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苦しいときは自分を褒めよ。小さな意志を大切に、社会課題に挑む

作家で実業家の北野唯我さんと新規事業家・守屋実さんが、「未来をつくる人を増やすための教科書づくりプロジェクト」の一環として行っている定期対談。これまでの2回では、「意志を持つことの重要性」「事業の種の見つけ方」「起業家に必要な素養」などについて2人の立場から議論してきました。

第3回である今回は「意志を持つ人」の具体例として、守屋さんのサポートを受けているVALT JAPAN株式会社の代表取締役・小野貴也さんをゲストにお呼びし、起業の経緯や守屋さんとの出会いからこれまでを詳細にお話しいただきました。

障がいを持つ人の就労支援というソーシャルビジネスが、いかにして始まり、伸びてきたのか。そしてVALT JAPANが創る未来とは何か。意志のパワーを感じさせる、リアルな起業ストーリーが語られました。鼎談の模様を全3回にわたってレポートします。

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節目のたびに解像度が上がるからこそ、熱量を保てる

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北野:SHOWSメンバー(※)からたくさん質問が来ています。まずは、「小野さんがどう熱量を保っていたのか教えてください」とのことです。

小野:ちゃんと自分自身が腑に落ちているかどうかですかね。僕の場合は、「この社会問題はこういう理由でなかなか解決が困難だ。ただそれもこういう手段を活用すれば解決できるんだ」という解決までの一連のストーリーが自分の中できちんと腑に落ちてきたなというタイミングが何度か局所的にあった。振り返ってそう思います。

たとえば守屋さんと出会ったときもそうですし、投資家さんから出資を決めていただいたときもそうです。その度に自分の中でのストーリーの解像度がめちゃめちゃ上がって、自分自身が納得させられている。この繰り返しなのかなと思います。

解像度が創業当時のままだったら、今までやれていないですね。「実現可能性が高まっているのを感じられているからこそ熱量がキープできる」と自分では理解しています。

北野:なるほど、面白いですね。では、そもそも熱い気持ちを持つためには何が必要だと思われますか。

小野:メンバーによく言っているのは、「自分を称えよう、褒めよう」ということです。間違った方向にいくとナルシストや自己満足になってしまうかもしれませんが、僕らは10年以上、解決に難航している領域に挑戦しているので、自分たちが心身ダメになりそうな時、自分を認めてあげるくらいの思いがないと、やり続けられないんです。だから、「ここまでよくやってる」「俺、すげえ意味のある仕事してる」って、自分の中で思う分には全然構わないと言い切っています。

北野:「自分のために、他人のために」って難しい概念ですよね。たとえばボランティアを、他人のために、この人ためにと思って頑張ることがあると思いますが、僕は基本的には自分のためにやると決めています。

そうすると別に感謝されなくても、「俺がやりたくてやってるからいいんだ」ってなるじゃないですか。そこに「他人のため」とか「世の中のため」を包み込んでいくイメージ。その方が長い目で見たときにインパクトを残せるなと、この年になってようやく思えるようになりました。
逆に、他人のためにやると決めて、その他人が期待通りの反応をしてくれなかったら怒ったりする人もいるじゃないですか。それは何か違うと思うのですが、小野さんはそのあたり、どう向き合われていますか。

小野:いつでも欠かせないのは「自己成長への意識」ですね。プラットフォームやプロダクトがあるといっても、結局はそれを運用しているメンバー1人ひとりの能力に依存することは間違いない。結果が出なければ、確実に自分たちの力が足りないということ。だからまずは個々の力を伸ばしていこうと。

社会問題を解決したいという思いを持っている方々は、どうしてもビジネスの対局にいるような部分があります。だからこそ、ビジネスの力をつけないといけないと強く言います。他の人が100やっているなら、僕らは500やらなきゃいけないという話は常にしていますね。自分を含めて絶対に現実から目をそらさせない。

とはいっても行き過ぎると「そんなの苦しいです、社長」みたいになってしまうので、僕がやらなきゃいけないのは、小さい思いから入ってきた人たちでも長く社内で活躍し続けてもらうこと。そのために苦しいときは自分を称えよ、自分を褒めよと言っているんです。

どんな人にも、必ず活躍できるポジションがある

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北野:すごくいいですね。守屋さん、ニコニコして聞いてらっしゃいましたけど(笑)。

