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RIZAPグループとSOMPOホールディングスの資本業務提携

SOMPOホールディングスは、RIZAPグループとその子会社RIZAPに対して合計300億円を出資し、RIZAPグループの株式4.87%、RIZAPの株式23%を取得することを2024年6月7日に公表しました。
この増資は、両社の資本業務提携の一環として行われます。

RIZAPグループは第三者割当の方法により、SOMPOホールディングスに対して同社の普通株式29,070千株を割り当て、割当後のSOMPOホールディングスの同社に対する議決権比率は4.87%となります。

加えて同社の子会社であるRIZAP株式会社はSOMPOホールディングスに対してRIZAPの普通株式を割り当てて200億円の払込を受け、SOMPOホールディングスのRIZAPに対する議決権比率は23%となります。

今回のRIZAPグループとSOMPOホールディングスの資本業務提携および第三者割当増資について、RIZAPグループの状況と過去経緯も含め、意義をまとめます。

資本業務提携の意義

https://ssl4.eir-parts.net/doc/2928/ir_material5/231053/00.pdf

財務基盤の強化

RIZAPグループは、過去の急速なM&A戦略や新規事業への投資により、有利子負債が増加し、財務状況が圧迫されていました。2023年3月期時点での有利子負債は約828億円に達しており、財務の健全化が急務となっていました。
SOMPOホールディングスからの資本注入により、約100億円の資金を調達することで、財務基盤の強化が図られます。これにより、RIZAPは財務の安定性を高め、将来的な成長投資に向けた余力を確保することができます。

chocoZAP事業の成長促進

RIZAPグループは、chocoZAP事業を成長の柱と位置づけており、2024年3月期末には1,370店舗、2026年3月期には2,800店舗、2027年3月期には3,800店舗の出店を目指しています。
SOMPOホールディングスとの提携により、SOMPOの強固な顧客基盤(約2,500万人)を活用してchocoZAPの利用促進を図ることができます。これにより、会員数の増加と店舗数の拡大が期待され、chocoZAP事業の成長が加速します。

新サービス・新商品の開発

SOMPOホールディングスの損保、生保、介護事業の顧客およびデータ基盤と、RIZAPグループが持つライフログデータや指導ノウハウを組み合わせることで、顧客ニーズや健康状態に即した新サービス・新商品の研究開発が可能となります。これにより、RIZAPは新たな収益源を確保し、事業の多角化を進めることができます。

介護事業やヘルスケア分野での協業

SOMPOが展開している介護事業やヘルスケア分野において、RIZAPの事業を活用することで、両社のシナジー効果を最大化することができます。これにより、RIZAPは新たな市場に参入し、事業領域を拡大することができます。

投資観点からのコメント

投資リスクの軽減

SOMPOホールディングスとの提携により、RIZAPの財務基盤が強化されることで、投資リスクが軽減されます。特に、chocoZAP事業の成長が期待される中で、財務の安定性が確保されることは、機関投資家にとって重要なポイントです。

成長ポテンシャルの評価

chocoZAP事業の成長ポテンシャルは高く、SOMPOホールディングスとの提携により、その成長がさらに加速することが期待されます。機関投資家は、RIZAPの成長ポテンシャルを評価し、長期的な投資価値を見出すことができます。

シナジー効果の期待

SOMPOホールディングスとの提携により、両社のシナジー効果が期待されます。特に、新サービス・新商品の開発や介護事業・ヘルスケア分野での協業により、RIZAPの事業領域が拡大し、収益基盤が強化されることは、機関投資家にとって魅力的な要素です。

ガバナンスの強化

SOMPOホールディングスの資本参加により、RIZAPのガバナンスが強化されることも期待されます。これにより、経営の透明性が向上し、機関投資家にとって信頼性の高い投資先となるでしょう。

以上の点から、SOMPOホールディングスとの資本業務提携および第三者割当増資は、RIZAPグループにとって財務基盤の強化、成長ポテンシャルの向上、シナジー効果の創出など、多くの意義があると考えられます。リスク軽減と成長機会の拡大が期待できる魅力的な投資機会となるでしょう。

一方でchocoZAP事業の収益化が遅れた場合や、SOMPOホールディングスとの提携によるシナジー効果が十分に発揮されなかった場合には、投資家からの評価が下がる可能性もあります。したがって、機関投資家は、今後のchocoZAP事業の収益化状況や提携による具体的な成果を注視していく必要があるでしょう。

