少年隊は変えてない
数か月前、中居クンMCで古今東西のダンスを紹介する番組「ダンスな会」が放送されました。その中で慎吾ちゃんが「日本のダンスを変えた」カテゴリーで取り上げられたことについて以前書きました。
そのカテゴリーでは慎吾ちゃん含め四組がピックアップされていたのですが、少年隊もそのうちの一組としてここで紹介されていました。
うーん、ちょっぴり違和感。もちろん私個人の感覚で、決して彼らをディスっているわけではありません。
TAKAHIRO(上野隆博)さんという専門家によるご推薦だし、それが間違っているというのではもちろんないです。こういうことに正誤はなく、それぞれの認識なので。ただ、彼は世代的に少年隊をリアルタイムで実感してはいないはず。
今まで何度も書いてきたように、少年隊はデビュー時から完成されていました。その時点で世の女の子たちには既におなじみの存在で、ランキング番組では一位の常連となり、紅白に何度も出場しました。世界進出が計画されるほどの実力でした。
しかしながら…、彼らは一般世間においてあまりインパクトがなかったのです。あ、いえ、そう言うと語弊があるのですが、なんと言うか、大衆にとって「引っかかる存在」ではなかったのです。
少年隊のダンスは完璧でした。ただ、パーフェクトな存在というのは、テレビの前でなんとなく座っている普通の視聴者の意識を捉えないのです。彼らの流麗なダンスは、文字通り綺麗にテレビから流れ出て行くだけでした。
彼らのダンスは優等生のダンス。どんな要素も安定の90点。するとどうしても「面白み」がなくなってしまう。世の男の子たちも別世界を見せられているように感じて、その隙の無さを敬遠していたでしょう。彼らの踊りに憧れたり真似て踊ったりするような現象は起こることなく、遠目で観る対象に。世間の人々の意識や体内に彼らの踊りが染み込むことはありませんでした。少年隊のダンスは昭和の巷にムーブメントを起こしてはいないのです。
彼らのファンはたくさんいましたが、彼らの踊りに魅了されてファンになったというより、大好きな少年隊がすることはダンスだろうが歌だろうが何だろうが好きだから、といった傾向にあったと思います。ジャニーズファンとそれ以外にはかなりの温度差がありました。
曲をリリースすれば女性の固定ファンがもれなく買ってくれてベストテン番組に出られる。けれどこの時代、彼らのダンスを認識できるような感性を持つ人たちは既にアイドルや芸能に興味はなく、歌番組を観ることもあまりなかったと思います。テレビに影響を受けやすい小さな子供たちはローラースケートを履いた光GENJIに目を奪われました。
むしろ、少年隊が高度な踊りを提示したことによって、世の若い人たちが「ダンスは上手く踊れないとカッコ悪い」「ルックスやスタイルがいい人じゃないとダメ」「ダンスは見るもの」と認識し、「自分が実演するなら歌か楽器かなー」と思って歌唱演奏志向になり、そのうねりが80年代後半のバンドブームを引き起こした、そういう視点において「日本のダンスシーンの陰りを招いた⇒変えた」と言えるかもしれません。
と、上記は勝手な「こじつけの後知恵」ではありますが、実際90年代初頭、少年隊をはじめとする歌って踊るアイドルの人気終息により、メジャーシーンにおけるブロードウェイ風ダンスの流れが途絶えた感がありました。入れ替わるように非ジャニーズ界隈からストリート系ダンスが台頭してきたように思います。
その後、SMAPなど等身大のキャラクターを前面に出すタイプのアイドルが大衆の支持を得ました。そして今、四半世紀の時を経てダンス文化が振興し人々の鑑賞眼も養われ、ネット動画の普及もあり、やっと少年隊のダンスを堪能できる時代が来たと思うのです。しかしながら、それはもはやライブではありません。
そういうわけで、少年隊は日本のダンスを変えたというよりも「知らず知らずのうちに日本人のダンス鑑賞眼を高めていた」というのがしっくりくるのではないかと思っています。そしてそれは、先輩ジャニーズのトシちゃんが導いてきたことでもあるのです。