稽古考26
■ 2004/02/03 「正面打ち抑え込み」稽古考
時々見受けられる抑え込みの「受け」として、「取り」と腕があった瞬間、腕を伸ばしたまま背(後頭部)を向ける者がいる。これは、相手に対して余りにも無防備。その瞬間から「受け」を放棄したものと見なされる。だからこの「受け」は良くない。また、「受け」が、後ろに「たたらを踏む受け」事も稽古としては良くないと思う。
三松禅寺の稽古で抑え込みの折、後ろに「たたらを踏む受け」を見た。確かに、相手に対して正面を向いてはいるが、受けるのを(嫌がって?)後ろに「たたらを踏み」逃げている。この「受け」は何故いけないのか。ふたつの理由を考える。
ひとつは「取り」稽古にならないから。いくら形(型)を覚えようと、基本稽古を繰り返しても、「受け」の合わせる気持ちが別の方へ(逃げの方へ)いってしまうと、今度は「取り」が必死の「力抑え」を加える事になり、そこには合気道稽古が重要視する呼吸やパランスなどを無視した、崩れた稽古(形)が現れてしまう。だから避けるべき稽古法であると考える。
ふたつ目、その「受け」は隙を作る「受け」だからです。私は、剣を引き合いに出すのを好みませんが、敢えて剣にたとえてみると、『鍔迫(つばぜ)り合い』と言うのがあります。その最中に気(力)を抜き、たたらを踏み後退すると、相手の剣の「物打ち」がそのまま頸動脈を斬ります。こんな物騒な「譬え」は(体術を稽古するのに)不必要だとの考えもあるとは思う。それも一理ある。
要は、真剣に相手に対峙することが稽古では必要だと言うこと。後ろに下がるのは、気を抜いた稽古法だと私は考えている。「受け」はしっかり踏みとどまり、相手から逃げずに「呼吸を合わせる」。これが理に叶った稽古ではないだろうか。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?