裁判官の本音が見える本「裁判官の爆笑お言葉集」
本(裁判官の爆笑お言葉集)(本文から複数の引用失礼します)
普段あまり聞くことがない裁判官の発言を集めた本です。筆者の長嶺超輝さんは、九州大学法学部を卒業後、弁護士を目指して司法試験を受験しますが、7回不合格となって弁護士を諦め、現在はライター業の合間を縫って裁判傍聴に通っています。
書名に爆笑の文字が入っていますが、他にも苦笑・失笑、感涙、憤慨などなど、読者にも様々な感想があると書いています。裁判官のメッセージが聞ける機会は様々ですが、以下のように説明しています。
「補充質問」:裁判の審理中、検察と弁護側両方の質問の後、さらに裁判官がする質問
「判決理由」:判決で主文の結論に至った理由
「付言・所感・傍論」:判決理由の最後に語られる提言など。
「説諭」:刑事・少年事件が対象で、主文と判決理由を読み上げた後に、被告人の将来についての助言。
「閉廷後の言動」:閉廷を宣言した後の法廷での非公式な言動。
以下印象に残った言葉を挙げておきます。
・「早く楽になりたい気持ちはわかるし、生き続けることは辛いかもしれないが、地獄をきちんと見て、罪の重さに苦しんでほしい。」
(殺人、現住建造物放火などの罪に問われた被告人に、死刑判決を退け無期懲役の判決を言い渡して・1999年6月25日大阪地裁・説諭)
・「この前から聞いていると、あなた、切迫感ないんですよ。」
(建築基準法違反などの罪に問われた元一級建築士・姉歯被告人に対する質問・2006年東京地裁・質問)
・「暴走族は、暴力団の少年部だ。犬のうんこですら肥料になるのに、君たちは何の役にもたたない産業廃棄物以下じゃないか。」
(暴走族メンバーがリンチで死亡した事件。2003年水戸家裁下妻支部・その他)
・「今後、タレントとしての活動が、社会的に大きな影響を持つことを十分に自覚し、おごることなく、謙虚に責任ある行動をとってほしい。」
(傷害の罪に問われたビートたけしに執行猶予つきの有罪判決・1987年東京地裁・説諭)
・「もうやったらあかんで。がんばりや。」
(窃盗の罪に問われた被告人に、執行猶予・保護観察つきの有罪判決。閉廷後に被告人が退廷する時、一段高い裁判官席から身を乗り出し被告人の手を握って・2003年大阪地裁・閉廷後) 被告人はその場で泣き崩れたそうです。
正に公的な文章である判決文の行間(本音)を読む作業を、裁判官が体現していると言ってもいいと感じる程です。
シロクロをはっきりさせることが判決文の使命であるならば、その隙間をアナログ的に埋めるのが裁判官の仕事であり、血の通った人間の使命であるとも思います。
余談になりますが、筆者は司法試験を7回受験して合格を断念したとのことですが、個人的な経験を言えば、私の場合、一級建築士を8回目で合格し、母親から七転び八起きだなと言われたことがあります。
勿論、最難関の資格試験である司法試験とは難易度の違いから、一概には比較できませんが、願わくば筆者にも8回目の受験で合格を勝ち取り、七転び八起きを実践してほしかったと思いました。
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