青の憂鬱 400字小説
前記事同様。
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桜が咲き始めた。
僕の子供はこの蕾が膨らんでいくのが早くて目に見えそうなぐらい、早く成長しているのだろうかと、当てのない自分の腹をさすってみる。
歩いていると、自分がこの世で一人であるような気がしてくる。
桜並木は風景であり、何も意味してはくれない、僕を安易に満たしてくれるとは思えない。
春に子供を持つというのは、少し悲しいだろうか。春に僕の味方はいないように感じられるのは、やはり桜が何も意味してくれないからだ。
家に帰ろう。
彼女が夕飯を作っているだろうか。この世界の虚しさは、ご飯の匂いを感じ、狭い家で窮屈を感じ、小言にちょっといらついて、気を使って、お風呂に入っていれば、自ずと僕を通り抜けてゆく。僕は虚しさを感じつつも、ただ生活をするだけだ。生活は、自ずと起こる。
彼はいつか、僕を思い出すだろうか。
僕の選択は、僕が悔やむことじゃない。ただ、この桜が、春の風が、通っているだけだ。
まだ分厚い布団を顔まで引っ張り上げ、静かに、何もない世界で、眠る。
「青の憂鬱」
自分でないモノ、人について書けないと思っていたのは、自我を消すとやっとオブジェクティブになれるのかもしれん。
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