Teams会議で意思決定をなめらかにする方法
この記事はMicrosoft365アドベントカレンダーの22日目の記事です。
会議で「決める」
コロナ禍になってTeams会議をはじめとするオンライン会議が日常になってもうだいぶ時間がたちました。
会議は案件の方向性を決める重要な判断から飲み会の幹事を決めるものまで大小様々な議題がありつつ、そのたびに「決める」という行為が必要になってきます。
これはいわゆる意思決定というやつですが、皆さんの会議では円滑な意思決定が出来ていますか?
リアル会議ならまだしも、オンライン会議、特に全員カメラをオフにしている状態で誰が何の裁量を持っているのかわからないまま、手探りで(ときおり電気柵にぶつかって精神的ダメージを受けながらズタボロになって)意思決定していませんか?
全員カメラオフ問題はさておき(これは単純に機能としてカメラをオンにすればいい以上の問題をはらんでいる場合もあるし)、後者の「誰が何の裁量を持っているかわからない)」については、事前に「決め方を決める」ような交通整理をすることである程度解消できます。
権限委譲の7段階
ここで出てくるのが「権限委譲の7段階」という考え方です。これは、マネージャーやリーダーからメンバーに対してどのくらい権限委譲するかの度合いを7段階で定義したものです。権限委譲は「自分が決める」「相手に決めてもらう」の2択だけではなく、間にいくつかの段階があります。
具体的には以下のとおりです。
マネージャーあるいはリーダーとメンバー間として置き換えると、以下のように表現できます。
1.tell/指示する マネージャーあるいはリーダーが決める
2.sell/説得する マネージャーあるいはリーダーが決めてメンバーを納得させる
3.consult/相談する マネージャーあるいはリーダーが決める前にメンバーの意見を聞く
4.agree/合意する マネージャーあるいはリーダーとメンバーが(フラットに議論して)決める
5.advise/助言する メンバーが決める前にマネージャーあるいはリーダーが意見を伝える
6.inquire/尋ねる メンバーが決めた後にマネージャーあるいはリーダーに共有する
7.delegate/任せる メンバーが決める
権限委譲は「自分や相手が決めていい範囲」を定義できます。なので、会議において決めていい範囲を決める=会議の意思決定をなめらかにするというわけです。
権限委譲の7段階は、デリゲーションポーカーという形でゲーム的に実施していくことが多いです。1から7段階が記載されたカードを手札のように皆に配って「いっせーの」で皆それぞれが自分としてはこの段階で委譲したい/委譲して欲しいと思うカードを出すような感じです。
こうすると、例えば、マネージャーやリーダーは5段階で委譲したいのにメンバーは3段階でマネージャーやリーダーに決めてほしかった(それはあなたの仕事でしょ)、といった認識や期待のズレが明らかになります。ズレが明らかになったら、すり合わせるような会話ができますよね。
というわけで、これを会議の前段で(あわよくばアイスブレイク的に)やるといいのですが、リアル会議だとカード持参でポーカー的なことも簡単にできますが、Teams会議だとちょっと難しいですよね。
Teams会議で7段階を決める
ここで本題ですが、Teams会議でも上記のようなデリゲーションポーカーを実施することは可能です。
選択肢としては、
・ホワイトボードで実施する
・パワーポイントで実施する
・エクセルで実施する
・投票アプリ(Forms)で実施する
・会議チャットで実施する
・カメラで実施する
あたりです。
ホワイトボードで実施する
これはMicrosoft WhiteBoardでやる方法です。Teams会議で画面の共有からホワイトボードの共有を選択すれば、会議参加者に対してホワイトボードを共同編集できる形に持っていくのはわりと簡単にできるかと思います。
ホワイトボードでやる場合、権限委譲の7段階にあたるデリゲーションポーカーの画像を横並びで1から7まで並べておいて「いっせーの」で自分の名前を書いたメモ(付箋)を置いてもらう形にしましょう。
イメージ的にはこんな感じです。
厳密には同じタイミングで一斉に付箋を置くのは難しいので、先に置いた人の意見に他の人が引っ張られてしまう現象が起きる可能性もありますが、まあそれも含めて楽しむ感じにすればいいかなと思います(少なくともイーブンな形で決定に関与できているわけではありますし、そこで自己主張するかしないかはまた別の問題かなと)
