【実話】浮いて待った男の漂流生還記
知人の息子さん、尚くん(28)の実話です。(怪談話ではありません)
数年前のゴールデンウイークに尚くん一家は親戚約15人と砂浜でバーベキューをしていました。
沖縄県民は“ビーチパーリー”と言って海でバーベキューするのが大好きです。
泳ぎが得意な尚くんは結構沖まで行って潜っては、海底の貝を拾ったり魚を捕まえてみんなに振る舞っていました。
沖まで貝を捕りに行き、浜へ戻ろうとした時に自分がどんどん流されていると気がつきます。離岸流に巻き込まれたのです。
泳ぎには自信があったので、とっさに離岸流から離れようとしたそうです。ところが潮の力は凄まじく人間にどうこうできるものではありませんでした。
これ以上流れに抵抗したら体力が尽きて死ぬ、尚くんは腹を括り泳ぎを諦めました。
近くに浮いていた発泡スチロールに掴まり、漂流し始めたのです。
尚くんが生還できた秘訣
尚くんは、じっと自分が泳いできた砂浜を見ていたそうです。方向感覚を失わないためでした。
流れ、流され時が過ぎていきます。
サメに遭遇するかもしれない恐怖とも戦いながら漂流していました。
やがて、日が暮れあたりは真っ暗になりました。
それでも尚くんは諦めず、自分が泳いできた砂浜の方角をじっと見据えていたそうです。
その頃、砂浜も大騒ぎでした。
知人たちは海上保安庁(電話番号118番)に連絡し、警察にも届け出ました。
捜索してくれたものの見つからず、日暮れで捜査は一旦中断。明朝早くから再捜査することが決まりました。
警察達は引き上げましたが、知人たちは気が気ではなく何もできずにただ、真っ暗な沖を見て震えていたそうです。
一方、漂流中の尚くんに異変が起きます。
これまでと海の様子がガラリと変わったのです。
流れていた潮がピタリと止まり、海面が静かになりました。潮の流れが変わったのです。
チャンスだ!いましかない!
尚くんは一気に自分が流されてきた砂浜を目指して泳ぎ始めました。潮の流れが砂浜に向き始めたことも手伝ってグングン進みます。
必死に必死に泳いでいると暗闇の中でも砂浜が分かるようになってきました。人影も見えます。
尚くんは泣きながらひたすら砂浜を目指しました。
震えていた知人たちは突如現れた尚くんにびっくりです。
死んでしまったとばかり思っていた尚くんが砂浜に上がってくるのを見て、知人は“オバケ”と勘違いして腰を抜かしたそうです。
恐怖と戦いながら漂流し続けることは誰しもにできることではないことでしょう。尚くんの武勇伝になりました。
ゴールデンウイークや夏休み、水のレジャーで悲しいニュースを聞くことがあります。
そして至る所で「浮いて待て」という言葉が繰り返されます。
泳ぎが達者な人でも浮いて待つしかないのです。
流されないことが一番ですが、浮いて待って生還できた人がいることも覚えていてくださいね。