AI時代を生き抜け
こんにちは!
今回の記事は「AI時代に人である自分が活躍するために」というテーマを労働にフォーカスしながら書いていきます。
AI時代とは
今私たちは、デジタライゼーションという技術革新の真っ只中にいます。デジタライゼーションとは、これまで記号化されずに流通していたあらゆる情報をコンピューターが可読・処理可能な形式で流通させること、つまりデータ化させることを指します(新井・尾崎 2017)。
多くの方がご存じかと思いますが、AIとはArtificial Intelligence(人工知能)の略語です。人間に代わって、言語の理解や推論、問題解決などの知的行動をコンピューターに行わせる技術のことを指します(Wikipedia)。AIは「人と同じように思考する機械」を目指す技術というより、モノについたセンサー情報から、機械にコトを「理解」させるための技術と捉えることができます(新井・尾崎 2017)。AIは、すでに私たちの日常生活にもあふれています。たとえば、iPhoneのSiriやスマートスピーカーのアレクサ。彼らはこういったAI機能から構成されているのです。
労働の未来予測
デジタライゼーションは人の労働に大きなインパクトをもたらします。
野村総合研究所(以下NRI)(2015)によると、将来日本の労働人口の約49%が技術的にAI等で代替可能になると予測されています。
図1 AIやロボット等で代替可能な職種
出所:野村総合研究所(2015)より作成
それぞれの職種の一部をご紹介します。まず、代替可能性が高い職種は事務員(一般・医療・経理等)、受付係、駅務員、管理人、警備員、新聞配達員、測量士、タクシー運転手、配達員、データ入力係、ホテル客室係、レジ係などです。一方、代替可能性が低い職種はアナウンサー、映画カメラマン、アートディレクター、グラフィックデザイナー、経営コンサルタント、マーケティング・リサーチャー、医師、スポーツインストラクター、教員、保育士、幼稚園教諭、料理研究家、ファッションデザイナー、学者などです。
図2 タスク難易度の理論的な地形
出所:Tegmark(TED talks 2018)より加筆
これは、AIが人間並みに作業する場合の各タスクの難易度を示したイメージです。マサチューセッツ工科大学の物理学者でありAI研究者のTegmark氏(TED talks 2018)によると、海面にあるタスクは現在のAIができることを表しています。つまり、海面から遠ざかれば遠ざかるほど、AIにとって難易度が高く代替できないタスクであるということです。たしかに、NRIが予測する「AIによる代替可能性が低い職業」は、このイメージでいう海面から離れたところに位置するタスクやそれに関連するものです。
しかし、楽観視はできません。これはあくまで「現在のAI」の話です。先ほど、AIは「人と同じように思考する機械」を目指す技術ではないといいましたが、多くのAI研究者が人間と同様の感性や思考回路を持つ汎用人工知能(Artificial General Intelligence: AGI)の実現が数十年以内に可能であると予測しています。この年数に関しては諸説ありますが、今は陸地や山の頂上付近にあるタスクも将来的にはAIがこなせるようになってしまう可能性があるということです!
Tegmark氏は、「水際にある職業は避けましょう」なんていって会場の笑いを誘っていましたが、正直笑える状況ではありませんね(笑)
未来のAGIがスターウォーズに出てくるかわいらしいドロイドなら歓迎ですが、現実は違うようです。AGIなんて出てきたら、なんだか私たちがこれから生きていく時代はAIにコントロールされてしまうような気がしませんか?
求められる人材像
このようなAI時代に、ビジネスにおいて求められる人材像とは一体どんな姿なのでしょうか。平成29年通信利用動向調査によると、AIの普及に際し企業が従業員に求める能力は、「論理的思考などの業務遂行能力」、「企画発想力や創造性」、「人間的資質」が40%以上という高い割合を示していることがわかります。
図3 AIの普及に対して企業が従業員に求める能力
出所:総務省「平成29年通信利用動向調査」(2018)より作成
また、AI導入が進んだ社会では上記のような基礎的な能力に加え、個別業務に対応した新たなスキルが求められるようになります(総務省 2018)。たとえば、AIがある企業に導入された場合、そのAIを活用できる人材が必要になります。従来は人である従業員が担ってきたタスクをAIが代替できるようになった場合、それを担当していた従業員は他のタスクを行う必要性が出てきます。さらに、AIにより新たに創出される職業に求められるスキルの習得も必要になります。このように、AIの導入に伴い、私たちに求められる能力やスキルも変化するのです。
図4 従業員が取得したいと考えているスキル
出所:リンクトイン 「Future of Skills 2019」 今、社会人が最も取得したいスキルとは?
