喋り客を睨む
糞客が少ない劇場にきたのだが、休みでもあり、何人かマナーの今一の客も混じっていた。
シーンとして静かな瞬間に、連れ同士で喋る三人客。踊り子さん達には、トラブルが怖いから客同士で注意しないで、また、シーとかいうジェスチュアで踊りの雰囲気を乱さないでと釘を刺されている。
だけど何も伝えなければ連中は幾らでも際限なく喋ることがある。周りは(俺たちが)木偶人形でしかない、耳も心もないと勘違いする。だから、ここに耳と心のある人間がいることだけは告げないと全く彼らにはわからないのが経験から知った現実。我慢しているだけでは絶対彼らは気がつかない。
だから、俺は喋った瞬間に間髪を入れず、そちらをほんの2秒間だけ凝視する。踊り子さんとの約束だから、「シーッ!」のジェスチュアだけはしない。ただ見つめるだけ。それも喋った瞬間、間髪を入れずが大切。これで大体通じる。睨みつけるわけではなく合図を送るわけだ。2秒間なら文句も付けようがなく、喧嘩にもならない。
これで通じないどうしようもない客もいるにはいるが、大体はこれで片が付く。これを嫌がって帰る客もいるかもしれない。しかし、最低限の合図だけは、劇場を野放図にしないためにも俺は大切だと思う。
トラブル、喧嘩にしないことが一番大切。しかしだからと言ってガンジガラメで何もしないでいては、俺自身が劇場に行くのがいやになる。
ガンジガラメっていうのは、踊り子やスト客からは「客同士でやらずにスタッフ通報して」と止められ、実際通報したらナニもしてくれない。我慢する他なくなるというタライ回しのことを言う
にらむことも止められるのなら俺は劇場に行かない。