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やめられない嗜好品のひとつ、煙草
「煙草を吸い始めたきっかけは?」とよく聞かれる。
「男がきっかけ。」
大概その時点で、聞いた人は最も男に影響を受けなさそうな女も、やはり煙草は男の影響かと、少し笑う。
そこで少し間を置いて。
「わたしが人生の中で最も影響を受けた男。それが母方の祖父。祖父は、生涯通しておいしそうに煙草や葉巻やパイプを楽しんでいた。」
だって、葉を巻いた先に火を灯して、プカプカと吸っては吐く行為って、幼心に不思議で面白いでしょ?それで興味を持って。と乾いた笑いまで添えて、そこまでセットで答えるというのがわたしの常套句なのである。
それは嘘ではないが、人には言わない最後のダメ押しとなったきっかけがある。それが、小さい頃にテニスを教えてくれた恩師の死であった。
その時は、失ったことがあまりにも受け入れられなくて、彼女の病で細ってしまった姿も、二度とあの太陽のような菩薩のような笑顔を見せてくれないであろう死に顔も私は見ることが出来なかった。だから、せめて何か亡くなってしまったということの実態を得たくて。
悲しみを吸っては吐いて、血中にずっと循環させていたかった。
その時に吸った煙草はとても愛しかった。燻り、天に昇って行く煙をいつまでも見送っていた。
当時大学生で二十歳だった私は、大学の十一号館の裏の喫煙所に住んでいたのではないかというくらいよく喫煙した。
そこで出会った友人とは、今でも付き合いがある。大切な友人だ。
その時は、悲しくいないと思い出諸共どこかへ飛んで行ってしまいそうだと寂しくおもっていたけど。
最近信じていることがある。
きっと、失ったものやなくしてきたものは、形を変えてずっと傍にいてくれる。
美しく。綺麗に。