これは、LinkedInが発表した日本・オーストラリア・インド・シンガポールのビジネスパーソン4,136人を対象に行ったリサーチ「Future of Skills 2019」の結果です。
多くの人が「今最も取得したいスキル」として、ソフトスキルに価値を置いていることがわかります。ソフトスキとルは、AIやビックデータなどのテクノロジーでは補うことができない創造性やコミュニケーションといった人間特有のスキルです。ソフトスキルが重要と回答した人の47%が「AIの台頭に凌駕されない人間的なスキルが必要だから」、44%が「今後も続くテクノロジーの最後に残るのは高い思考力だから」、43%が「キャリアを継続していく上で重要だから」といった理由を挙げています。AI時代に求められるスキルとして、ソフトスキルの習得および向上は必須といえるのではないでしょうか。
AI時代を生き抜くために
ここまでみてきた労働にまつわるファクトを踏まえ、このブログのテーマである「AI時代に人である自分が活躍するために」について、私の3つの考えをシェアさせていただきます。
まず、私は時代の変化に柔軟でありたいと考えます。
Tegmark氏(Ted talks 2018)によれば、今後人類が明るい未来を築いていくためにはAIを操縦していく必要があるといいます。彼の話からわかるように、私たち人間とAIの共生は大前提です。先述したように、すでにAIの発展に伴って私たちを取り巻く労働環境、求められる能力やスキルも変化しています。文系学部に在籍する私にとってAIなんて未知の領域でしたが、この記事を書きながら新しいことを学ぶ楽しさにも気が付きました。だからこそ、常にアンテナを張り巡らせながら時代の変化を柔軟に受け入れ、今後求められる能力やスキルを身に付けていきたいと考えるのです。
次に、信頼される存在でありたいと考えます。
AI時代においては、私たちの情報や行動がすべて「データ化」されます。たとえば、ネオキャリアが掲げる「ファンメイキング」もデータ化できますね。お客様の成長のために、目の前のお客様にどれだけ真剣に向き合ったのか、どんな価値を提供することができたのかといった自分の仕事ぶりがそのまま数値に表れ評価されるということです。数値が出るのは一瞬かも知れませんが、人との信頼関係の構築には時間がかかりますよね。「この人は数値が低いから仕事を任せるのは不安…」なんて正直思われたくありません。ですから、自分自身の仕事に責任を持ち、また、日々の積み重ねを意識してお客様と会社の皆様から信頼していただけるような存在になりたいです。
そして、最後はやはり人間らしさで勝負したいと考えます。
先述したLinkedInのリサーチからもわかるように、多くのビジネスパーソンは人間特有のソフトスキルを重視し、AIに凌駕されないところで自分を磨こうとしています。また、AGIについてご紹介しましたが、実は情動や自意識の組込が必須であることから、変化と異常への対応能力を完備したAIの実現は容易ではないとの見解もあります(中馬 2017, p.5)。ただ、仮にAIが図2でいう山頂に位置するタスクまでこなせるようになったら、どうなるのでしょうか。人間の役割はすべてなくなってしまうと思いますか?
私が留学していたときの話です。最初は英語が上手に話せませんでした。しかし、人のあたたかさや気持ちというのは、必ずしも言語を介して伝わってくるわけではなく、表情、ボディランゲージ、声のトーンなどさまざまなものから伝わってくると気が付きました。人間は思ったよりも複雑です。それが人の心を揺さぶるのです。だからこそ、AIに凌駕されない人間らしさは、AI時代における大きな武器となり得るのではないかと考えます。
まとめ
今回は、AI時代の概要、労働の未来予測、求められる人材像について触れ、私の考えをシェアさせていただきました。AI時代について調べ始めたときは、改めてショックを受けましたが、生き抜いていくための道はまだまだあると思いました。Tegmark氏によれば、AI時代に生きる私たち人間は選択を迫られています。「なんでもできるAIに任せて後は何も心配しなくていい」とAIの進化にただ満足するのか。もっと野心的でいるのか。あなたはAI時代を生き抜くためにどちらを選択しますか?
参考資料
新井紀子・尾崎幸謙(2017)「デジタライゼーション時代に求められる人材育成」『NIRA オピニオンペーパー』、第31巻、pp.1-10
総務省(2018)
中馬宏之(2017)AI/IoT時代における人的資本理論再考:社会ネットワークとしての人的資本が必須に」『RIETI Policy Discussion Paper』、第17巻、pp.1-43
野村総合研究所(2015)「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に~601種の職業ごとに、コンピューター技術による代替確率を試算~」『未来創発』、pp.1-5
Edeleman Japan株式会社(2019)、リンクトイン 「Future of Skills 2019」 今、社会人が最も取得したいスキルとは? https://www.atpress.ne.jp/news/186330、2020年1月15日参照
Wikipedia(2019)、人工知能 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E5%B7%A5%E7%9F%A5%E8%83%BD、2020年1月15日参照
Mark Tegmark (2018). How to get empowered, not overpowered, by AI. TED. Retrieved January 15, 2020, from https://www.ted.com/talks/max_tegmark_how_to_get_empowered_not_overpowered_by_ai/up-next
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