやってみようかなと思うきっかけになりました。
ー そうなんですね!
はい。とりあえず衛生管理者の資格を取りました。また飲食にかかわることが楽しくなってきました。しっかりやりたいなっていう気持ちです。
ー 他にokatteでは、どのように過ごされていますか。
okatteアワーでメンバーさんが企画してくれるご飯会には、時間が合えば顔を出しています。なかなか都合が合わなんですが、それでも月1くらいは行きたいと思っています。自分では企画してないんですけど乗っかって。何か作って持っていくこともありますし、その場で作ることもあります。調理台が広くて使いやすくて気持ちいいです。餃子をみんなで包んだりとか。あれは楽しかったですね。餃子と言えば、気になってる餃子を色々買ってきて焼いて食べる会もやりました。知らない人とご飯を食べると、どんな話が聞けるんだろうとワクワクします。仕事でも全然知らない人とご飯を食べる機会がけっこうあって、okatteアワーも、その延長というかそれと同じ感覚です。とはいっても、実際によく会うのは10人くらいかもしれない。あとは、最近は土日がめちゃくちゃ忙しくてokatteに全然顔が出せてなかったんですが、できればお掃除(※2)にはいきたいと思っています。
okatteを友だちに説明するとしたら…。
ー もしお友だちに、okatteってどんなところと聞かれたらどんなふうに話しますか?
うーん。それが現在進行形でけっこう難しい質問なんです(笑)。私が隔月でコーヒーを淹れてることを知ってる友人知人は多いのですが、その話をするときにokatteが説明しずらくて。一番表しやすい言葉は「場」だと思うんですが、「場なんです」って言っても絶対伝わらない(笑)。だから、「場」というかスペースを、メンバーになると使えるようになって、そこで何か好きなことをみんな思い思いやってる感じのところ、と説明しています。例えばオンラインって、チャットであったり SNS であったり、何かその「場」というものがあって、そこに人が集まって、みんな好き勝手なことをしているので、okatteはその物理版っていう感じが私の中ではすごく近いです。かつ、キッチンもあって、畳もあって最高、みたいな感じですかね。
ー なるほど~。その表現は面白いですね!
使用用途が決まっていなくて、とりあえず「場所」だけあるっていう状態で、世の中にそれに近い多目的スペースみたいなのが本当になくて。いや、多目的スペースですって名前がついてる所はありますけど、結局管理人さんがいて、これはやっちゃ駄目です、これもダメですということが書いてあったり。でもokatteはそういうルールがあまりなくてゆるくて、何ならみんなで旅行に行くのも OK とか、野外活動も OK らしくて、一体何なんだろうって(笑)。
ー そうですね(笑)。このインタビューで、みなさんそれぞれが言語化してくださることで、okatteとは何ぞや?という答えみたいなものができるかもしれないですね。
お友だちと一緒にokatteを使ったことはありますか?
友だち6人くらいとタコスを作って食べる会をしました。とても盛り上がって、手持ちのお酒がなくなってしまったので冷蔵庫のビールからお酒を購入させていただいたりもしました。遠方から来ていた友人に「こういうのが近所にあったらメンバーになるのに!」「町田に作って!」と、そのあと度々言われました(笑)
ー これからokatteでやってみたいことはありますか。
そうですね。園芸部をやりたいです。あと、以前okatteでやったことを色々聞いた中で忘れられないのが、野草を食べたお話で。春になったら野草を食べたり山菜を取りに行ったりしたいです。
ー そういえば、よしこさんは登山をしてらっしゃると聞きました。
はい。でも食べられる植物には詳しくないので、みなさんとやってみたいです。そうそう。okatteの棚に、お茶をたてられそうな道具を発見しました。一度でいいから練り切りをやってみたいと思っているので、もし茶道部があるならそれも一緒にやりたいのと、掃除のたびに「ミシンがある、しかもけっこうちゃんとしたミシンもあるぞ」と思ってるので、それも何かやってみたいです。
ー やってみたいことがいろいろあって、楽しそうです。
休みがあるとついつい予定を詰め込んで、結果休めなくなってしまうこともあるので、来年の抱負は余裕を持つことにしたいと思っています(笑)。
よしこさんのベスポジ
ー 最後に、ベスポジをみなさんにうかがっています。
はい。これまでのインタビューをみて、聞かれるってわかっていたので昨日一生懸命考えてました(笑)
オープンデーでコーヒー屋さんをやってることもあるんですけど、アイランドキッチンに立っているとokatteに来る人の顔がすぐ見えますし、畳側も全部見渡すことができるので、なんかすごくいいポジションだなと思っています!
ー ありがとうございます(笑)。メンバーになってまだ1年ほどなので、ベスポジはこれから変わっていくかもしれませんね。
底知れなさが面白い。
ー この質問もよしこさんにとっては難しいかもしれませんが、イマイチわからんokatteの〇〇はどうでしょう。
それで言うと、さっきの茶道部とか手芸部の話もそうなんですけど、本棚の本のラインナップも、よくわかんないものがたくさん置いてあって。何なんだここは!って思うことはありますね。片付けで引き出しを開けると、見たこともない物や食器があったり。誰かのこだわりのものなのかなと思うんですけど、なんというか、すごく「底知れない感じ」がします。ストレージを見に行っても何に使うかわからないものが置いてあって。だから、〇〇がわからんっていうより、わかってること以外全てわからんって感じです(笑)。いろいろ底知れないぞっていう。
ー 1年に1回も開けない引き出しも多いらしいです(笑)
いろんな引き出し開けてみたくなっちゃいますね。
ー 例えば、本棚のわかんない感じっていうのは、自分では絶対に取らない本だなって感じですか。
なんだろう。本屋に行って「これ誰が読むんだろう」って思った本が置いてある感じですかね。でも、メンバーの〇〇さんの本で「おすすめです」みたいな紹介文がついてると、本屋では呼ばれなかったけれど、〇〇さんが読んでるんだったら、ちょっと見てみようかなと思って読んでみたら、なんだ、食わず嫌いなだけだったってことに気づいたり。そういう意味で、本棚のラインナップも底知れないです。私も本はたくさん読むしたくさん持ってるんですけど、量が多過ぎて実家に置いてきたので、今度、選りすぐりの変なものを持ってこようかなって思ってます。こんだけ飛び出したものが置いてあるんだったら、私の変なものも大丈夫だよなって(笑)。
例えば、本棚に山岳遭難の本がバーンッと並んでいたので、以前okatteに登山部もあったらしいから、その方の本なのかなと思ったら、全く登山をしない乙川さん(※インタビュー#01乙川貴絵さん)のおすすめの本で。「山登りはしないけれど、山岳遭難には人生の教訓っぽい話が書いてあるから好き」というお話をうかがって。そういう、私にはないような引き出しが、あの本棚にはつまっているんです。例えば仕事で初めて会う人だと、お互いに最初は常識人ですよみたいな顔をして、自分の趣味嗜好を伝える距離感に到達するまでに少し探りをいれると思うのですが、okatteの本棚には、メンバーの好きなことや興味のあることがズラッと並んでいて、すごく謎な空間だなって思います。底知れない感がすごい人が多いんです(笑)。だって、料理人さん以外で刀削麺を飛ばした人に初めてお会いしました(笑)。