創作、開始〜パートナーとの話⑤
私の彼は、物書きのはしくれでもある。
知り合った頃から、言葉を無駄に使わず、必要な単語だけを上手に丁寧に紡ぎ出す人だった。
そう言う言葉の使い方を彼はとても大事にしていた。
私も彼から出る言葉たちが大好きになった。
そして、前にも言ったが、彼の人生にはいわゆる汚点がまだない。
正直に慎重に生きているので、失敗がないのである。
反対に。
私といえば。
人生は人間関係のトラブルにまみれている。
基本失敗ベースだ。
離婚も経験してるし、過去の仕事では簡単にはお話しできないような出来事ばっかり。巻き込まれてるのか飛び込んでるのかさっぱりわからない。
おそらく両者なんだと思う。
こんなふうに真逆の生活を歩んできたものだから、彼が物を書いている理由がわからなかった。
私のような人間の中身を吐露して、誰が喜ぶと言うのだ。
真剣にそう思っていた。
『みんな、何かを作ってみたらいいんだ。
創作は楽しい。何よりも大切な物だよ』
彼は言う。あまりにも楽しそうに言うものだから、その世界を覗いてみたくなる。
そう相談すると、彼は創作の世界を垣間見せてくれた。
彼には創作において仲間たちがいた。
彼らの自由な作品は、私を圧倒した。
と、同時に劣等感も与えた。
一瞬にして、自分が何もできない人のように感じられ、辛くなった。
なぜこう感じたのかは今も分からない。
彼に言った。
私は無理だ。
あなたほど良い人生は歩んでないし、思い起こしたら死んでしまいたくなるようなこともあったと思う。ほぼ忘れてるけど。
創作して、思い出すのが怖い。
思い出せない方が高いけど!
謎のメンヘラ誕生だ。
だが、彼は優しかった。
『無理ならやらなくていい。
無理して欲しいなんていってないんだ。
大丈夫?』
そのあと、1時間くらい話しただろうか。
『大丈夫?そうだよね。』
と共感し、ひたすら話を聞いてくれる彼。
性格の良さが滲み出ている。
しかしそのあと。
『うん…うん…』
わかりやすく眠くなっている。
正直な彼は、眠気とは戦えない。
そうか、おねむの時間だった。
『もう…ねる!!』
突然のシャットダウン。
彼の中の睡魔が、圧勝した瞬間であった。
私も彼と話せたことに満足し、一晩ぐっすり寝た。
翌朝。
写真を撮ろう。
目を覚ましてすぐさまそう思った。
写真なら、表現できる。
これだ!
ガッツリいけそうだ!
謎の確信を持って、写真を撮る。
投稿。
写真を撮る。
投稿。
写真。投稿。写真…
彼の創作仲間たちにだけ見えるスペースで無駄に投稿し続けた。
きっと大変なご迷惑をおかけしたし、現在進行形だと思う。
躍起になって投稿し続ける私に、彼が言う。
『すごいね、マチ。もう大丈夫なの?』
うん、大丈夫。
ありがとう。創作楽しいね。
一つ言っていい?
…私の作品、最高すぎない?
『恥を知れ!恥を!』
確かにな。
彼のこのセリフを私は一生忘れないだろう。