こだわり
「私ね、とくにこだわりはないの」と、その方が小声で話された。
ぼくは、てっきりたくさんのこだわりをお持ちだと思っていたので、少々拍子抜けしたのだが、でもよく考えるとそうだよなと思ったら、急に腑に落ちた。
「こだわること」を広辞苑で調べると、いくつかの意味があるのだが、そのうちの一つが「些細なことにとわわれる」「ひっかかかったりつかえたりする」とある。若干、後ろ向きな意味が見え隠れする。
なるほど、たしかに、その意味で、その方に「こだわり」はないのだろう。だからあらゆる人を差別することなく、きっと見られるのだ。
まさに、こころのバリアフリーのリアル実践者である。
ところで、ぼくは、その方に訪問するとき、実は着る服をしっかりと選んでいた。
元来、服にはどちらかというと気を使う方ではあるが、とくに選んだ。
かっこよく見られたいとか、そういう気持ちではなかった。
なんていうか、相応しい佇まいがあるのではと思ったのだ。
こういうのは、「こだわり」でも「ファッション」でもなくて、エチケットのようなものだったと理解している。
あらためて考えると、こだわりは、人生においてたいてい邪魔なんじゃないかと思っている。
その方の言葉をしっかりと聞いて、あらためてそう思った。
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写真は信頼する方が撮ったもの。
現像してみたらUFOがと。
UFOがいるとか、いないとか、そういうこだわりがないぼくは、信頼するその方が撮ったものなんだから本物に決まっていると信じた。
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