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父が卓球を、はじめました。

「お姉ちゃん、卓球のラケット貸してくれへんか?」

父からのいつものいきなり電話。

「あー…私のラケットは、さよならしたなー。手元にはもう無いよ。お父さん、卓球、またはじめるの?」

「そうなんよ、近所の公民館でラージボールしてるらしいから、俺も行こうかなと思ってな」

ラージボールとは、
いわゆる熟女マダムや熟年紳士達がたしなむ、
少しピン球の大きめな卓球。

私が高校生の頃、
みんなが集まる小さな体育館の一角で
名物熟年紳士が楽しみながらも、エキサイトしていた。

さらに、
この電話の何日か前にも父から電話があり、

「俺、友達おらへんのや。お前の友達1人くらいくれよ」
で。
ありゃま、そうやなーお父さん、仕事一筋やったもんな。

「私もあげられるくらいは、いてないなー(笑)」
と返すと、

「またお昼食べに来いよ、じゃーなー」
と同時に即ガチャ。これも父の可愛いところ。苦笑)

そんな電話の次の電話が、
ラケットを貸して欲しいという内容だったので、
父なりに友達作りも兼ねてのラージボールチャレンジだったのかと腑に落ちて、母と予算5000円で近所のスポーツ用品店に。

「両面にラバーが張ってあるやつが欲しいんや」との父からの注文通り、シェイクハンドタイプのラケットを。

父は、私が生まれる前から近所の体育館で息抜きにと卓球をしていて、
その時使っていたラケットは、
片面だけラバーが張ってあるペンホルダーだった。
(今ではもう、オリンピック選手も含めてほとんどの人が両面にラバーが張ってあるシェイクハンドのラケットを使っているようです)

「お父さん、なんで前に使っていたペンホルダーじゃないの?」と聞いたら、

「片面だけだったら、話が、場がもたんやろ?あっちこっちと打ち合いしながら話をせな、場がもたんのや」


父は、今年72歳になる。
そんな父がさまざまな紆余曲折を乗り越えて友達作りに自らの枠を広げて取り組もうとする姿に
なんだか、ジーンと来た。

何歳からでも人は変われる を目の当たりに。

父のラージボールを打つ姿を、
…こっそりと見てみたいなと思った今日この頃。
ミモザの花が、もうすぐ咲きそうです。
[花言葉]友情 優しさ 感謝 




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