平凡と明星 星くずと一番星 マッチとトシちゃん
前々回の記事「明星と平凡」のパロディーです。
マッチの不祥事が露見したとたん、大衆は一斉に彼を非難しました。不誠実で無責任だと。退所時にはヒガシからも辛らつなコメントがありました。確かに、問題を起こしたまま逃げ去ったといえるでしょう。
とはいえ、人間の本質とはそういうもの。易きに流されてしまう。芸能よりレース活動を優先しても、後輩の面倒を見なくても、婚外恋愛をしても、今まで誰も何も言わなかった。だから年を取ってもジャニーズ事務所にずっと居た。ずっとこのままでいいと。その方が楽、その方が得。きっと人間誰もがそう思う。彼を非難する人たちも、もしマッチの立場だったら彼のように生きたでしょう。彼は普通なのです。
誰だって腐敗する。権力を持ったら。
社会も世間も全く知らない10代でスターに。デビュー1年で紅白に出場し、20代でレコード大賞を取った誰もが知る有名人。自分ひとりでは何をどうしていいか全く分からなかったと思います。それが普通です。
そう、マッチは普通の人。顔もスタイルも、歌も踊りも、身体能力も頭脳も、才能も実力も、ひたすら普通。正に「平凡」。この上なく平凡。
実力で勝ち取ったものは何ひとつない。三冠を果たしたレコード大賞も、最優秀新人賞はアイドル人気によるもの。大賞と最優秀歌唱賞は明らかに事務所の力。でも、彼はそのことに引け目を感じることはありませんでした。
ジャニーズ事務所のことをニッキは「鎧」と言い、元THE GOOD-BYEのヤッチンは「ぬるま湯」、元光GENJIの大沢樹生さんは「強力な守り」と表現していました。それほどの力を持つ組織体。
漫然とジャニーズに居続けたマッチを不甲斐ないと世間は言うけど、彼は普通。凡人。人は易きに流れる。若くして事務所を出たトシちゃんが特別に高い志と強い覚悟の持ち主だっただけ。
トシちゃんが特別な魂の持ち主だっただけ。
実力を付けたい。本物になりたい。輝いていたい。スターであり続けたい。一番早く、一番強く光る星「明星」。目指すは芸能界の一番星。
1988年『抱きしめてTONIGHT 』でザ・ベストテンの年間第一位となった。各方面の思惑が入るレコード大賞などの受賞というかたちではなく、本物のトップに。
歌謡界の頂点に立った。では、これからどうする。アイドル事務所で何をする。これから何十年も生きていく。自分は年を取り、後輩は育つ。
これからどうやって自分を成長させていくのか。
もう自分は大人だから ここにはいられない
後ろ盾のない芸能界、そんな闇夜のような世界に飛び出すのは怖ろしかったでしょう。自由と引き換えに選んだ果てしなく孤独な銀河の旅。でも、トシちゃんにとって、流され続ける方がきっともっと怖かったのでは。男なのだから、いつかは独り立ちするときが来る。
近年、性別問題やジェンダー関連で「男だから女だから」と言うことが疑問視されています。だけど、私はいいと思う。新しい世界に挑むとき、一歩踏み出すとき、自分を奮い立たせるために「自分は男だから」と叫ぶのは。
だって、男だから。大人の男だから。