「秋の風景」
京都も、十月に入ると、秋の豊穰を感謝する祭が数々行われます。祭の始まりは、北野天満宮の「ずいき祭」です。
野菜で飾る、珍らしいみこしで有名です。屋根は、ずいきで葺き、稲穂、ゴボウ、大根、赤唐辛子、豆等で飾り付られます。屋根の四隅は、ピーマンやトマト。柱の上の唐獅子は親いも。たて髪は、トウモロコシのヒゲ。等々。見事に野菜が使われています。素朴で土俗的な匂いが残る、この祭の起源は、実に千年余り前にさかのぼります。
千姫の寄進のみこしが出る、御香宮の神幸祭。弥勒思惟仏で知られる、太泰、広隆寺の牛祭。京都の三大奇祭の一つです。
祇園祭の山鉾の原型といわれる剣鉾が十八基、夜に渡御を行う粟田神社大祭。
京都の三大祭の最後を飾る時代祭。行列は、平安朝から幕末の志士までの一大歴史絵巻です。
十月の終尾を飾る祭は、時代祭が終わった、その後、牛若丸の修行の地、鞍馬寺で行われる、鞍馬の火祭です。大小、五〇〇本のたいまつを担いで、「サイレーヤ、サイリョウ」と掛け声を発して、豪快に練り歩きます。
また、祭の声に誘われるように、十月の京都は、各地からの修学旅行の生徒達で賑わいます。
京都の繁華街、三条から四条の新京極通りや寺町通り。二条城。竜安寺。銀閣寺、金閣寺。等々。各地は、修学旅行生が群をなし、大都市の通勤時の駅周辺のような混雑です。
ある日、寺町通りの画廊で、友人の個展が開かれていた時のことです。画廊の前の寺町通りは、お土産屋からあふれた旅行生でいっぱい。絵にはあまり感心の無さそうな、元気な男生徒、三人、そろりとガラス戸を開け、遠慮がちに、「見てもいいですか」と。見かけの感じとは違い、静かに友人の絵を鑑賞していた。見終わって、帰り際、「ありがとうございました。」と三人揃って。何んと清々しい響きであったでしょう。
秋になると、その時の修学旅行生、三人の礼儀正しい姿が想い出されます。
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