泣いちゃだめ?④
『きみはえっと。なんだか見たことがあるような気がするよ』
テクくんが言いました。
「ニコちゃんだよぉ。しらないのー?」
『まだ覚えてないよ』
「えー? いっつも笑ってるのにぃー」
『それは、思わず笑っちゃうんだ。あんまりよくわからないから、もっといっぱい、おかおを見せてよ』
「わかったー」
ニコちゃんはテクくんに話しかけます。
「もうすぐミルクくるからね、まっててねー」
ニコちゃんがそう言うと、テクくんはすこし、まゆをひそめました。
『ミルクもいいんだけどさぁ、ボクずっと前みたいにもっと色んな音が聞きたいよ。今みたいに真っ白い光が見える前はね、もっとまっくらだったんだ。なんだかふわふわ気持ちよかったよ』
「そうなのー? それどこー?」
『わからないんだけどさ、お母さんの声がひびきわたっていてね、お母さんが楽しそうにおはなししてるんだ。お母さんが楽しそうだから、ボクもうれしくなっちゃって』
「いいないいなー! わたしもいきたーい!いっしょにいこー」
ニコちゃんは、あわてて玄関へいって、くつをはき始めました。
「ニコちゃん、どこ行くの?」
コトちゃんが聞きます。
「おそといくの」
「ミルク終わってからね。一緒にいかないとあぶないよ?」
「はーい」
ニコちゃんはいそいでもどって、テクくんがミルクをのむようすをながめました。