南極って意外とアリかも
最近、Amazon Prime Videoで『南極料理人』という映画を観た。様々な研究目的で国から派遣された研究者達をサポートするため、海上保安庁から調理担当として同行した西村淳氏のエッセイ、『面白南極料理人』が原作となった映画だ。
南極と聞くと、原作者の西村氏も著書の中で言及しているように、私も含めた多くの日本人は『南極物語』のタロー、ジローや厳しい自然環境と格闘する探検家に密着したドキュメンタリー番組なんかを思い浮かべるのではないだろうか。もしくは、ペンギン、アザラシ、シロクマといった、南極と北極がごちゃませになった生物のイメージが、ペンギンが腹ばいで氷上を滑るが如く、頭の中をスライドするだけだろう。
私も映画を視聴する前は、ペンギンの登場とNHKで放送されていた『プロジェクトX』のような、男達が大自然という舞台で奮闘する感動的な映画を想像していた。しかし、一旦観始めると、そんな私の期待は良い意味で裏切られたのだ。
まず、ペンギンはおろか、動物が一切登場しない。男達はたくさん登場すすれども、職人魂のぶつかり合いのような胸熱な場面もない。ただ、画面に映し出されるのは、どこにでもいそうなおっさん達が、仕事帰りに家でするように、ビールを飲んだり、ラーメンを食べたりする場面だ。
南極観測隊と聞いて、理系学部生みたいに寝る暇も惜しんで論文作成や研究に没頭しているものかと思っていたが、意外とぐーたらできる時もあるらしく、「自分のやりたことだけやって、後は酒飲んでりゃいいなんて!しかも、国の金で!いい仕事だなぁー!」と叫びたくなった。
毎朝、5時半に起床して、1時間半かけて満員電車に揺られながら職場まで行かねばならない私からしたら、早起きと満員電車という苦行がないだけで夢のような仕事である。また、調理担当の西村氏は別として、食事の時間になれば、まともな食事が配膳される環境もなんとも尊い。しかもただの食事ではなく、ちゃんとその道のプロが調理したものである。
脂質と糖質がメインのコンビニ弁当や、私が昼食によく食べている塩茹しただけの鶏胸肉とニンジンだけという超簡単弁当とは大違いである。
もちろん、こうした良い面だけではないことは百も承知である。例えば、『面白南極料理人』によると、入浴は8日に1度しか出来ないようだし、節水に励むなど従うべき日頃のルールも多い環境のようである。当たり前だが、屋外は−50度以下にもなる恐ろしい環境なので、気晴らしに散歩も出来ない(一緒に同行したドクターはジョギングをしていたらしいが)。
それでも、コロナだのガス代の高騰だのコオロギを食べろだのと、盲信させられるこの日本の環境と、しばらくおさらば出来るのならば、南極へ1年間の島流に合うのも意外とアリだと思う。現代社会はデマも含めて、アホみたいに情報に溢れているから、少しは俗世間から切り離された環境に身を置いて、頭を冷やしてみたら良い。