実用品としてのカメラはもう終わってるよねという話
すごくざっくり言うと、カメラという製品は2018年までの10年で8割減少し、そこからの2年でさらに8割減っているというのがこの数字。どんな市場であれ、こんなペースで減衰されたら企業としては対策を施す余地もない。
スマホユーザーにどうやってカメラを買わせるか? というのは既にナンセンスな話。スマホ買い替え時には多くの人がカメラ機能を重視していて、その上で写真専用機で撮るのではなくスマホで撮ることを選択している。そもそもスマホで当たり前にできることがカメラにはできない以上、カメラは「不便なもの」でしかない。まずその基礎理解が必要だと思う。
実際のところ、実用品としての役割はスマホにとって代わられて久しく、写真専用機の独壇場と言えるのは超望遠くらい。それだってコロナで活躍の場がないし、最近の(HUAWEI P40proとか)は超望遠にも進出してきている。
だからカメラはもはやエントリーモデルを必要としない。安価に撮影できる機材を提供する、というニーズはスマホが果たしているから。既にカメラ市場におけるゲームチェンジは完了しているのだ。
良しあしは別として、今後カメラは腕時計のようなアイテムになっていくのだと思う。
ぼくは普段、オートマティックの腕時計を身に着けている。既に時間確認という用途はスマホにとって代わられており、いらないと言えばいらないものだ。でも、小さなローターが機械式ムーブメントを稼働させチクタク動いている様子はとても愛おしいと思うし、ネジを巻くのを怠ると止まっちゃうあたりなんて、かわいいと思う。だからこそ愛着を持って使っている。
カメラも同じで、カメラとしての機能はさておきとして、「かっこいい」「かわいい」「高級感、上質感がある」「使って楽しい」「操作して気持ちいい」というエモーショナルな部分で価値を認められるようにならないと、生き残れない。2強を中心に、当面は既存製品の延長線上の製品が出てくると思うけど、それによって市場が回復することは絶対にない。実用品としてはスマホに勝てないし、いま4Kだけどそれが8Kで撮れるようになるからって、高価な機材を買う人などいない。すそれによって体験が変わるユーザーなんて本当に一握りなのだから。
ところで新宿にオープンした北村写真機店に行ってきた。たとえて言うなら、カメラ版のアップルストアであった(やや作りは窮屈だけど)。ショーウィンドウでは、従来のカメラ店で幅を利かせていた2強の存在感は高くなく、ライカ、ローライ、ハッセル、その他国産フイルムカメラ全般が手厚くフィーチャーされていた。
それでいいと思う。「スマホから写真機へ」という流れはもはや無理筋なのだから、残された道は、あらためてフイルムカメラから入ってもらいそこからデジタルへ、という流れしかない。でもその時にラインナップされている製品は、8K撮影とか1億画素とかそういうことではなく、とてもエモーショナルなアイテムであってほしいなと思う。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?