パワーポイントで実施する
これはホワイトボードでやるパターンをそのままパワーポイントでやる形です。Teams会議の会議チャットにデリゲーションポーカーを並べたパワーポイントのファイルを投稿しておけば、会議の参加者とそのパワーポイントファイルを共同編集できるようになります(もちろんファイルは会議の参加者全員が所属しているチームに置くでもOKです)
ホワイトボードを使うこと自体に抵抗感がある現場だと、パワーポイントのほうが親和性があるかもしれませんね
エクセルで実施する
似たような策にエクセルを使うというパターンもあります。エクセルもTeams会議で共有することで共同編集可能になるので、取り扱いがしやすい形かと思います。エクセルの場合は、そのままセルに1から7まで段階を書いて、その下に名前を書いてもらう形にするとよいかと思います。
1点注意ですが、エクセルの場合、ホワイトボードやパワーポイントで使ったような「図形のオブジェクトを共同編集するような使い方」は止めておいたほうがよいです。皆でいじるとアンドゥが効かなかったりで大変なことになるので…(オブジェクトでなくセルなら大丈夫)
投票アプリ(Forms)で実施する
これは投票アプリ(Forms)を実施する形です。Teamsであれば会議チャットのなかでアプリのところから投票アプリを使って簡単なアンケートができますね。また、会議のなかで使うと、投稿内容も全参加者に対して投票を促すダイアログが出るので、投票対象を見逃すといったこともありません。
これを使って「今回の内容を1から7のどれできめたいですか?下記1から7のうち、ひとつを選択してください」的に投稿すると、簡単に参加者全員の意見が収集できます。
会議チャットで実施する
これは投票アプリでやったようなことを会議チャットでそのままフリーテキストで投稿してもらう形です。会議チャットに「今回の内容を1から7のどれできめたいですか?1から7のどれかを会議チャットに投稿してください」的に投稿すると、それに続いて参加者の1から7の投稿が続くような感じになるでしょう。
このやり方は事前準備がまったくいらないため、労力としては1番低く実施できるのがメリットです。ただ、デメリットとして回答しない/できない人が出てきやすいので、問いかける側の人は誰が回答して誰が回答しきれてないかをケアするのがよいかもしれません。また、投稿した内容が回答した順番に並ぶので、やっぱり他の人の回答内容に引っ張られる傾向もあります。
カメラで実施する
これは参加者全員でカメラオンにして「いっせーの」で1から7をカメラに手を向けて指の本数で表現してもらう形です。
全員カメラオンにしている/できる状況かどうかというのがネックになるかと思います。そこさえクリアできるなら、これも労力が低いやり方ですね。そして、このやり方のメリットは、なんといってもやってて楽しい感が醸成されやすいということですね。これはとても大きなアドバンテージだと思います。
最後に
どうでしょう。「集団のなかの意思決定って枠組みをつくることなんだな」とか「それが普段のTeams会議で簡単にできるんだなー」とか「使えそうかも、やってみよう」と少しでも思って頂けるとうれしいです(文章だけなので伝わりづらいところが多々あるかなとは思いますが)
また、こういうかっちり決め方を決めるみたいな時間を設けるというのも、あくまでチームの熟練度が高まるまでのある時期のみ必要になるという側面もあるかなと思います。慣れてきたり、共通認識が出来てきたりすると、この部分をすっとばしても意思決定や成果の質が安定して高く出せるという状態にはなるでしょうしね。
さらにさらに、マネージャーやリーダーからチームに対して権限委譲する場合(4から7で権限委譲する場合)、チームのなかでそれを決めるのに何人の合意(特定の1人か、大多数か、少数か、全員か、サイコロみたくランダムで決めるか)が必要かのところまで整備しておくとベターです。
さらにさらにさらに、ここで紹介した「権限委譲の7段階」「デリゲーションポーカー」「チームのなかでそれを決めるのに何人の合意が必要かを整備する(=チームデシジョンマトリクス)」は文中のリンク先のとおり、Management 3.0という考え方で提供されている手法でした。興味ある方はそちらを調べてみるのもよいかと!
それではよりよいTeams会議ライフを。