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映画の扉_cinema

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どんなに移動手段が発達しても世界のすべては見れないから、わたしは映画で世界を知る。
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#ホン・サンス

《映画日記9》 瀬々敬久、ホン・サンス作品、ほか

(見出し画像:ホン・サンス『それから』) 本エッセイは 《映画日記8》キーレン・パン作品、 枝優花作品、ほか の続編です。 ライン(LINE)について考えることがある。連絡や近況報告で利用しているライン(LINE)ではなく、純粋な線としてのライン。それは、ティム・インゴルド『LINES ラインズ 線の文化史』(左右社刊)に興味を覚えたからだ。 わたしたちは夥しいラインを日常的に目にしている。ラインはラインそのものとしてあるのではない。ラインとラインが描かれた表面との関係を

【映画評】 ホン・サンス監督作品…時間と距離の覚書(3)…『夜の浜辺でひとり』『クレアのカメラ』

本稿は 《時間と距離の覚書(1)…『次の朝は他人』『自由が丘で』》 《時間と距離の覚書(2)…『『正しい日間違えた日』『それから』》 に続く稿として書かれています。 は 《時間と距離の覚書(2)『正しい日間違えた日』『それから』》は 以下は本稿 となります。 『夜の浜辺でひとり』(2017年) パート1(ハンブルク)の冒頭、ハンブルクの浜辺のカフェでのヨンヒ(キム・ミニ)とハンブルクに暮らす女友だちジョン(ソ・ヨンファ)との会話。ふたりはハンブルクの街を散歩し、そ

【映画評】 ホン・サンス監督作品…時間と距離の覚書(2)…『正しい日|間違えた日』『それから』

本稿はチャン・リュル監督『慶州(キョンジュ)ヒョンとユニ』(2014)の時間の交錯からはじまり、ホン・サンス監督作品の時間の〝遠さ〟と距離の〝近さ〟について述べた 《ホン・サンス監督作品…時間と距離の覚書(1)…『次の朝は他人』『自由が丘で』》 の次稿として書かれています。 前稿も読んでいただければ嬉しく思います。 以下は本稿となります。 『正しい日間違えた日』(2015年) ホン・サンスはやはり面白い。再見したいほど面白い。物語は男女のたわいのない会話のもつれなのだが

【映画評】 ホン・サンス監督作品…時間と距離の覚書(1)…『次の朝は他人』『自由が丘で』

中国生まれの朝鮮族3世で、現在は韓国在住のチャン・リュル(張律 장률 1962年〜)の日本を舞台とした作品『福岡』(2019)。本作品がベルリン映画祭で上映されたと耳にしてずいぶん月日はたつのに、わたしは未だに見ていない。いつの間にかわたしの前をスルーしてしまったようだ。それどころか、その5年前に製作された作品『慶州(キョンジュ)ヒョンとユニ』(2014)を見たのは昨年のことである。アンテナをもっと張り巡らせていればこんなことにはならないと思うのだが、わたしは遅れてくるのが常