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M&Aと組織再編税制② 株主が親族で分散しているときに参考になる「一の者」の定義
業歴の長い会社では、過去に相続等が起こり、株式が親族で分散しているケースがよくあります。
論点
多数の親戚が株式を保有しており、株主が分散しています。
支配関係はどのように判定すればよいのでしょうか。
回答
各親戚が「一の者」の定義に該当すれば、一の者に該当する株主全員で支配関係の有無を判定します。
考察:一の者の定義とは
実は、前回に参照した支配関係に関する条文(法人税法施行令4条の2の1)で、「一の者」の定義がさらっと登場していました。(太字のところです)
法人税法施行令第4条の2の1
すなわち、株主が個人である場合には、その人と一定の特殊な関係のある個人を合わせて「一の者」というのです。
第4条の2 支配関係及び完全支配関係
法第2条第12号の7の5(定義)に規定する政令で定める関係は、一の者(その者が個人である場合には、その者及びこれと前条第1項に規定する特殊の関係のある個人)が法人の発行済株式等(同号に規定する発行済株式等をいう。以下この条において同じ。)の総数又は総額の100分の50を超える数又は金額の株式又は出資を保有する場合における当該一の者と法人との間の関係(以下この項において「直接支配関係」という。)とする。この場合において、当該一の者及びこれとの間に直接支配関係がある1若しくは2以上の法人又は当該一の者との間に直接支配関係がある1若しくは2以上の法人が他の法人の発行済株式等の総数又は総額の100分の50を超える数又は金額の株式又は出資を保有するときは、当該一の者は当該他の法人の発行済株式等の総数又は総額の100分の50を超える数又は金額の株式又は出資を保有するものとみなす。
前条第1項とは法人税法施行令第4条の1のことですね。
法人税法施行令第4条の1
こちらで、具体的な「特殊の関係」について5パターンが記載されています。
第4条 同族関係者の範囲
法第2条第10号(同族会社の意義)に規定する政令で定める特殊の関係のある個人は、次に掲げる者とする。
一 株主等の親族
二 株主等と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
三 株主等(個人である株主等に限る。次号において同じ。)の使用人
四 前3号に掲げる者以外の者で株主等から受ける金銭その他の資産によつて生計を維持しているもの
五 前3号に掲げる者と生計を一にするこれらの者の親族
これらの一~五に該当する個人は、全て「一の者」に該当します。
二はいわゆる内縁の妻や夫ですね。三、四はなかなか遭遇しません。
なお、最も気になる一の「親族」について、法人税法施行令や法人税法基本通達において定義されていません。
なので、民法の定義をそのまま用います。
民法725条:具体的な親族の範囲
次に掲げる者は、親族とする。
一 六親等内の血族
二 配偶者
三 三親等内の姻族
はい、これはなかなか広いですね。
簡単にいうと血族とは自分側、姻族とは配偶者側の親戚のことです。
自分側ははとこ(いとこのいとこ:6親等)も親族だけど、妻側はいとこ(4親等)でも親族じゃない、と覚えています。
妻側のおじさん・おばさんまでが3親等ですね。
終わりに
意外と親族の範囲って広いんですよね。
なので親族で株式が散らばっていても、全員が一の者に該当して、完全支配関係があるケースも多いです。
最近は分割型新設分割で非事業用資産を新会社に切り出してから、対象会社を譲渡するスキームが増えています。
このようなケースにおいても、分割直前に完全支配関係があれば比較的容易に適格要件を満たせるので、実務上安全に進めることができます。
株主が親族で分散しているときには、一の者の定義に該当するか検討してみましょう。
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