守屋:いやぁ、小野さん順調に登っていっているなって。やっぱり人は前進がないと続かないと思うんです。ずっと同じところで足踏みしていると、足踏みしかできない人間になってしまうし、そんな自分を肯定できなくなる。

VALTは、小野さんが雷に打たれてから創業して、一歩一歩進んでいく中で、視野が広くなったり、解像度が高くなったり、日々前進していると思います。当然、日次で見たら後退しているときもあるし、めげちゃっている瞬間もあるけれど、長い時間軸で見れば確実に前に進んでいる。だから小野さんの周りの人も自分たちの前進を感じることができて、それがまた推進力になっている。

未来を1つずつつくり続けているというのは、自分自身のためでもあるし、みんなのためでもある。それを今日改めて実感しました。

北野:守屋さんへの質問で「小野さんをご覧になっていて、過去のご自身と重なる部分はありますか」。確かにこれ聞きたいです。

守屋:改めて考えるとありますよね。僕自身もミスミで事業を立ち上げたときは、一意専心で没入して、どうにかする!って頑張っていた時期があって。そういう自分と重なる部分はあります。

北野:小野さんはどうですか?

小野:ありがたい限りです。僕はもともと野球少年だったんですが、めちゃめちゃ下手くそで、試合に出られなかったんです。でも唯一、三塁コーチャーというポジションを与えてもらって、そこが僕の居場所になりました。

この経験は僕の社内教育論につながっています。どんな人でも必ず1ポジションあるはずだ、と。守屋さんもそういうお考えをお持ちで、うちのメンバーに対する相談をすると「こうしてあげたら、その方はもっと活躍できるんじゃない?」とアドバイスくださるので、そこは共通するなと思いました。

長い時間軸で、焦らず、でも着実に前に進む

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北野:ありがとうございます。今回、小野さんには本当にお忙しい中でお時間いただきました。何か僕らが協力できることはありませんか。

小野:ありがとうございます。今、「Social Impact Teams」という「社会課題を解決する集団」をつくっています。どういう倫理を持って社会課題を解決していくのかや、課題解決にはどのような能力が必要なのかを記載した資料を僕がゼロイチでつくって、会社のメンバーにも熟読してもらって、現場で実行してもらっています。このチームで活躍したい方、大歓迎です。ぜひお待ちしています。

北野:これはどういう形で参画するのがベストですか?

小野:フルコミットメンバーもそうですし、外部アドバイザー的にでもいいです。1番はフルコミットメンバーですかね。特にエンジニアの方々のテックチームは今ゼロイチで立ち上げています。まさに今は第二創業期として「ドリームチームをつくっていくぞ」と思っているので、ぜひ応援していただけると嬉しいです。

北野:わかりました。最後に守屋さんから一言いただけますか。

守屋:この社会課題は1年や2年ではどうにもならないですが、少なくとも10年前に比べたらだいぶ変わっているし、去年に比べても少しは変わっていると思います。我々自身もあまりせっかちならずに、でも着実に、長い時間軸で前進していけたらなと思います。

今回の北野さんと小野さんって、いい縁なんじゃないかと思うんです。今日は北野さんの高校時代の話にはフォーカスしなかったですが、小野さんと同じようなことをずっと昔に頑張っていたと思うので。今回でどうこうというよりは、これから長いお付き合いをしていただけるといいなと強く思っています。

北野:ぜひよろしくお願いします。小野さんからも一言お願いします。

小野:公的セクターと経済セクターが共創して社会問題を解決していくモデルを、もっともっと日本に広げていきたいと思っています。日本に広げるだけじゃなく、最終的には世界の社会課題を解決しに行くところまで、私は人生をかけてやっていきたいと思っているので、ここに熱い思いを持ってくださる方が1人でも増えたら嬉しいなと思います。ありがとうございました。

北野:今日で小野さんやVALTさんファンが増えたと思います。本当に貴重なご縁なので、ぜひ仲良くしていただけたらなと思っています。ありがとうございました!


※SHOWS:北野唯我さん運営のオンラインコミュニティ。メンバーは本対談をライブ配信で視聴し、リアルタイムで質問や感想を投稿。対談の活性化につなげるとともに、登壇者から毎回深い学びを得られる。

― SHOWSでは、今後も定期的に公開対談を行ないます。北野さんや守屋さんと一緒に「未来をつくる人を増やす本」をつくってみませんか?
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落合真彩/ビジネス系ライター・フレスコボール日本代表
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