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渋滞に巻き込まれてうんざりしていると
ドアガラスが突然叩かれた
驚いてそっちを見ると
物凄い剣幕でなにかを喚いているおばさんがいた
見た感じの迫力はかなりなものがあるのだが
なぜだか声は少しも聞こえない
面倒ではあるけれども
このままにしておくわけにもいかないと思って
窓ガラスを開けると
ひどい罵声が聞こえてきた
その代わり
ガラスが下がっていくにつれて
おばさんの姿も徐々に見えなくなっていった
最後まで開け切ると
すっかりおばさんの姿はなくなり
罵声はいよいよ元気になった
そのせいか周りの車からも
クラクションが鳴るようになったのだが
よく見ると道路に並んでる車は
見渡す限りすべて無人だった
ひどい騒音に取り囲まれながら
ぼくだけが
前にも後ろにも進めないでいる