【城の少年】息をひそめ、静かに味わう、切なく愛(かな)しい物語。
出会いはTwitterでした。「ゲラ読みさん募集」。なんという僥倖。またとないチャンスに、迷わず版元さんに「読ませてくださいっ!」とソッコーでDMしました。
あの、菊池秀行さん、の作品だと構えたけれども
ヴァンパイアンハンターDの。あるいは魔界都市〈新宿〉、ダークサイド・ブルースの。検索すればそれこそ枚挙に暇がなく、作品は私ごときがもはや数えられるレベルにありません。
その、菊池秀行さんの新作が、この本。
(ヽ(`▽´)/縦にならん!!)
え、と最初、目を疑いました。
すぐに手元に来たそれは、自分が何ものかわからない少年と、彼に出会い一緒に暮らしたロマニー(放浪者)の少女の物語。
添えられている文章もなんのその(ごめんなさい)、一気呵成とはこのこと、とばかりに、読み進めていました。
で一息ついてもう一回。
そしてさらに3回目・・・・。
そんな読後の第一声がどれも「切ない……………」。
何度読んでもしみじみせつない・・・・。
ほんとに声が出てしまったほど切なくて悲しい、そしてとても残酷でかわいそうなのに、確かに愛を感じるお話でした。
菊池秀行さんの作品の根底には、こんなにも優しい眼差しが潜んでいるのか………過去作品も読み直したくなりました。
愛しいと書いて「かなしい」。彼も彼女も。
おそらくは、落ちこぼれだったがゆえに生き延びてしまった少年。自分とは違う少女に淡い想いを抱き、彼女の窮地に手を差し伸べてしまいます。根が穏やかで優しいのでしょうね。
少女は、そんな彼を追い詰めようとする計画を、彼に漏らしてしまいます………助けてもらったお礼に。せめてもの気持ちだったのでしょう。
「ほんの少しでも一緒にいられたら………」少年の気持ちが胸にしみます。時間の流れの違う二人、ずっと一緒にいることは叶わない。ただ、ほんの少し………少年と少女とは、おそらく幸せに暮らしたであろう日々のことを考えてしまいます。
そしてさらに、登場人物一人ひとりの目線に立ってみれば…………それぞれの正義、背負うもの、大事にしたいものを守ろうとする悲しいまでの決意。ほんの少し思いをいたすことができたとしても、どうにもできなかったに違いない。仮面の恐怖に震え上がります。
言うなれば、上質のフェルト地のよう。あたたかい絵の魅力もひとしお。
Naffyさんの絵がとにかく柔らかくてホッとします。物語の悲しさ残酷さをくるみこむかのような、あたたかい色合い。
絵は、お話を何倍にも膨らませてくれ、ときにお話を補完し、時に言葉よりもずっと雄弁に情景や表情を語ります。まさにそれ。これも本当に素敵です。
まだゲラの段階なのに!!
こんなにも惚れ込んでしまいました。菊池秀行ファン、Naffyファン、児童書や絵本大好きクラスタさんはもちろん、そうでない人も、かつてファンだった人にも、この切なく美しい愛の物語をオススメしたいです。
12月8日頃発売予定。ぜひご予約を。