台北でやりたいこと全部やりつくして、博物館でへたり込む女子2人旅
「40歳の記念にひとりで海外旅行をしてみたい。」
夫にそう告げると、旅行は行っても良いが、一人旅は危険だからと反対されたので、会社で気が合う後輩を旅行に誘ってみた。
すると、彼女(Ⅰちゃん)はノリノリで、すぐさま2泊3日の台湾旅行が決定した。
私は一度だけ台湾に行ったことがある。でも、これは40歳になる記念の旅行だから、それにふさわしい心に残る旅をしたい。せっかくだから、女子旅でしかできないことを体験しよう。そう決めて、週末にⅠちゃんと行きたい場所の候補を挙げることにした。
喫茶店でⅠちゃんとガイドブックを広げて、候補を挙げていった。早速、私から行きたい場所を発表する。
まず、私がぜひとも体験したいと一番に挙げたのが「変身写真」だ。
「変身写真」とは、好きな衣装を選び、ヘアメイクをしてもらって、ポーズをつけてモデルさんのように写真を撮ってもらうのだ。
台湾はこの「変身写真」を撮影するお店が充実している。
ちょうど40歳の記念になりそうだ。この年にもなって恥ずかしげもなく言うのだけど、お姫様のようなドレスが体験ができるなんて、楽しみ過ぎる。
これは、私の記念ということでⅠちゃんも賛成してくれた。
次にグルメ。私は朝食の有名なお店と夜市の胡椒餅を候補に挙げた。Ⅰさんは台湾茶の体験ができるお店に行きたいと言うので、この3つは必ず行くことにして、ガイドブックに〇を付けた。
そして、もう1つ体験したいのが、占いだ。私はひそかに占い好きである。台湾はいろいろな占いがあるのを知っていたので、占いができる場所をピックアップしておいた。その近くにあるお寺も有名そうなので、立ち寄ることにする。
これだけでも盛りだくさんなのに、さらに欲張って、台湾式マッサージと国立故宮博物院へ行くことにした。2泊3日(しかも1日目と3日目の午後は移動だけ)で、本当にこれだけ体験できるのかとちょっと不安ながらも、「こうなったら全部やっちゃいましょう。」というⅠちゃんの心強い言葉を信じ、旅立つことにした。
さて、今回の旅は仕事を半日してから夕方の便で発つことになっていた。絶対に時間通りに終わらなくては間に合わない。それなのに、その日に限って、大切なものを紛失した疑いで、ぎりぎりまで帰れなかった。
あまりにも幸先が悪すぎて、この先の旅が不安になったが、会社を出たら、もう前を向くしかない。
どうにか台湾へたどり着き、さっそく1日目の夜は夜市に行くことにした。
夜市は人であふれかえり、活気があった。
会社での出来事なんて、もうさっぱり忘れ、さっそくお目当ての胡椒餅の列に並ぶ。渡された胡椒餅は熱々で口の中をやけどした。肉がそれほど好きでない私にとって、肉汁あふれるその食べ物は(正直言って)期待した程の感動はなかった。
それより、私の目が釘付けになったのは、顔のうぶ毛剃りのお店だ。これは日本にはないから、ぜひとも体験しておきたい。
私はⅠちゃんをそっちのけで体験してみることにした。ピンと張られた糸で顔のうぶ毛を剃ってくれるのだが、これがなんとも気持ちが良い。終わったあとはなんとなく、顔がすっきりしたような気がする。これは台湾の夜市に行かれる方にぜひお勧めしたい体験だ。
そして2日目。メインイベントの「変身写真」を午前中に予定していた。
その前に早朝4時頃起床で朝食のお店に並び、台湾の朝ごはんを体験。大満足で「変身写真」のお店に向かった。
「変身写真」のお店に着くと、まずは衣装選びから始めた。
私は白いマーメイドドレスを、Ⅰちゃんは赤いチャイナドレスを選んだ。ちょっとだけ自慢すると、私は(無駄に)細くて背が高いほうだから、スリムなラインのドレスが体形に合う。Ⅰちゃんは美人だし、体のラインも女性らしいからか、チャイナドレスがとても似合った。
そして、プロのヘアメイクを施してもらうと、それなりに見栄えがするはず・・・だった。Ⅰちゃんは本当に可愛くて、さらに美人になったのに、私はただ化粧の濃いおばさんのようで、悲しくなった。
帰宅後、「変身写真」で思ったように変身できずにがっかりする私に、夫は気を遣ってか、つけ毛をねじねじしながら恥ずかしそうにポーズをとる写真で作ったキーホルダーを、大事に飾ってくれた。
それにしても「変身写真」はなかなか体験できないことだったから、楽しかった。写真も控えめにほほ笑んだ顔で撮れたから、まあ良しとしよう。
その後、さらに旅は続いた。予定通り、やりたいことを順調にこなしていった。占いでは、「仕事はやめてはダメ」と言われ、出発前の出来事を思うとかなり凹んだが、ここは正念場だと思いなおした。台湾マッサージでは首をひねられ、あまりの恐怖で半泣きになった。
そして、夕方からなら料金が安くなるというので、最終目的地に国立故宮博物館へ行くことにした。
この頃には、二人とも会話が減っていた。それもそのはず、ここまでずっと休憩もろくにせず、笑い通し、しゃべり通しだったのだ。
博物館へ到着すると、夕方なのに人でごった返していた。それでも、なんとか有名な「白菜の石」を見たいと頑張って歩き、よそのツアーのガイドさんの案内までしっかり盗み聞きして、十分堪能した。
その日のスケジュールを終えた頃、私たち二人は博物館の椅子でへたり込んで、しばらく動けなくなった。そんな自分たちをお互いにあきれて苦笑いしながら、最後の力を振り絞って、ホテルにたどり着いたのだった。
最終日は、たしか強制的にどこかのショッピングに連れられて行ったのだけど、二人とも買い物をするエネルギーも資金もほぼ使い果たしていたから、おとなしくしていた。
3日目はさすがに疲れすぎたのか、あまり記憶に残っていない。それほどまでにやりたいことを全部やりつくした旅だった。
先日、Iちゃんに久しぶりに会ったので、台湾旅行の話をすると「ああ、あれ面白かったですね。」とあっさり言うから、ちょっと肩透かしを食らった。私にとっては、本当に思い出すだけでも笑いがこみあげてくるくらい、面白い旅だったし、40歳の記念旅行としてふさわしい旅になった。
次は50歳で一人旅を目標にしていたのに、コロナであっさり流れてしまったから、とりあえず、60歳までに一人旅できる体力を維持していくのが当面の目標である。
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