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フランス1位のお金持ちベルナール・アルノー:数学とピアノ教育
このnoteでは、子育て世代を対象に世界的な偉人の生い立ちや子育て方法を紹介していきます。そこには、私たちも参考にできる多くの教訓がきっと含まれているのではないでしょうか。
今回は、パリ・オリンピックがスタートしたフランスから、ベルナール・アルノーを紹介。
ベルナール・アルノー(75歳)は、フランスが誇る世界的な実業家であり、LVMH(ルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシー)グループのCEOとして知られています。
彼は、ルイ・ヴィトンやディオールなどを含む高級ブランド帝国を築き上げ、その資産は2024年7月現在で1800億ドルに達し、世界3位の資産家として名を連ねています。今回は、彼の幼少期や家族、そして彼がどのように子供たちを育てたかについて詳しく見ていきましょう。
幼少期と教育
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ベルナール・アルノーは1949年、フランス北部のルーベで生まれました。父親は「フェレ・サヴィネル」という建設会社を経営しており、アルノーは裕福な家庭で育ちました。幼少期からピアノを習い、ピアニストになることを夢見ていた彼は、音楽とビジネスの両方に興味を持つ少年でした。フランス有数の工科大学エコール・ポリテクニークを卒業し、理系の知識を身につけました。
「理工科大学で学んだ最大の収穫は論理的な思考法を身につけたことです。あらゆる状況や問題を即座に分析できるようになりました。分析と統合です。」と彼は述べています。
早期のキャリア
22歳で大学を卒業したアルノーは、父親の経営する建築会社にエンジニアとして入社し、25歳で社長、29歳で会長に就任しました。父親からの信頼を得て、若い頃から経営者として頭角を現し、建設業から不動産開発へと業容を拡大しました。
父親からの信頼
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彼の成功は、子育て世代に、「子どもを信じることの大切さ」を教えてくれます。
「父は、大学を卒業したばかりの私に、事実上会社経営を任せてくれた。
従業員1000人ほどの中小企業でしたが、3年後の25歳のときに社長になりました。大胆かつ聡明でありながら、子どものすることに十分な信頼を置く、そんな父親はめったにいないでしょう。(中略)順調に発展している会社を任された私は、信頼に応える意味からも責任を痛感しました。父の信頼があったから、チャレンジ精神を発揮できたのだと思います。父を失望させ、全幅の信頼を裏切ることなどできませんでした。」
ニューヨークでの転機
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1981年にフランソワ・ミッテランがフランス大統領に就任すると、自由主義経済システムの崩壊が懸念され、アルノーは1982年から1984年までの3年間、米国ニューヨークで暮らし、建設会社を経営しました。
ニューヨークでの経験がアルノーにとって大きな転機となりました。
ある日、タクシーの運転手に「フランスの何を知っているか」と尋ねたところ、「クリスチャン・ディオールなら知ってるよ」と返答されました。この一言が、彼にブランドビジネスの可能性を示し、後にLVMHを世界最大の高級ブランド企業へと成長させるきっかけとなりました。
家族と私生活
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アルノーの家族生活も興味深いものです。彼は二度結婚しており、現在の妻エレーヌ・メルシエはコンサートピアニストです。アルノーはショパンなどのクラシック音楽を演奏して彼女を魅了したと言われています。アルノーは最初の妻との間に2人、エレーヌとの間には3人の子供がいます。
子育てと教育
1)数学教育とメンター
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アルノーは5人の子供たちに対して、非常に熱心な教育を施してきました。特に数学教育に力を入れており、子供たちが幼い頃から論理的思考力を養うことを重視していました。
彼は日常生活の中で数学を取り入れ、夕食前に子供たちの算数の勉強を見たり、数学クイズを出題したりすることが習慣でした。これにより、子供たちは自然に数学に親しみ、問題解決能力を高めることができました。
アルノーの子どもたちは、MITやエコール・ポリテクニークなど、数学や工学で有名な高等教育機関に進学しています。(アルノー自身もエコール・ポリテクニーク卒業)
アルノーはまた、子供たちに対して具体的な役割とメンターを与えることで、実務的な経験を積ませました。LVMHのトップエグゼクティブがメンターとして子供たちを指導し、ビジネスの実務や戦略について学ばせました。これにより、子供たちはビジネスの洞察力と意思決定能力を養うことができました。
2)音楽教育
アルノーは、小澤征爾の指揮でピアノのチャリティーコンサートを開催したこともある音楽愛好家。音楽家を非常に尊敬しており、このようにも語っています。
「才能ある音楽家の方をより尊敬しています。ピカソよりモーツァルトです。音楽は並外れた資質を要求します。それに世界的に有名な作曲家の数は、画家よりずっと限られています。優れた音楽家は天才の域に達する驚くべき頭脳を持っています。数学者に近いかもしれません。私は理系の教育を受けてきましたが、アインシュタインのことは20世紀最大の天才として尊敬しています。私の考えでは、そのアインシュタインにより近いのはモーツァルトであり、ピカソではありません。」
彼の音楽に対する情熱は、子どもたちにも影響を与えており、三男のフレデリック・アルノーはピアニストとしての才能を持っています。
ちなみにこちらは、ベルナール、妻エレーヌ、三男フレデリックの3人でコンサートを開いた時の様子。
3)子どもたちに課していること
第一に決して嘘をつかないこと。これは、事業家としても必須の条件です。情報公開を怠れば成功はおぼつかないでしょう。次に厳密さと実直さですが、これは自己への内省につながります。私は根っからのカトリック教徒ですが、まるでプロテスタントのようだと思うこともあります。
4)子どもに跡を継がせることについて
息子や娘がリーダーになって当然だと言う考えは危険です。そのためにいくつもの企業が破滅していますし、悪い前例は踏みたくありません。ただし、子供に優れた資質があり、やる気を示しているなら別です。持っている能力を他人に認めさせることですね。
5)子供たちのキャリア
アルノーの子供たちは全員、LVMHグループ内で重要な役割を担っています。
長男のアントワーヌはクリスチャン・ディオールSEのCEOを務めており、長女のデルフィーヌはディオールのCEOに任命されています。次男のアレクサンドルはティファニー&カンパニーの副社長を務めており、三男のフレデリックはTAG HeuerのCEOを務めています。末っ子のジャンもLVMH内で重要な役割を果たしています。
まとめ
ベルナール・アルノーの子育てから学べることは、子どもたちに対する教育への熱心さ、日常生活の中での学びの機会を提供することの大切さではないでしょうか。彼の教育方針は、子供たちが将来のリーダーとして成功するための基盤を築くことを目的としており、私たちも参考にできる多くの教訓が含まれていると感じました。私も子どもたちに数学クイズ、やってみようと思います。