Funky Houseを作ったのでTipsや振り返りなど
普段あまり四つ打ちは作らないのだけど、最近は家に籠ってばかりで踊れないので、シンプルな四つ打ちが作りたくなってしまった。制作から少し日が開いてしまったが、工夫した点や改善点等を自分なりにまとめてみる。
なお作成した楽曲は以下。
ピアノの音作りについて
アタックがはっきりして、それでいてリリース感もある音を作りたかった。音の立ち上がりや伸びについては、トランジェント処理(やコンプ)で対応するのが一般的と思ったのだが、トランジェント処理では望んだ音が作れなかった。というのも、一般にトランジェント処理の文脈ではアタック/サスティンの対立構造(音の立ち上がりを強調するか、音の伸びを強調するかの二者択一)が語られており、両方を強調する、という音作りはそもそも想定されていないのだ。
悩んだ末、今回はコンプレッサーとリバーブ、それからサイドコンプを用いた。まず、ピアノのDryにアタック感が強調されるようなコンプ(アタック遅め/リリース長め)をかけ、音の立ち上がりを明瞭にする。一方でこれをセンドリバーブに送り、ホール系の深めリバーブをかける。
このままでも良いのだが、ややWet(リバーブ)側の音のアタックが強調されすぎてしまったため、DryをキーとしてWetにサイドコンプを挿す。サイドコンプのリリースを十分に長くとることで、Wet単体のアタック感を少なくできた(なお、Wet側にトランジェント処理を行うことは勿論検討したが、あまり思った通りの音色にならなかった)。
……初っ端から複雑な説明になってしまった。なるべく簡易的に纏めてみる。この処理で一体何をしたかというと、
・ピアノのアタック感を出す(コンプでアタックを強調)
・別トラックで反響音のみを出す(サイドコンプで反響音のアタックを潰す)
この二つを混ぜている。
思いつく他の実装法は下記。
・リバーブのパラメータ弄るだけでも実現できそう
・音源をアタック用と反響音用で二つ用い、それぞれ別々にMixする。例えばピアノ音源とストリングス音源を同じMIDIで鳴らすなど
スウィング感について
今回は意図的に、ドラムのスウィングを少し深めに、ギター/ベースのスウィングをやや浅めにしている。ドラムのスウィングについては、ドラムパターンのおかずスネアのタイミングに注目して欲しいのだが、三連よりほんの少しだけ遅らせている。一方ギターはイーブン~三連の間で、あまりスウィングさせていない。楽器ごとのスウィング感を微妙にズラすことで、全体としてのグルーヴ感が上がるのではないかと考えてこのようにしている。
ギターの音作りについて
カッティングギターにする予定だったので、当初はほとんどエフェクトをかけていなかったのだが、想定以上に中高音域に楽器が集中してしまったため(後述)、中音域もしっかり鳴らさなければならなくなった。とはいえカッティング感は残したかったので、カッティング担当のDryと、中音域担当のWetで別々にMixしている。
Dryは素直にアタックを強調し、カッティングの帯域以外はEQで切っている。Wetは、オートワウとFuzzを挿し、コンプでアタックを潰した上で、オクターバーも使って中音域を鳴らすようにした。
ほとんど場当たり的な処理なのだが、意外と面白い音になったと思う。
コードワークについて
Bがサビ(一部簡略化、間奏と大サビは略)。見ての通り、AもBもほとんどコード進行は同じなのだが、一部差がある。それはC(VI♭)が入るかC#(VI)が入るかの違いである。理論的な解説は避けるが、同じようなコード進行でも、ほんの一部の音を変えることで雰囲気を変えているということである。
なお、大サビはBからもイメージを変えている。具体的には転調ももちろんだが、ツーファイブを入れることでよりハーモニーに動きを持たせ、ドラマチックにしている。アナライズもそれほど難しくはないと思うので、興味がある人は自身で確認してみてほしい。
Funky Houseを作り慣れているわけではないが、個人的にFunky Houseならイケイケなコードワークは必須と考えている。その意味では十分イケイケなコード進行になったと考えている。
音域被りについて
今回の最も大きな反省点がこれ。中高音域に色々な音が被りすぎてしまい、非常にMixが辛かった。具体的には、リードシンセ各種、ピアノのアタック、ギターのカッティング。逆に中低音域はスカスカになってしまった。
恐らく、ピアノのボイシングを半オクターブ~1オクターブ下げるとだいぶ解決すると思うのだが、最終的に直さないまま完成させてしまった。
僕のピアノのボイシングはモダンジャズで鍛え上げられているのだが、モダンジャズではウッドベースと合わせるのが基本であり、そのウッドベースはエレベに比べ中低音が割としっかり鳴る。ので、ウッドベースと合わせる気分でエレベと合わせてしまうと、今度は中低音が抜けてしまう……という問題である。心がけ一つだと思うので、今後は気をつけていきたい。
2mixについて
前回はYoutubeのラウドネス基準準拠の2mixを行ったので、今回もそのようにしたのだが、これがダメだった。楽曲の全体的なダイナミクスは確保されたものの、イントロの音が小さすぎる。前述の中高音域に音が多すぎる問題もあり、全体として音圧が稼げていなかった。またPCでmixしているときは感じなかったが、スマートフォンなど別デバイスで聴くと、一部のリードシンの特定の高域の音がうるさすぎる。この辺はしっかり潰しておくべきポイントで、大きな反省点の一つである。
まとめ
全体的な雰囲気は良いのだがやや惜しいところがある、という評価をしている。シンセを使うと中高音域に音が溜まりがちなため、そこは今後も気を付けていきたい。
最後に曲を再掲しておく。