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今年1本目の映画は小津監督へのオマージュ「PERDECT DAYS」

映画(PERFECT DAYS)(敬称略)(ネタバレありです)

ヴィム・ヴェンダース監督の新作映画は、主演の役所広司がカンヌ国際映画祭で男優賞を受賞した作品です。この映画、監督を招聘したプロデューサーがユニクロの創業家出身(社長の次男)で話題になり、多くのメディアで紹介されました。私も今年初の映画として観ることにしました。

物語は東京の公衆トイレ清掃員である主人公の繰り返される日常を描いています。朝、外を掃く箒の音で目が覚めて、布団を片付けて歯を磨き髭を剃る。仕事に出かける時は玄関に揃えた道具一式を身に付けて、自販機で缶コーヒーを買って軽のライトバンで仕事場へ。トイレ掃除が終わると、お昼は神社境内の木の下でサンドイッチを頬張る。仕事が終わると行きつけの居酒屋でちょい飲みして、家に帰ると消灯まで布団の上で文庫本を読む。

このルーティンが何回も繰り返されます。途中観ながら最後どんな落しどころになるのか、気になりながら観ていると、おや?これはどこかで観たことがある既視感、そうやはり小津作品でした。
アメリカのルーカスやスピルバーグが黒澤明を崇拝しているのに対して、ヨーロッパの監督は小津安二郎を高く評価しています。活劇の黒澤に対する物語の小津。歴史や文化が違うといえばそれまでかもしれませんが、改めて小津監督の影響力を再認識する映画となりました。

そう考えると、最後まで落としどころはないのかもと思いながらも見続けると、まあドラスティックではなくとも変化はありました。公衆トイレの隙間に挟まれた紙による伝言ゲーム、家出してきた姪っ子との同居、飲み屋のママの元夫との影踏みゲームなど。

登場する公衆トイレは坂茂のガラスのトイレなど、どれもトイレプロジェクトに参加した著名な建築家が設計したもので、よくある公園の汚いトイレではなく、実際のトイレ掃除ももっと汚れた場面があると思いますが、ヴェンダース監督はあくまでも映像の美的レベルを保つようなカメラワークをしていたように感じました。

繰り返し登場するスカイツリーはアイコンとして何を象徴するのか。その足元の木賃アパートに住む主人公との対比でしょうか。
小津作品が描いたように、名もなき市井の人々の暮らしぶりを通して、それでも前向きに生きる姿を小津へのオマージュとしてヴェンダース監督も描きたかったのではなかったか。最後、運転しながら笑みを浮かべる主人公の姿が何とも印象的でした。

おまけ:飲み屋のママ役の石川さゆりが歌う日本語の「朝日のあたる家」は、映画では完全に余興だったのでは(笑)(写真は公式サイトより引用しました。)

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