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あなたの賢さは 自分が得するためではなく
パリ五輪が終わりました。
ブレイキンがひときわ話題となった今年の夏。そして、日本におけるその夜明けを多くの人が思い出した夏。慎吾ちゃんの功績が改めて認識された夏。
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☆彡
「いつかきっと自分を認めてくれる人が出て来るはずだから、そのときを見てくれ!」 大下義博 1982年
42年前の1982年夏、慎吾ちゃんはステージの上にいました。芸能人としてではなく、渋谷で活動するセミプロ劇団の役者として。
慎吾ちゃんは元々、原宿の路上で踊っていたロックンローラー。それが、仲間の哀川翔さんに強引に誘われて芝居を始めることに。あまり気が進まなかったものの徐々に出番が増え、少しずつその魅力に気づき始めていたころでした。
慎吾ちゃんは当時大学生。工学部という、勉強が厳しいながらも卒業さえすれば就職に困ることなく、安定した将来が約束されるような身分。まだ10代だった彼は今後どうするか、迷いの中にいたのです。
カーテンコールで慎吾ちゃんは、涙を流しながら叫びました。
“ ボクは、まだお芝居もわからなくて、舞台なんかに立てる男じゃないけど、いつかぜったいがんばって、きっと自分を認めてくれる人が出て来るはずだから、そのときを見てくれ!” 零心会公演千秋楽 1982年
「風見慎吾 笑っちゃいまストーリー」 shogakkan 1983
そこから不思議な巡りあわせが連なり、芸能界入りしテレビに出ることに。翌年発売したデビュー曲は大ヒットし一躍人気アイドルに。しかしながら、彼はさらなる迷いの中に居ました。
「ボクなんか、まだ先が見えないからマジに悩むようになってきて、ホント、泣き言言って寝れないこともあるんだ。いま何をすればいいのかわかんなくて、すっごく、いますっごくアセッてます!」 shueisha 1983
そんなときに出会ったブレイクダンス。夜な夜な孤独な練習を重ね、84年夏のコンサートツアーで披露。ツアーは大成功でしたが、そのころリリースしていたレコードの売上げは芳しくありませんでした。
これからどうしようか。このまま芸能活動に力を注ぐか、それとも大学に戻って勉強するか。いつまでもアイドルではいられない。将来を考え不安に襲われる日々。
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慎吾ちゃんは幼いころから好奇心旺盛で利発、近所でも評判の頭のいい子。学業も優秀で、広島で有名なカトリック系の超難関校に進学。あとは大学にふつうに通いさえすれば確実な未来が得られるのです。でも…
「ブレイクダンスを普及、っていうか、みんなで楽しく踊ろうよと、そういう意志の伝達をやりたい。」 BP New Year 1985
Be Men for Others, with Others 広島学院
踊るという自己表現やその喜びが一般の若者にはまだ認識されていなかった昭和。そんな日本の子どもたちに、ダンスの楽しさを分かってほしい。
あなたの賢さは いつか大人になったときに
自分が得するためではなく
自身のアイディアと創作能力で人々に新しい喜びや可能性を与えることができるかもしれない。だから…
「先の事を考えて一時期不安なときもあったんですけどね、チャレンジしますよ。いま、意気込みがフツーじゃないですからね。やります!」
magazine h 1985
ブレイクダンスで賭けに出たのです。
「 ほんとはね、やろうと思ったら、もっとすごい技ができるんですよ。でも、あえてそれをやってないのは、自慢げにすごいことを見せるよりも、簡単でもみんなで踊ればこんなに楽しいんだよ、っていうのをわかってほしいんです。」 BP New Year 1985
ー 大きな夢だよね
「ほんの何人かでもいいから子供たちが街角や学校でダンスして遊んでるみたいな、そんな光景を目撃できたら最高にハッピーなんだけどね!」
shueisha 1985
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