worth doing……目的語をとる形容詞とは?
先日「黄リー教を楽しむ会」のDMグループのなかで「busy doingのdoingはなにか?」という話題があがりました。この質問自体には比較的すぐに答えがでました。
そこから個人的に類例などをしらべていくなかで「目的語をとる形容詞」というものがでてきました。形容詞なのに目的語がとれるとは一体? このF.o.R.の原則からはずれた(しかし、決してめずらしくはない)文法項目についてしらべたことをまとめてみました。
busy doingのdoingは動名詞か現在分詞か?
まず、最初の話題についてです。busy doing(〜するのに忙しい)というよくある熟語的な表現ですが、このdoingは動名詞でしょうか?それとも現在分詞でしょうか?
結論から先にいってしまうと、このdoingはbusy in doingから省略された前置詞inの目的語、つまり動名詞にあたります。inの省略されたbusy doingのカタチがつかわれるようになった今は、現在分詞としてもとられることもあります。
以下、文法書での説明をみてみましょう。
ここにあげた2冊以外の文法書でもだいたい似たような説明になっていることでしょう。
「現在では実際にはふつうinがない」ということなので、ためしにbusy in preparingとbusy preparingをGoogleNgramで比較してみてましょう。すると1845年ごろをさかいに、前置詞inの省略されたカタチのほうがよくつかわれるようになっていますね。
ついでに、この前置詞が省略される類例として、spend O (in) doing(〜するのにOを費やす)という表現も紹介しておきましょう。
過去に薬袋先生が出題した「…I've spent a lifetime identifying this or that disturbing factor…」という英文について以下のように説明しています。
worth doingはどうだろうか
さて、前置きがながくなりましたが、ここからが本題です。
busy doingといっけん似ているworth doing(〜する価値がある)という表現についてかんがえてみましょう。
辞書でworthをひいてみてください。おそらく前置詞として掲載されているとおもいますが、辞書によっては「形容詞とみなすこともある」とかいてあったり、すこし古めの辞書だとそもそも形容詞に分類されていたりします。
薬袋先生も過去に黄リー教で扱っていない事項として「目的語を必要とする形容詞worth」をあげていました。
この目的語を必要とする形容詞とはなんなのでしょう? なぜworthを前置詞としてとらえないのでしょうか?
以下、文法書での説明をみてみましょう。
……はい! もう結論にたどりついてしまいましたね。知りたいことがそのままズバリかいてありました。
あまりworthの品詞について言及している本自体が手元にないのですが、ほかの文法書だと以下のような感じです。
前半でとりあつかったbusy doingのdoingに話をもどしますと、もともと歴史的には動名詞ですが、前置詞を省略することのおおくなった今では現在分詞としてもとらえることができるということでした。
これらはいずれにしても、結局は副詞句として前の形容詞(spendの場合は動詞)を修飾しているので、ゼッタイ動名詞だ!いや現在分詞だ!とこだわる実益はあまりなさそうにおもえます。
しかし、worthについてはどうでしょう。前置詞はふつう比較変化をしたり、veryで修飾できたりしません。これらは形容詞としての特徴です。なので、worthをはじめとした一部の形容詞は目的語をとることができるものとして特別扱いしないといけないのですね。
さて、分類だけでおわっては英語力の向上につながらないので、最後に比較変化をしているworthと、veryで修飾されているworthをつかった実例をみておきましょう。
ちなみに、薬袋先生の著書だと『学校で教えてくれない英文法』『英語リーディングの探究』(ともに研究社)などにworthへの言及があるようなので、興味のある方はご確認ください。