⑥『ティール組織』ざっくりまとめ:「進化型(ティール)」(p73~87)
衝動型(レッド)、順応型(アンバー)、達成型(オレンジ)、多元型(グリーン)は意識の「第一段階」である。その段階にいる人々は、自分たちの世界観だけに価値があり、他の人々は間違っていると考える。
進化型(ティール)パラダイムに移行して初めて、意識は「第二段階」となり、意識は世界に対処するため複雑で洗練された方法に向かって進化することを認識する。
進化型(ティール)への移行を引き起こすのは「自分自身のエゴから自らを切り離す」ことだ。
自らのエゴと距離をとることで、「恐れ、野心、願望」がいかに自分を動かしていたかが分かる。そして、「支配したい、自分を好ましく見せたい、周囲になじみたい」という欲求を最小化できるようになる。
「恐れ」に置き換わるのは「人生の豊かさを信頼する能力」だ。
また、進化型では、意思決定の基準が外的なものから内的なものに移行する。
「この判断は正しそうか?」「私は自分に正直になっているか?」など、誠実さや自分らしさという感覚を出発点とし、自分が声をあげて行動を起こさなければならない状況に対する感覚を養う。
そして、エゴを失う恐れが少ないので、一見危険に思える意思決定が可能となる。
進化型では他人から認められること、成功、富、帰属意識は快楽的な体験であり、エゴを充足させる「わな」と捉えられる。
進化型パラダイムに至ると、内面の正しさを求める旅を続けることになる。その結果、自分が何者で、人生の目的は何かという内省に駆り立てられる。
人生の究極の目的とは、自分自身の本当の姿を表現し、本当に自分らしい自分になるまで生き、才能や使命感を尊重し、人類や世界に役立つことだ。
進化型パラダイムでは、人生とは自分たちの本当の姿を明らかにしていく個人的、集団的な行程とみられる。
そのため、人生の目標を設定し、どの方向に向かうか決めるのではなく、人生を解放し、一体どのような人生を送りたいのか内からの声に耳を傾けることを学ぶ。
進化型のパラダイムに従うと、自分の本質に迫り自分の使命に向かって努力するのが原動力となる。「大志を抱いているが、野心的ではない人」と表現される。
他のパラダイムにいる人からすると、進化型のパラダイムで行動する人は「自分の個人的な成長を邪魔する人々を許せず、人生の目的と合わない状況を受け入れたくない人」のように映る。
人生は、素養がもともと無いものに無理してなろうとすることではない。「欠点」を見るのではなく「長所を生かす」というパラダイム変化が起こっている。
理性の先の知恵
進化型パラダイムは結果にそれほどこだわらないので、時に不愉快な現実の真理を比較的容易に受け入れられる。
進化型では「知ること」に対し、分析的な「左脳」によるアプローチも感情的な「右脳」によるアプローチも含め、あらゆる領域を積極的に利用する。
自分の感情についても、分析的なアプローチによって自身や状況のヒントを得る。
また、知恵を直感の中に見つけることもある。
さらに、非日常的な意識状態(瞑想、黙想、幻覚、フロー体験、至高体験)に定期的に浸り、人間の経験の全領域に触れようとする。
また、複雑な思考を通じて、矛盾しているもの同士を合理的につなげる能力をもつ。「自由と責任」「孤独とコミュニティ」「自己と他者」などについては進化型パラダイムに到達して初めて本当の意味で理解しはじめる。
全体性(ホールネス)に向けた努力
進化型の段階になると、全体性(ホールネス)を心の底から渇望する。
エゴと自分自身の深い部分を突き合わせ、心、身体、魂を統合し、自分の中にある女性らしい部分と男性らしい部分を発掘し、他人との充実した関係を築き、自然との関係の修復を望むようになる。
進化型パラダイムへの移行は、超越的な精神領域への解放と、私たちが大きな一つの完全体の中でつながり、その一部であるという深い感覚とともに起こる。
全体性は、世の中の職場が促進する「分離」と対立する。
ほとんどの職場で、人々は働いている部門、階級、バックグラウンド、業績に基いて分離される。職業が個人から分離され、組織が競争相手やエコシステムから分離されている。
進化型パラダイムに移ろうとする人々にとって分離は苦痛なので、転職や独立により全体性を得られる協調的な働き方を選択することも多い。
ほかの人々との関係における全体性
進化型パラダイムでは、「判断」と「寛容」という対立を超越できる。異なる意見に対して「決めつけない」ことでより高次の真実にたどりつける。
自分の信念を点検し、それが優れていることを発見すると同時に、他の人のことも基本的に等しい価値の人間として受け入れることができる。
判断をしない世界では、他者の話に耳を傾けるとき、相手を説得し、状況を修正し、否定するための情報収集に限られるものではない。
相手の話にとことん耳を傾けることにより、他の人々が自分の声や真実を見つけられる手助けをするのだ。
人生と自然との全体性
自己に誠実に向き合うことで、自分は自然から分離しているのではなく、自然と一体なのだと覚醒する。
そのうちに、自分が豊かなのは何かを所有しているからではなく、自分の魂を育んでくれたさまざまな「つながり」があるからなのだ、ということを理解できるようになる。
進化型パラダイムにとっての意味
どの組織形態(たとえば達成型組織)でも、組織の上位にいる人々が段階を上がれば上がるほど業績が伸びるという研究結果がいくつもある。
また、衝動型〰進化型の各チームに対し複数の回答がありえるような問題を解決するように求めたところ、進化型グループが提出した解決策は他のすべてのグループの解決策の合計よりも多かった。しかも、解決方法の質はほかの集団よりも優れていた。
今日、企業に蔓延する病気の多く、(官僚的なルールやプロセス、際限なく続く会議、分析麻痺、情報隠し、秘密主義、希望的観測、見て見ぬふり、信ぴょう性の欠如、縄張り主義、内輪もめ、トップへの権限集中、など)は恐れに基づく自分勝手な行動に原因がある。
進化型パラダイムでは、エゴに動かされる度合いが低いので、こうした企業病はある程度避けられそうだ。エゴを失う恐れがなくなると、組織の運営方法は現在よりはるかに容易になるだろう。
進化型パラダイムに従う人々は、人生の使命を探すことに忙しいので、明確で崇高な目的をもった組織のみが密接な関係を築きやすい。
収益性や成長、市場シェアよりも、「存在目的」が組織の意思決定を導く原則になるだろう。
進化型パラダイムとは、全体性とコミュニティーを目指して努力し、職場では自分らしさを失うことなく、しかし人と人との関係を大事に育てることに深く関わっていくような人々を支える組織である。
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