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筋肉の役割を決める要素とは

筋肉の役割(身体機能的な)は主に次の2つになります。

  1. 身体(関節)を動かすモビリティ

  2. 身体(関節)を安定させるスタビリティ

一般的には「インナーマッスル=スタビリティ」「アウターマッスル=モビリティ」と認識されていることが多いかと思います。しかし筋肉はインナー、アウターで役割が決まるわけではありません。

筋肉の役割を決める要素は、支点となる関節からの起始停止の距離です。距離が長いほうが関節を動かす作用が高くなり、短いほうが関節を安定させる作用が高くなります。

ここで2つの筋肉の例を挙げます。

棘上筋

棘上筋は起始が肩甲骨棘上窩、停止が上腕骨大結節になります。

テコでみると
支点:肩甲上腕関節
力点:大結節
作用点:上腕となります。

支点をまたぐ起始停止の距離は非常に近く、トルクも非常に弱いと言えます。なので腕を高く持ち上げる作用(肩関節外転)はなく、関節を安定させたり、他の筋肉が腕を上げるのをサポートするような役割になります。

では今度は上腕二頭筋を例に見てみましょう

上腕二頭筋は起始が肩甲骨関節上結節(長頭)、肩甲骨烏口突起(短頭)、停止は橈骨粗面、前腕筋膜です。

テコでみると
支点:肘関節
力点:橈骨粗面
作用点:前腕

支点をまたぐ起始停止の距離が長く、肘関節に大きなトルクがかかるので、肘を大きく屈曲させることができます。

このように、支点となる関節をまたぐ距離が長いほど動かす力が大きく働き、短いほど力が弱く関節を安定させるボルトのような作用になるのです。

ではなぜインナーマッスルがスタビリティ、アウターマッスルがモビリティというイメージがついたのでしょうか?

これは基本的にはインナーマッスルの方が筋長が短く、起始停止が支点に近いことが多いからです。

例えば2つの重なる筋肉があって2層になっているとします。普通に考えて表層が短い筋肉ということはないですよね?

下に長い筋肉があったら、骨に付着することができませんし、役割としてもほとんど意味をなさなくなってしまいます。なので、基本的には深層にある筋肉の方が支点に近く安定させるようなスタビリティの役割が多いのです。

なので多くのインナーマッスルがスタビリティ、アウターマッスルがモビリティなことは確かです。しかし全てのインナーマッスルがスタビリティなわけではありません。

これを正しく知っていないと効果的な身体作りができなくなってしまいます。

ちなみにインナーマッスルだけどモビリティの作用が高い筋肉の代表が「大腰筋」です

大腰筋は起始がTh12〜L4椎体側面、全腰椎の肋骨突起、停止が大腿骨小転子です。支点を股関節とすると、非常にレバーが長く股関節を屈曲する作用が強い筋肉です。

※大腰筋は立位姿勢で骨盤を前傾位に保持するスタビリティ作用も高い、モビリティ、スタビリティ両方に働く特異的な筋肉です。

インナーマッスル、アウターマッスルというのは、あくまで表面から見た位置を示す言葉であり、機能を分類した言葉ではありません。

インナーアウターだけでなく、筋肉を機能的に分類することが、鍛える上でも指導をする上でも大切なことです。



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