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学生時代、故・大塚康夫氏とニアミスしてたって話

(1997年11月19日 山口ゼミ機関紙「KNOSPEN」より)

 予期せぬ幸運は、まさに突然やってきたのでした。時は先週金曜日。たまたま研究室に居合わせたIさんから、都合が悪いということで映画上映会のチケットをいただいたのですが、それがなんと、知る人ぞ知る歴史的な長編アニメの傑作「やぶにらみの暴君」だったのでした。

 そりゃあもう、フランスが生んだ世界初の大人の長編アニメという意味では、かなりの希少価値を有する作品で、もちろん僕は初めてお目にかかれたわけです。さらに、おまけとして上映したいくつかの短篇も、非常に貴重なフィルムばかりでした。そのうえ、これを主催している「アニドウ」というのは、どうやらプロのアニメ関係者たちによって結成された歴史ある組織らしいのですが、そんな存在を知ったのも初めて。

 そしてきわめつけは、なんと、客席に同席していた高畑勲氏大塚康夫氏を「生で」間近に見ることができたのです。高畑勲や大塚康生といえば、それこそ多少なりともこの世界にはまったことのある人ならば、必ず一度は耳にするはずの巨匠中の巨匠。「ルパン」とか「コナン」とか「火垂るの墓」をやった人です。根っからの田舎もんである僕は、どうもこの「有名人」というやつに弱いのです。田舎もんの本能でしょうか。

 しかしよく注意してみると、周りの席にいる人たちもみんな、アニメーターさん、もしくはそれ系の職業に従事している人々(演出家とか美術屋)らしいのです。必死に隣の会話に聞き耳をたててみると、「ジブリ(の次回作)は99年で、押井さんとこは2000年らしい」とか「今度○○○(どっかの制作会社)が999(スリーナイン)やるんだって…」とか、「うわー、めっちゃ業界の内輪話じゃん」という話が次々と炸裂するのです。肩身の狭い僕は、表面では極力平静を装いつつも、内心「すげぇ、すげぇ…」と、終始感激するばかりでした。

 上映会の後、新宿から帰る途中。最後まで興奮さめやらぬまま家に着いたことは言うまでもありません。Iさん、本当にありがとうございました(いい経験をしました)。また是非、いろんな話を聞かせてください。

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