RIZAPグループの概要と歴史

設立と初期の成功

RIZAPグループ株式会社は、現社長の瀬戸健氏が2003年4月に24歳で設立しました。当初はサプリメントの販売からスタートしましたが、業績は振るわず、そのおまけとして配布していた豆乳をベースとしたクッキーをダイエット食品に改良して販売したところ、ヒット商品となりました。創業4年目の2007年3月期には売上高が100億円を超えました。

事業の多角化とM&A

その後、豆乳クッキーの競争激化による売上減少、消耗品の定期購入と組み合わせた割安な美顔器、泥の石鹸などのヒットとブーム終了を経験しました。2012年にパーソナルトレーニングジムRIZAPの運営を行うRIZAPボディメイク事業を開始し、「結果にコミットする。」というキャッチフレーズと有名人がRIZAPの指導で痩せるテレビCMによって知名度が向上し、業績が成長しました。

M&Aによる事業拡大と失敗

同社は2006年5月に上場し、2006年3月期の売上高は約24億円でしたが、2023年3月期の売上収益は約1,605億円にまで拡大しました。その主な要因はRIZAPボディメイク事業の売上成長もありましたが、積極的なM&Aによる部分が大きいです。同社は「自己投資産業」をテーマに2016年3月から2018年3月期の間に積極的にM&Aを実施し、事業の多角化を進めました。

しかし、急速なM&Aを進めた結果、子会社の業績改善が遅れ、2019年3月期には減損損失、固定資産除却損を計上し、親会社の所有者に帰属する損失約194億円となりました。早期の経営改善のため、投資回収や収益改善が困難な企業の縮小、撤退、売却、ガバナンスの強化を進め、M&Aを原則凍結することとしました。

財務状況と経営改革

2023年3月期時点で、同社の有利子負債は約828億円(2022年3月期末は約664億円)となりましたが、そのうち約376億円はIFRS16号によるリース契約(主に店舗賃貸借契約のオンバランス化であり、事業継続の限りキャッシュフローで返済可能)によるものです。

それを除く有利子負債は約451億円(2022年3月期は約329億円)でした。2023年3月期はchocoZAP事業への先行費用投下によって有利子負債が増加しました。

事業セグメント

同社はヘルスケア・美容、ライフスタイル、インベストメントの3つのセグメントで事業を展開しています。ヘルスケア・美容セグメントは、RIZAP関連事業およびMRKホールディングスが中心です。

ライフスタイルセグメントは、エンターテイメント商品等の小売およびリユース事業の店舗運営、アパレルおよびアパレル雑貨の企画・開発・製造、生活雑貨等の販売、婦人服の通信販売からなります。

インベストメントセグメントは、同社グループ内の投資事業および再建を加速するべき事業を管理しています。

RIZAP関連事業

RIZAPは、パーソナルトレーナーのトレーニング指導および食事指導によって、顧客が短期間(2カ月)で痩身または健康体への変化を達成するサービスです。

RIZAP関連事業は、連結子会社RIZAP株式会社が運営しているパーソナルトレーニングジムRIZAP(2022年3月時点で129店、海外を含む)およびコンビニジムchocoZAPが中心の事業です。

chocoZAP事業

RIZAPで蓄積した知見やノウハウを進化させた「5分でも結果を出せる」メソッド、顧客のライフログデータを活用したサポート等を低価格(月額2,980円(税別))で提供しています。2023年3月末のchocoZAPの店舗数は479店舗、会員数は35万名超でした。

RIZAP関連事業は、2022年9月より、新規事業「chocoZAP」を展開しています。chocoZAPは、毎日最短5分の運動で健康効果を得ることができる、RIZAP発の運動初心者向け「コンビニジム」です。

中期経営計画

同社は2022年9月に中期経営計画(2023年3月期~2026年3月期)を発表しました。2026年3月期までの4カ年中期経営計画において、「chocoZAP事業」に投資(費用投下および設備投資)を集中させ、主にchocoZAP事業の店舗数および会員数の増加によって、中期経営計画の最終年度である2026年3月期に、営業利益300億円(2022年3月期の営業利益は52億円)の達成を目標としていました。

