酒飲みの空間 その2
酒は友を呼び
友は酒を呼ぶ
酒徒
企てを知るやいなや
千里を走り
友と酒に出会う
類は類を呼び、 酒は友を呼ぶ。酒をアルコールとして飲む人は酒徒と呼びたくない。呼ばせない。酒徒は、自分の空間、空気、友を求めて幾千年。幾千里。悪戦苦闘。刻苦勉励。日々努力。日々宿酔。鍛え上げられた泗徒の嗅覚は鋭く、敏だ、が、風向きにより、時として鈍。
飲み屋の戸をあけ、顔をつっこむやいなや、その中にただよう空気の良し悪しを直感する。「今日は飲むぞ」となれば、必ず同類が居る。特に、飲み屋の主人が同類であれば、始めての店でも、行付けがごとく飲み、愉しみ、酔う。
京都の洛北に一軒の飲み屋あり。
同類の飲み屋の女将につれられて、ある夜、大きい赤ちょうちんの下る店に。店に入ると先客二、三人。カウンターの中には、「お父さん」と呼びたくなるような温かい顔が見えた。奥ののれん口から、えべっさんのような笑顔のお母さん。道行の女将とともに皆んなで、先ず「幹杯!!」。
カウンターの奧の棚には、常連の酒徒のことばや絵や器が愉しげに並んでいる。寡黙なお父さんと、ちょっと賑やかなお母さんのつくる空気の味は、すこぶる旨い。
お父さんの手造りのここち良いぐい飲みで酒を愉しみ、渋い謡に酔う。
飲むほどに、酔うほどに、酒も旨い。いつの間にか先客さんや、後から入ってきた常連さんと皆んなでヤンヤ、ヤンヤ。お母さんの小唄に、またヤンヤ。その内、道行の女将も、いつものように「花も嵐もふみ越えて~~」と、なる。
十一時、一時と時は過ぎ、夢ごこちとなる。道行の女将もほどよく酒も歌も愉しみ、足もとも揺れる。
「ようきてくれはったなあ。」
のお母さんのあったかい声に送られ、隣の女将の寝息を耳に、車に揺られ、酒に揺られ、夢の中。