モットーは、『足るを知る』。
座右の銘と言うにはハードルが高い。
大切にしている言葉には違いないのだけど、四六時中その言葉を頭に置いているわけではないから。
モットーと呼ぶ方が私にとっては、無理なく、心地がいい。
「わたしはこうやって生きていたいんだよ〜」とゆるやかだけど決意を持った言葉のように感じるから。
だから、わたしのモットーは『足るを知る』。
『足るを知る』
ぼんやりとどこかでは耳にしたことのある気がする言葉。
わたし自身がはっきりとこの言葉にピントを合わせたのは、大好きなYUKIちゃんの『聞き間違い』という曲を聴いた時。
『歓びに頬を緩め 朝焼けに 足るを知る
私にしか歌えない歌があるんだ』
曲の世界観メロディと合わさって、なんて豊かで満たされた気持ちになる言葉だろう、と思った。
めったに使わない辞書を手にとるくらいこの言葉に異常に心惹かれたのは、たぶんその時のわたしがこの言葉と真逆な生き方をしていたから。
仕事に対しても、日々の過ごし方や人生の見方にしても、
その時のわたしは「まだまだ足りない。今より良くしたい。もっと、もっと。」
それ以外の選択肢が無いかのように、そう思い続けていた。
その考え方が悪いわけではない。より良い方へ自分を導いてくれるパワーが込められているから。
でもそのパワーには、今を否定し続ける という徐々に自分の首を絞めていくような怖さも持ち合わせている。
ふと気がつくと、“今”生きている自分は空っぽであることに気づいた。
そこには“わたし”という実態はなく、おばけや幻想のような自分しかいない。
『足るを知る』という言葉は、そんな空っぽな自分な中に流れ込んできた。
足りないと求め過ぎて干からびたの心に染み込み、少しずつ満たしてくれた。
今、見ているものがどんなに素敵なものなのか、ひとつひとつ感じ取ること。
等身大の自分を見つめて、理解して、ひとつひとつ大切にすること。
見つけていくたびに心は瑞々しさを増していき、見ている景色はキラキラとしたものになっていく。
“今”を抱きしめるのは、こんなにも心地の良いものなんだ。
わたしのモットーは、そんなあたたかな実感を一瞬、一瞬与えながら、心の中をじんわりと満たしてくれている。