2024年2月には、chocoZAP事業が会員数・出店数ともに当初の想定を上回って進捗し、中期経営計画の進捗が順調であることを踏まえ、中期経営計画の改訂を実施しました。当初の中期経営計画最終年度である2026年3月期の営業利益300億円の目標に、新たに2027年3月期に営業利益400億円の目標を追加しました。

これと併せて、出店数の目標値について、前回計画の2026年3月期2,000店から今回計画では2026年3月期2,800店に変更し、2027年3月期3,800店を追加しました。

経営課題

業績の不安定さ

RIZAPグループは、過去数年間で急成長を遂げましたが、その成長は必ずしも持続的ではありませんでした。特に、2019年3月期には大幅な赤字を計上し、通期損益予想を159億円の黒字から70億円の赤字に下方修正しました。この背景には、急速なM&A戦略による子会社の業績改善の遅れがありました。

M&A戦略の見直し

RIZAPグループは、積極的なM&A戦略を展開してきましたが、その結果、子会社の数が急増し、2018年11月時点で連結子会社は85社に達しました。しかし、これらの子会社の統合プロセス(PMI)がスムーズに進まず、経営が圧迫される結果となりました。

経営の合理化とコスト削減

不採算店舗の減少や減損損失の計上など、経営合理化策を推進していますが、これに伴う短期的な損益の悪化も課題となっています。

経営戦略

chocoZAP事業の成長

RIZAPグループは、2022年9月より新規事業「chocoZAP」を本格展開しています。chocoZAPは、運動初心者向けの「コンビニジム」であり、低価格で簡単に運動習慣を定着させることができるサービスです。2023年3月末時点で479店舗、会員数は35万名を超え、急成長を遂げています。今後も店舗数の拡大と会員数の増加を目指し、2026年3月末までに2,000店舗の出店を計画しています。

DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進

RIZAPグループは、2022年6月にDX専門子会社であるRIZAPテクノロジーズ株式会社を設立し、デジタル技術を活用した事業の改善に取り組んでいます。アプリ・サービス開発やECサイト運営の内製化を進め、データドリブンな事業運営を目指しています。

グループシナジーの活用

RIZAPグループは、グループ会社間のシナジーを最大限に発揮するための企業間連携を強化しています。これにより、グループ全体での売上・利益の拡大を目指しています。

健康経営の推進

RIZAPグループは、社員の健康を重視し、健康経営を推進しています。定期健診やストレスチェックの徹底、健康管理ツールの活用、リモートワークの推進など、社員の健康意識の向上と働きやすい環境の整備に取り組んでいます。

M&Aの歴史

MRKホールディングス株式会社(旧マルコ)

  • 事業内容: 婦人下着およびその関連事業、マタニティおよびベビー関連事業

  • 買収の背景: RIZAPグループは、補整下着の製造販売を行うMRKホールディングスを買収し、ヘルスケア・美容セグメントの強化を図りました。

  • 業績: 2023年3月期の売上高は195億円、税金等調整前当期純利益は8.4億円でした。

REXT Holdings株式会社(旧ワンダーコーポレーション)

  • 事業内容: エンターテイメント商品等の小売およびリユース事業の店舗運営、アパレルおよびアパレル雑貨の企画・開発・製造、生活雑貨等の販売

  • 買収の背景: エンターテイメント商品やリユース事業を通じて、ライフスタイルセグメントの拡充を目指しました。

  • 業績: 事業ポートフォリオ改革により、2023年3月期には増益を達成しました。

BRUNO株式会社(旧イデアインターナショナル)

  • 事業内容: 雑貨の輸入販売

  • 買収の背景: 生活雑貨の販売を通じて、ライフスタイルセグメントの強化を図りました。

  • 業績: 2023年3月期には減収減益となりましたが、トラベル商品やアウトドア関連商品の売上が伸びました。

堀田丸正株式会社

  • 事業内容: 繊維素材の販売

  • 買収の背景: 繊維素材の販売を通じて、インベストメントセグメントの強化を図りました。

  • 業績: 2023年3月期には減収減益となりましたが、D2C事業への先行投資を進めました。

SDエンターテイメント株式会社

  • 事業内容: ウェルネス事業、フィットネス、保育・介護等

  • 買収の背景: ウェルネス事業を通じて、インベストメントセグメントの強化を図りました。

  • 業績: 2023年3月期には売上高373億円、営業利益1.2億円を達成しました。

M&Aの失敗と構造改革

RIZAPグループは、2016年3月期から2018年3月期にかけて積極的にM&Aを実施しましたが、急速なM&Aの進行により、子会社の業績改善が遅れました。その結果、2019年3月期には減損損失や固定資産除却損を計上し、親会社の所有者に帰属する損失が194億円に達しました。このため、投資回収や収益改善が困難な企業の縮小、撤退、売却、ガバナンスの強化を進め、M&Aを原則凍結することとしました。

