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救う猫

私の記事に何度か登場している那覇の常宿にいる宿猫ビリー。

写真のビリーは、いつもよりも灰色な毛並みで薄汚れている。
隣の家が工事をしており、そこへ行っては砂山で身体をスリスリしているそうだ。
お陰様で、ビリーを撫でると手が砂っぽくなる。

そんなことはさておき。
私はいろんな心境でビリーを撫でる。

・再会した喜びいっぱいの状態で
・出かける前の慌ただしい状態で
・することがない、のんびりした状態で
・飲んで騒いだ後のほろ酔い状態で
・帰る日が迫り、少し物悲しい状態で
・この後空港へ行く、最高潮に淋しい状態で

どんな時もビリーは側にいてくれる。

「ビリーは他の猫とは違う」とオーナーさんが言い切るほど、少し不思議な猫だ。

人間の状態をビリーは理解しているように感じる。

急いでいる時は、やがてビリーからどこかへ行ってしまう。
ゆっくりしている時は、こちらを振り返りながら歩き「ついて来い」とばかりに散歩に連れ出してくれる。

物悲しい状態で撫でる時はおとなしくしている。
心が疲れている時はずっと隣で座っていてくれる。

以心伝心で私の状態がビリーに伝わっているかのようだ。

灰色く薄汚れたビリー
自宅に送る宅急便の伝票を書く私

たった一つ、ビリーがわかってくれないことがある。
ビリーの写真を撮ろうとすると、ビリーが気がついてしまって、必ず私の方へ寄って来てしまうのだ。

寄ってきてくれることはとっても嬉しいのだけど、ビリーの写真を撮りたいので、そのままポーズしていてもらいたい。

どこからでもやって来る
写真のことなどお構い無しだ
太陽が眩しそう
影さえもかわいい

猫を飼っている友達にビリーの話をすると、猫は気まぐれな性格で気乗りしない時は寄ってこないそうだ。
それどころか気乗りしない猫を構おうとすると、飼い主でさえも噛みつかれるらしい。

こんな風に毎度毎度、寄って来てもらうえることは珍しいことらしいのだ。

私はビリーに救われている。
人見知りで、自分から人に近づくことが難しい性分だ。
自己肯定感も低いので、ビリーが自ら近づいてきてくれることにホッとする。
お陰でビリーには思いっきり心を許すことができる。

ビリーは傷つくことを恐れず、愛することを教えてくれた不思議な猫だ。

ビリーのお陰で、以前より人に近づくことができるようになった。

これまでは「沖縄」という狭い間口でしか人と共通の話題を持てなかった私が「猫が好き」というめちゃくちゃ広い間口で人と会話ができるようになった。

これがビリーの与えてくれた一番の処世術だと思っている。

人と会話で気まずくなった時に「犬派ですか?猫派ですか?」と聞くだけで、大概5分は時間が過ぎる。猫話で盛り上がり、グーッと距離を縮めるきっかけにもなる。

ビリーに出会う前の私はこの最強カードを持っていなかったので、人と話すことがとても困難だった。

ビリーが授けてくれた処世術。
私にとって、とても心強い処世術。


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