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日本人の協調性の原点を記録した映画「小学校〜それは小さな社会〜」
映画(小学校~それは小さな社会~)
都内の公立小学校を1年かけて撮影し、その日常を記録したドキュメンタリー映画です。私がこの映画を知ったのは朝のニュースで紹介されていたもので、興味を持って年末の慌ただしい時期でしたが観に行くことにしました。
父がイギリス人で母が日本人である山崎エマ監督が、この映画を撮るきっかけになったのは、ニューヨークで働いていた時に現地スタッフから協調性があり勤勉だと言われて、その原点が日本で受けた小学校教育であったと述べていました。
都内の小学校の4月1年生の入学式から翌年3月の6年生の卒業式までを、時系列的に追っていきます。教室での授業や学級委員の司会によるクラス討論会の他にも、運動会などの各種行事が紹介されていきます。
私がニュースでひときわ興味深く思ったのは、この映画が国民の教育水準が高いフィンランドでヒットしたことであり、フィンランドからの学生や関係者も実際に学校を視察して、その規律性と協調性に驚いたという感想が述べられていました。
フィンランドでは全員が一律に行動する運動会はありませんし、生徒が主導するクラスの討論会も存在しません。
勿論現実には小学校でも深刻ないじめが問題となっており、映画の中でも教員向けの講演会で講師が、この日本独特の協調性を重視した教育方針は、重要ではあるけれども「諸刃の剣」という表現をします。他人と協調するのは社会の基本でありながらも、そこに協調への強要、さらには同調圧力が生じる危険性があると論じています。
これはまさしくSNSでの同調圧力そのものであり、学校でのいじめにも直結する問題であると指摘できます。そうした現実問題を抱えながらも、監督自身はあくまでも学校の典型的な日常を描きたかったと述べています。いじめ1つを捉えてもそれだけで重大なテーマとなってしまい、映画の主旨も違ったものになると思い、今回は上記の講師の言葉に留めておいたのだと感じました。
学校というのはタイトルにもあるように「小さな社会」であり、実際の社会に旅立つ前の必要な準備期間であるとも言えます。勉強の進み具合や友達との付き合い方、さらに給食での配膳当番など、あらゆる日常が現実社会の縮図となって毎日繰り返されていきます。
入学式の打楽器演奏で、希望者選抜でようやくシンバルの演奏をつかみ取った女の子は、練習でうまく演奏できずに泣きながらも、本番の入学式では演奏できて、上手にできたと先生に褒められ、上手くできたと叫びながら廊下を駆けていくシーンがラストとなります。(写真は公式サイトより引用しました。)
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