財務的な課題

RIZAPグループの財務状況は、chocoZAP事業への大規模な先行投資により、2023年3月期および2024年3月期に有利子負債が増加しました。2023年3月末時点の有利子負債は約828億円で、そのうち約376億円はIFRS16号によるリース契約によるものです。これを除くと有利子負債は約451億円となります。

RIZAPグループは、chocoZAP事業への投資資金を確保し、財務体質を強化するため、以下の資金調達策を実施しました。

  • 資本性劣後ローン: 社長の資産管理会社であるCBM株式会社からの劣後ローンによる資金調達。この劣後ローンは返済期限がなく、国際会計基準上「資本」に計上されるため、財務比率の改善に貢献します。2023年8月に55億円、2024年1月に45億円を調達しました。

  • 長期借入金: りそな銀行からの約12億円の長期借入金による資金調達。

  • 第2回募集新株予約権の発行: 社長に対する有償の新株予約権発行により、約108億円を調達しました。

これらの資金調達により、chocoZAP事業への投資を継続しつつ、有利子負債の削減を進めています。2023年11月にはchocoZAP事業が単月黒字化を達成し、2024年3月期第4四半期以降は営業キャッシュフローもプラスになる見込みであることから、有利子負債の返済は順調に進むと予想されています。

また、同社は2025年3月期以降にchocoZAP事業が回収期に移行することで、有利子負債がさらに減少し、財務状況が改善すると見込んでいます。

資本業務提携の内容

RIZAPグループ株式会社は、2024年6月7日にSOMPOホールディングス株式会社との資本業務提携および第三者割当による新株式の発行を発表しました。この提携と増資の詳細は以下の通りです。

1. 新株式の発行

  • 発行新株式数: 普通株式29,070千株

  • 発行価額: 1株につき344円

  • 払込期日: 2024年6月27日

  • 調達資金の額: 約100億円

  • 割当予定先: SOMPOホールディングス株式会社

  • 割当後の議決権比率: SOMPOホールディングスのRIZAPグループに対する議決権比率は4.87%となる

2. RIZAP株式会社の株式割当

  • 割当株式数: RIZAP株式会社の普通株式

  • 払込金額: 約200億円

  • 議決権比率: SOMPOホールディングスのRIZAP株式会社に対する議決権比率は23%となる

業務提携の内容

1. chocoZAPの利用促進

  • SOMPOグループの国内顧客基盤(約2,500万人)に向けたchocoZAPの利用促進

  • RIZAPグループ会社の商品・サービスの浸透に向けた各種施策の実施

2. SOMPOグループの商品・サービスの浸透

  • RIZAPグループの顧客層(約120万人のchocoZAP会員)へのSOMPOグループ会社の商品・サービスの浸透に向けた各種施策の実施

3. 新サービス・新商品の研究開発

  • SOMPOグループの損保、生保、介護事業の顧客およびデータ基盤とRIZAPグループが持つライフログデータや指導ノウハウの組み合わせによる顧客ニーズや健康状態に即した新サービス・新商品の研究開発・提供

4. 介護事業やヘルスケア分野での協業

  • SOMPOが展開している介護事業やヘルスケア分野におけるRIZAPの事業活用も含めた協業の促進

資金の使途

  • 具体的な使途: chocoZAP関連事業の設備投資および運転資金

  • 金額: 9,959百万円

  • 支出予定時期: 2024年7月~2025年6月

割当予定先の選定理由

RIZAPグループは、chocoZAP関連事業の成長のために、SOMPOホールディングスが有する強固な顧客基盤をはじめとする経営リソースが必要不可欠であると判断しました。また、両社間には既に提携実績があり、chocoZAP関連事業の成長に向けた各種施策が円滑に実施されることも期待されています.

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