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ベンチシートの膝掛けの下で
それは、僕が高校2年生の冬、学校から帰宅する時の出来事でした
大阪にある阪南高校に通っていた頃
高校の最寄り駅は地下鉄あびこ駅でした
帰りは、あびこ駅から大国町で乗り換え、四つ橋線で自宅に帰っていました
その当時の気の合う仲間で、帰宅部となると、自分を含めて3人でした
流石に朝の通学は、別々に通うものの、授業が終わって、帰るとなると、ほとんど、このお決まりのメンバーでした
阪南高校は、制服がなくて、私服でオッケーだったので、下はジーンズ、上はセーターにスタジャンを着て、通学していました
その当時は、地下鉄あびこ駅が御堂筋線の南方向の終着駅だったので、帰宅時は、逆にあびこ発に乗ることになります
ですので、必ず、座って、帰れたのです
その日も、3人で、たわいのないの話をしながら、まずは、ドア側になんでもスマートにこなすS君が座り、そして、その隣には、傲慢なK君が大きく足を広げて座り、その横に自分がおとなしく座っていました
いつも、その帰宅時間帯は、発車するまでには、少し時間があり、同じ学生もたくさん居ますが、老若男女、学生以外の方も居て、発車する頃には、ちょうど、みんな座れるぐらいで、僕の左横にも、ひとりの女性が座っていました
僕は、いつものように3人で、学校の個性的な教師の真似をしたり、同じクラスの気になる女子の話をしたりしてたのです
ふと、気が付くと、横の女性が膝掛けをしていたのですが、どういうわけか僕の左足まで、その膝掛けがかかっていたのです
膝掛けをしているということだけで年配の女性かなという認識はできたのですが、シャイでおとなしい僕は、横の女性の顔までは、見ることができず、あまり、気にもしないで、3人で話をしながら、あびこ駅を出発しました
大国町へ向かう列車が二駅ほど進んだ頃だったでしょうか
なにか、僕の左足の膝上あたりに触れるものがあって、想像するに、どうやら、横の女性の右手の甲が触れているように感じたのです
そう、膝掛けの下だったので、目で見ることなどできず、自分の感覚がそう教えてくれたのです
それでも、僕は、そんなことをあまり気にせず、3人でおもしろ話を続けていたのですが、三つめの駅に向かう途中ぐらいから、その女性の手の甲らしきものが、僕の膝から少し上へ、太もものほうへ上がってきたように感じたのです
その時、はじめて、なんだか、ヤバイと思ったのです
でも『勘違い』かもしれない
イヤがおでも、その女性の右手の動きに集中せざるを得なくなり、じっとしてしていると、徐々にその手が、膝掛けの下で、僕の太もも辺りまでゆっくり上がってきて、いつの間にか、手の甲だったはずが、どうやら手のひらになったように感じたのです
僕の緊張感は、半端なくて、仲間のふたりの話は、遠くに聞こえてくるし、その手を振り払うこともできず、パニックになったのです
それでも『勘違い』かもしれないと自分に言い聞かせたのです
でも、さらにゆっくりとその手のひらは、上へ上がってきて、僕の内ももに触れるのを感じたのです
勘違いかもしれない
イヤ、まちがいない
勘違いだの繰り返し
膝掛けの下で起こっていることなので、廻りからは、誰も気付かれないのです
僕は、自分で自分の顔が赤くなるのを感じていました
その手がとうとう僕の股間に近づいてきた時、車掌のアナウンスが流れました『大国町、大国町です』
そのアナウンスが終わるか終わらないうちに、僕は、立ち上がり、到着を待つようにドアから出たのです
きっと不思議に思っていただろう仲間たちは、僕の後を追って、車両から降りました
さて、その女性は、同じ駅で降りたのか、次の駅へ向かったのかすらわからないまま、僕は、呆然と立ち尽くしたまま四つ橋線へ乗り換えました
今だったら、その手を握り返すんですが、その当時は、乙女のような男だったんです
おしまい
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