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赤ちゃんと社会の接点。
子どもを通じて、社会と出会う。
ロボットアニメによく出てくるコックピットのような形の抱っこ紐に子供を前向きに座らせて、速足で歩く。今日は雨がパラつく曇天だったから、傘を片手でさしながらだ。
妻が先に出かけていたので、一人でこの抱っこ紐を装着したのだけれど、どうやらうまくいかなかったらしい。
歩くたびに僕の腰が変な角度を向く気がする。子どもも脇から零れ落ちそうだ。
リュックを背負いなおすかのように膝と腰をつかって跳ねる動作を繰り返し、正しいポジションを探そうとするも、歩くたびに姿勢が崩れていく。
わずか10分の道のりを歩くのも億劫だ。悪天候をうらむ。
友人と待ち合わせたパスタ屋さんに辿り着き、入り口でまごまごしていたら、店員さんが相好を崩しながらこちらの様子を窺って下さった。顔全部が笑顔をつくっているんじゃないか、というくらいの表情で。「歓迎されているな」と感じて嬉しくなった。
「赤ちゃんが泣いたらご迷惑かもしれない。」
子どもを抱っこ紐で抱えながら外に出るようになり、お店や施設に入るたびにそんな不安が頭をもたげる。未だかつて入店を拒否されたことも、嫌な顔をされたことも無いのだけれど、どうしてもそれを気にしてしまう。
ちょっとでも泣き始めたら外へ退散するし、予定も全部返上して家路を急いだ。
「嫌な顔をされたらどうしよう」。
そんな不安を抱えて意を決してお店に入るのだけれど、こんなにも素敵な表情で迎え入れてもらえたから、とても安心できた。
「人に迷惑をかけてはいけない。」
これは、呪いの言葉の一つ。迷惑をかけることも、失敗することも、生きていれば誰しもがあることだけれど、それらの「結果」がタブーとされることで、社会がどんどん不寛容になっていくように感じる。
必要以上に「人目」が気になり、行動は委縮し、現状に波風を立てぬよう、変化を嫌う。
秩序ある「統治」という観点からみれば成功なのかもしれないが、「生き辛さ」を社会に温存する構造の一端を担っている文化だなと思う。
パスタ屋さんで席につき、抱っこ紐をつけたまま食事をとる。「暴れやしないか」と冷や冷やする。僕のアゴのすぐ下の位置に子どもの頭があるし、僕が箸を口に運ぶルートに子供の腕はやすやすと侵入する。
パスタをとろうと屈んだら、子どもが伸ばした手が皿に見事に突っ込んだ。これは食べにくい。
抱っこ紐をほどいて体勢を変えればいいのかもしれなぎが、固定されない状態で急にエビぞりをされても困る。生き物相手は予測がつかない。
食事を楽しむことよりも、子どもとともに粗相をしないか、に意識が絡めとられてしまうなぁと気付き、ちょっと飲食店を「楽しむ」には向かないやり方だなと内心ため息をつく。
赤ちゃん連れでも安心して食事を楽しめるお店は、意識して探さなければ見つからない。それを想定された設備を備えたお店は、稀なのかもしれない。
もしかしたら、僕が新米の親だから感度が低いだけで、世の親の先輩方は「結構あちこちにあるよ。よく探してみて。」と思っておいでかもしれない。
こんなところで、不自由に出会う。
悪戦苦闘しているうちに妻が合流してくれたおかげで、僕はパスタを楽しむことができた。一人で何でもしようとすると厳しいことも、人に頼ることができたらこえることができる。
食事をとる、という日常的な行為ひとつとっても、誰かの助けがありがたいと感じるものだなと気付く。
食べ終わったあとに子供を抱っこしながらあやしていたら、隣の席に居合わせたご婦人方が「かわいいねぇ!」と話しかけて下さった。「生まれてどれくらい?男の子?女の子?」と懐っこく声を重ねて下さる。
お店に入ろうとした時に店員さんがくれたのと同種の暖かさを感じて、「お前は祝福されてるんだな」と嬉しい気持ちが湧く。
赤ちゃんと社会の接点を想うとき、自分の知っていることはまだまだ少ないのだなと気付く。抱っこ紐とともに拡がった世界。そこで出会う不便。自分の頭の中にある檻。そして、想像と異なりあたたかな視線を向けて下さる他人。
子どもが産まれる前も生まれた後も同じ街に暮らしてみて、そんな差分から世界を知る。
これから僕らは、どんな世界に出会うのだろう。
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ここまで読んで頂き、ありがとうございました!
このnoteを書いている人
僕は東京に妻と息子と3人で暮らす、32歳の話好きです。明日には生まれ故郷の群馬へ。独立1年生、父親1年生です。
僕らが生きるこの世界に、あなたにとって「居心地のいい居場所」を。そんな居場所を、ご自身の力で創れるようになって頂くためのお手伝いをしています。
そして「いきたい場所への中継地」である、という想いをこめて、「とまりぎ」をコンセプトに選びました。
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