泣いた日
隣の女性がアンケート用紙怖いといって泣き崩れていたのでどうしたらいいか分からずとりあえず私も泣き崩れた。これがもらい泣きというのだろうか?でも私自身もアンケート用紙が怖くてビビり倒していたのでこれは後から泣いたけれども共感泣きではないのか?という感情に押しつぶされていた。
また空欄を作った。
解答欄はわからんかっても絶対に何かしら書いて埋めるんやで〜。とずっと教えられてきたばかりに、本当に壁にぶち当たってわからなくなった時に苦しくなって怖くなって泣き崩れた。
学校で答えや解き方は教えてくれるけど、隣で泣き崩れた人がいて、もしも自分も泣いてしまった時の対処法なんて教えてもらえなかった。まじで世の中十人十色とか言うなら一人一人の取説がほしい。
趣味はなんですか?
同じ質問を何度も何度もされて息がつまり苦しくなって涙が出たと彼女は言った。
私も泣いた。わからなかったから。
涙で紙が濡れてくしゃくしゃになる前にすぐに拭いて咄嗟に戯曲を読むこと。と書いた。
戯曲を読む自分が不思議で怖い。私は自分に対してそんな気持ちを持っていた。趣味はなんですか?と聞かれるたびanswerはずっと変わらないのに、ずっとずっと答えられずに空欄で提出していた。罪悪感に苛まれながら。
演劇のセリフを何故本にしようと思ったのか?英語の脚本が日本語に意訳されると大幅に変わってくる面白さ。え、これほんまにこのニュアンスで合ってる?と考えさせられ、やっぱりこれ本にすんのおかしいで〜。と思いながら読むのが好きなんだ。
アンケート用紙が怖い。でも私は空欄を埋めた。
そして彼女も私の姿をみて空欄を埋めた。
趣味はなんですか?
ひつじぐも。と彼女は書いた。
秋の訪れが好きなのか?雲が好きなのか?雨が降るって予兆だから好きなのか?集合体が好きなのか?幸運の訪れというスピリチュアルを信じているのか?
彼女には引き寄せられるひつじぐもの魅力が分かるのだろう
羊雲を眺め上を見て歩く君のそばで、本を片手に戯曲を読んで下を見て歩く私。
2人でいれば視野が広くなっていいね。と彼女は言った。