システムアーキテクト試験 (1)
2023/4/16に情報処理推進機構(以降、IPA)のシステムアーキテクト試験を受験してきました。
執筆時点(2023/5/2)で結果は分からず、記事の執筆には悩む要素を残しています。それでも、記憶が新鮮な早い段階で、振り返ってみようと思います。
1. 受験を決める、その前に…
そもそも、自分は、システムアーキテクト試験のどこに関心を抱き、どうして受験したいと思ったのでしょうか?
1.1 どんな試験か?
IPAが実施する高度情報技術者試験の1区分で、システムの全体設計に関する知識や経験を評価します。8,000〜10,000人程が受験、合格率は12〜15%。
下の表は出題形式。
多岐選択式の「午前」で基礎知識、記述や論述式の「午後」でシステムの設計能力を評価する構成になっています。各々6割以上の得点が合格条件。
1.2 どうして受験するのか?
前節の試験概要を踏まえ、ここで、受験の動機を振り返ります。
自分は、元々、製造業に所属する非ITのエンジニア(機械設計)でした。しかし、今は所属組織のDX(デジタルトランスフォーメンション)に関心が向いており、取り組んでいます。
その中、DX化に欠かせない業務システムの開発スキルを、履歴書に残る形で向上させたい!と考るようになりました。基本情報は21年春、応用情報は22年春に取得してます。
ならば、その延長は、高度情報技術者試験。加えて、最初の高度試験は、業務システム開発のスキルそのものを評価するシステムアーキテクト試験が最適と考え、受験を決意したのでした。
3. 準備と計画
3.1 試験の概要を掴む
学習計画を立てたい所ですが、試験の概要と難易度が見えないと決められません。公式な情報は、IPAの試験要項・シラバスと過去問題 で得られますが、幸いな事に便利な教科書が多数出版されてますので、そちらを頼ることにします。
技術評論社の本は、Amazon売上ランキング5位。選んだのは、教科書的な内容と受験テクニック説明のバランスが良いと感じたためですが、別に他の書籍でも、結果には然程影響しないと思います。勉強するには自分ですからね。
3.2 実務経験無しでも合格できる?
ITエンジニアとしてキャリアを積んでいる方であれば、特に悩まないかもしれませんが、当方は受験を決める前に結構悩みました。実務経験がなければ、午後2問題の小論文を書けないのではないか?ということです。
当方の所属は製造業のR&D部門。冒頭で記載した通り、DXに取り組みますが、世間様が想像するシステム開発とは違うような気もいたします。
ですが、合格教本 を読むと、どうやら、実務経験が無ければ合格できない!ということもなさそうと分かりました。
上の令和元年の表には、23歳の合格者がおられます。無論、年齢だけで、実務経験の有無は語れないのですが、仮に実務経験者であっても、数年程度ではないか?と推測することはできます。
午後2問題の小論文が鬼門になる可能性はあるのですが、実務経験に自信がなくても合格を狙うことは十分可能!と当方は判断いたしました。
3.3 学習計画とリソース確保
さて、合格教本を読みながら、試験の難易度を確認します。
一概には言えるものでもないですが、自分は、応用情報合格直後の場合は、合格ラインを突破するには、最低250時間位の勉強量は必要かな?と感じました。
しかし、前節の実務経験の問題もあり、最低ライン(250時間)の学習量だけで、合格にまで繋げられる自信は当方には持てませんでした。
そこで、勉強時間には、最低ラインの2倍となる500時間、期間にしては1年間を、当方が試験合格のために投じるリソースとして割り当てることにしました。
4. 合格への戦略(前編)
「3.準備と計画」の段階でも 合格教本 をざっと読んでいますが、それはリソース把握のため。改めて、合格教本 を通読。合格に向け、各々の問題をどう攻略するか?を考えてゆきました。
4.1 午前1:免除
午前1は、多肢選択式で50分。合格基準は6割以上を正解することです。
但し、免除条件なるものがあり、合格教本 には、70%を超える受験者が午前1の免除条件を満たしているありました。当方もその一人。
ただ、今後、免除条件から外れた場合も想定。対応戦略は確認しておきます。
合格教本 には殆ど情報ありません。ですが、公式の 過去問題 から応用情報技術者試験の午前問題の知識で対応可能と判断しました。参考書を買うほどではない。問題解説が必要なら、応用情報過去問道場さんにお世話になるのが一番ですね。
4.2 午前2:応用情報の延長
続く午前2。多肢選択で40分の試験です。
合格教本 の解説と演習問題から得られた感触は、応用情報技術者試験の延長線上にある多肢選択試験です。というのも、共通フレーム(後述)を除けば、ほぼほぼ応用情報技術者の知識で対応可能のため。であれば、公式の 過去問題 を解いてみて、分からなかった問題あれば、当時購入した応用情報技術者の参考書で復習して知識を補強してやる。
これで合格基準は超えられるでしょう。
但し、応用情報技術者の参考書で対応できない分野もありました。それが、共通フレーム2013からの出題。対策で、下の書籍を購入。
ただ、本書は契約の雛形として用いられる文章をまとめたもの。生真面目に通読するには退屈な内容です。なので、本書は、過去問でわからなかった箇所を辞書的に参照するのみに留めました 😅
4.3 午後1:何故、45分?
