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映画の扉_cinema

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どんなに移動手段が発達しても世界のすべては見れないから、わたしは映画で世界を知る。
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#ドイツ映画

【映画評】 ミヒャエル・ハネケ『ファニーゲーム』

(見出し画像:ミヒャエル・ハネケ『ファニーゲーム』) 監督のミヒャエル・ハネケ(1942〜)はドイツで生まれオーストリアで経歴を開始し、主としてフランスで仕事をしている。ウィーン大学卒業後、映画批評家を経てドイツのテレビ局で編集・脚本家、舞台演出を手掛ける。数本のテレビ映画を製作している。 1989年、初の長編映画『セブンス・コンチネント』を製作。1992年に長編第2作目となる『ベニーズ・ビデオ』、1994年に『71フラグメンツ』を発表。この3本は「感情の氷河化三部作」と言

【映画評】 ローラント・クリック監督。「ど真ん中」と「周縁」に位置する「身体派」

ローラント・クリック(Roland KLICK) 1934年ドイツ・バイエルン州ホーフ生まれの映画監督。 ミュンヘンで文学と演劇を学びながら映画館に入りびたる。ヒッチハイクで世界半周した後、1964年、オットー・ザンダー主演で短編『LUDWIG』を撮る。1966年には中編『ジミー・オルフェウス』を撮りテレビで放映される。1970年、口のきけない美少女と死神のような殺し屋を描いた『デッドロック』がカンヌ映画祭に招待されるが、ドイツ映画界からはドイツの恥晒しと揶揄される。その後

【映画評】 ペーター・ネストラー『良き隣人の変節』について

叙述することの困難。なにかを表現をしようとした者なら、誰もがその困難に遭遇したことだろう。歴史的真実を描く社会的共有の試みや、プライベートな事柄、たとえば自分の想いを好きな人に伝えようとするときでさえ、その困難はたえずつきまとう。その困難とは、何を伝えるのか、ということではなく、どのように描く(伝える)のか、ということである。描こうとした事柄がうまく描かれないとか、誤解されて受け取られたといったことがよくある。映画においては、アルフレッド・ヒチコックがこう述べている。「何をで

【映画評】 ネオナチ映画、デヴィッド・ヴェンド『女闘士』

ここ10年ほど、旧東ドイツ関連をテーマとしたドイツ映画の上映が多くなっている。今年(2021)はトーマス・ハイゼ監督(1955〜)の218分の長編『ハイゼ家 百年』(2019)の上映もあり、ドイツ現代史を問い直すとともに、これら一連の動きを日本に引きつけ、日本の現代史への問い直しの機会ともなっている。 例をあげれば、日本統治下の台湾から西表島に移住した人たちを撮ったドキュメンタリーである黄インイク『緑の牢獄』(2021)、現在のベトナム人技能実習生の取材をもとに技能実習制度の