カード師感想
中村文則さんの最新刊、カード師をおよそ一ヶ月前に読み終えた。
読書感想文たるものはおそらく小学生の課題依頼だ。
本を読むのは好きだが、読み終えた本だけではなく、思った事を不特定多数の方に公表するのは初めてである。
不思議と緊張はないが、不慣れな事をしている違和感のようなものを感じるが、続けてみる。
まず、カード師を読んで感じた事は、
今までの中村文則さんの作品の中では圧倒的に読みやすいという事と、無駄を削ぎ落とした文体だなという事。
私は作家でもないし、もはや何者でもないが、率直に感じたのは、文体が過去最高に洗練されているなと言う事。
シンプルだが、時に形態を変えて何度も繰り返される文体が特徴だと思うのだが、その塩梅が今作は過去最高だと感じた。
また心の奥や、無意識の感情、その距離の取り方など、使い古された表現ではあるが、「これは私だ」と感じるシーンが多々あった。
またストーリーも、コロナ禍を生きる私達にリンクする生きた物語だと思え、この作品をリアルタイムで味わえた事を嬉しく思う。
生きるということは、つらいことも多い。
むしろ精神状態や環境によっては、つらいことの方が多く、眠る事もままならない事もある。
実際、私は神経質で、心が疲れてしまう事も多々ある。
その事を、先日の中村文則さんのオンラインサイン会でお伝えすると、
中村文則さんご自身の体験を例に出し、ご丁寧なアドバイスと、励ましのお言葉をサインと共に記載していただいた。
つらい時やしんどい時に、その言葉を思い出し、お守りの様にカード師を持ち歩き、ページを繰り、読まない時も、持っているだけで安心出来る本や作家さんはそうそういないのではないか。
中村文則さんと、その読者の方々と同じ時代を共に生きられる事を誇りに思う。
さて、もう一読します。
読んでいただき、ありがとうございました。