午後1問題は、記述式で90分。出題される3問から2問を選び、実際にシステムを設計するかのような課題が出題されます。特徴は課題分が長いこと!A4で4~5ページ位の分量があります。
下の画像は、2023年度の問1。4ページと5ページ目の半分位が文字と表で埋まっております。
前述の通り、2問を90分。45分/問が時間制限。問題は以下の様な内容。
知識が問われる問題ではないため、時間をかければ正解に辿り着くことができます。少なくとも応用情報合格レベルに達していれば。但し、制限時間があるため、1問1問をゆっくり考えていると時間不足に陥ります。
詰まる所、システム設計者として、各種資料やヒヤリング結果から勘所をさっと掴めますか?が出題の意図と理解しました。
4.4 午後1:副読本で勘所を掴む
前節で太字にした「勘所」。出題者は、実務経験によって培わるものと認識している。では、実務経験に乏しい受験者は、どう攻略すれば良いか?
過去問を解きまくるのも一つの道ではありますが、当方は、一旦、過去問から離れました。それよりも、システム設計の勘所を記述した書籍を探し、何冊か読むことで、業界の先輩の言葉から学ぼうと考えたのでした。
下に紹介します。
IT分野の良い所は、先輩の教え的なものが公開されていたり、出版されていることです。中には、空理空論的なファンタジーも混ざるでしょうが、多くの場合、1,000〜3,000円程度の投資で経験豊かな達人の教えを伺うことができるのです。
4.5 午後1:時間配分を決める
正直な所、前節に挙げた3冊が最適な教材か?までは自信がありません。副読本に良さそうな書籍は他にも探せば沢山でてきて、全て読み切れるものではありません。それでも、午後1の問題文から、より具体的なイメージを得られる様にはなりました。
だから、45分で余裕で解ける!には至りませんでした。残る一押し。受験テクニックにも頼る必要があります。そこで、合格教本 に立ち戻ると、以下の時間配分が推奨されていました。
ここを基準に試行錯誤しましたが、先ず、「(1):問題選択と下読み」で5分のみは、当方には短すぎました。代わりに、以下の時間配分を目安に進めることにしました。太字は、合格教本 基準との差異です。
問題の選択、下読み、解答キーワード探し: 10分(+5分)
解答の下書き作成: 15分
解答記入: 15分(−5分)
引っ掛け問題確認: 5分
1番の下読みですが、合格教本 には斜め読みで構わないとしていますが、それでは当方の頭には何も残りませんでした。当方は、基準に+5分した10分をかけ、問題で問われそうな箇所に当たりをつけ、マークやメモを入れてしまうことにしました。
下の画像は、2022年度の問2にあった表2での例。
次の段階は、解答の下書き。目安は15分、合格教本 と同じ配分です。この段階では正誤を深くは気にせず、下書きを全問に対して書き出すことを優先。万一、時間不足に陥っても合格基準超えを狙うためです。
下の画像は、下書きの例。「在宅でも可」と走り書き。分かれば良いよレベルの最低限😂
3工程目で解答の清書を15分。合格教本 より、5分少ない配分です。ここでやることは、前述の「在宅でも可」を以下のように書き換えるだけです。当方の感触では、ここは15分で十分。
但し、前工程で、正誤を深く気にしない下書きをしている点に注意を払います。課題文に立ち戻り、引っ掛けに嵌っていないか?を慎重に確認。問題のない設問から順次回答を清書してゆきます。なお、狙いは満点ではなく、あくまで合格基準を超えること。従って、トラップに嵌ってる感触のある問題解答の清書は後回し。
そして、最後の5分。ここで、トラップに嵌ってそうな問題の正解を深く考えます。分かれば清書するし、分からなくても部分点を狙った回答を記述します。
合格教本 は、この時間を、「解答の見直しと微修正」としているのですが、見直しと微修正で、できることって「てにをは」直しなんですよね。捉え方の違いなのかもしれませんが、当方がやってみると、この工程を設けることが、得点に大きく寄与するようには思えなかったのでした。
次回の記事について
思いの他、長くなりましたので、今回はここまで。午後2の論述試験については次の記事にて執筆いたします。