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具体→抽象化→具体化のトレーニングが思考力を豊かにする「「具体⇆抽象」トレーニング」
本(「具体⇄抽象」トレーニング)
実際の物事(具体)をまとめて概念化(抽象)して、その概念をさらに具体化するサイクルを理解し、その実践をめざす本です。副題が「思考力が飛躍的にアップする29問」とあり、本のタイトルにもあるように、このようなトレーニングが思考法を多角化して、相手とのコミュニケーション・ギャップを無くすことができると筆者は説いています。
私がこの本を知ったのは新聞の広告で、いきなりクイズが出て面食らったのと解答が見たいので、買って読んでみることにしました。ちなみのクイズとは以下の問題です。
「目覚まし時計、懐中電灯、旅行代理店、カメラ、お金の共通点は何でしょう?」というもので、答えはスマホのアプリというものでした。まさに個別の具体からまとめて1つに抽象(化)したもの1つといえます。
筆者の細谷功さんは東芝にエンジニアとして勤務した後、コンサルティング会社に転職したビジネスコンサルタントで、ビジネスシーンにおける具体と抽象の関係を、多くの図式や実例を活用しながら解説していきます。
私が分かりやすいと思った例は、イベントに対する上司から部下への指示の仕方でした。
・上司(抽象)→部下(具体)
上司からは大まかな指示があり、部下は自由度が高いのでいろいろと提案できる。
・上司(具体)→部下(抽象)
上司から細かい所まで指示があるので、部下はその通りにすればいいので仕事が楽。
・上司(具体)→部下(具体)
上司の指示が細かすぎて、部下が考える方法と違うことがある。
・上司(抽象)→部下(抽象)
上司の指示が少なすぎて、部下が上司から丸投げされたと感じる
つまり上手くいく方法は、具体と抽象がペアになった上記の2例であり、それ以外はコミュニケーション・ギャップが生じてしまうというものです。
実際筆者によれば、具体と抽象を区別できずにミスを犯してしまうケースが、実際のビジネスシーンで余りにも多く存在するとのことで、その対策として具体と抽象の明確な位置付け、さらに対象となる物事の前提条件がどのようなものであるかを理解し、次にそれに対応した思考法が肝要であると解説しています。
抽象が見える人には、具体の世界も見えていますが、具体しか見えない人には抽象の世界は見ることができない「マジックミラー」の関係であると述べ、AIを使える人は前者でAIに使われる人が後者であるとも述べています。