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踊りたくなることありますか
先日のある新聞記事の見出し文です。文頭は「踊る阿呆に見る阿呆…」。
読者へのアンケートで作られる記事で、回答者は60代以上の人がほとんど。ちなみに回答は「はい36%、いいえ64%」。世代的にも妥当な割合ですね。
今まで何度も書いてきたように、昭和の日常にダンスという概念はありませんでした。
以前も紹介した、九州の片隅に住んでいた当時中学生、現在51歳のとある男性の言。
「ダンスなんか、踊れるわけがないのよ。ないんだから、なかったんだから、小さい頃。」
― ああ、ダンス文化はなかったんですね? 先生の時代。
「なかった。もう、かろうじて風見慎吾さんが『涙のtake a chance』で、もう本当に。」「一人だけ、孤軍奮闘していたイメージが。」
― 主流じゃなかったってことですね、ダンスがね。
「そう、まったく。」「踊ってる人なんか、まぁ見たことなかったよ。」
博多大吉 TBSラジオ「たまむすび」抜粋 2017年5月3日
「いいえ」の理由の筆頭は「上手くないから」。でも、私が思うに、実態として最もリアルなのはきっと「恥ずかしいから」。
「中学校の体育祭の練習中、男子から私の動きが変だと馬鹿にされた。」
62歳女性 回答者
女の子の場合、習い事としてバレエやジャスダンス、体育祭などでのチアリーディングの機会がありました。でもそれは、「スタイルがいい子」じゃないと踏み込めない特別な世界。
踊るということは全身を見られること。表現のために身体を使うこと、またそれを他者に見られることは、不格好な私にとって抵抗があることでした。そして当時、多くの人にとっても。
「ダンスは究極の自尊感情の表現。自分を否定する人が見ているかもと思ったら、よほど自信がない限り絶対に踊れない。」 53歳女性 回答者
一方の「踊りたくなる」派の代表格は、かつてディスコで “鳴らした” 人々。ジョン・トラボルタのように踊る70年代のディスコブーム。でも、それは都市部の若者、いわゆる「街の子」にだけ用意された空間、限られた世界。
当時のたいていの男の子の日常は、探検ごっこしたりチャンバラごっこしたり釣りしたり、野球したりプラモデル作ったりのんびりテレビ観たり。それが、彼らの生活空間での行動でした。
「黒人の子供なんか、音楽聞くと自然に体でリズムとってるよね。昔だったらそれこそ盆踊りとかあった* のに、いまの日本の子供にはそういうのってぜんぜんないと思うんだ。」 *日常や生活空間で踊る様子の意
風見慎吾 shueisha 1985
「音楽を聞くと自然に体でリズムをとる、そこら辺で自由に踊る、日本の子供にはそういうのがぜんぜんない」
それは恥ずかしいから。本当は皆、体を動かすのは好き、リズムに乗るのは楽しい。だけど…
「 よほど自信がない限り 絶対に踊れない 」
「僕は、部屋の隅でひとりでラジオドラマを聴いているような目立たない少年でした。足も速くないし、水泳も得意ではなく、コンプレックスもありました。」 TAKAHIRO/上野隆博(ダンサー・振付家) UR PRESS vol.64 2021
エンターテイメントの殿堂、ニューヨークのアポロシアターの舞台に一人で立たったダンサーのTAKAHIROさんでさえ、そんな子供のひとりでした。
記事の筆者はこう記しています。
部活動、授業、習い事、祭りなどでは大抵、振り付けが課され、周りと自分の動きを合わせることが求められる。心ない一言や冷笑が「踊りが嫌い」を生むのかもしれない。 寺下真理加 朝日新聞 be 2022年7月30日
振り付けが ‘課され’ ‘合わせる’ ことが求められる
そんな風潮の80年代半ば、テレビを通じてひとつの革命が起こります。
「自慢げにすごいことを見せるよりも、簡単でもみんなで踊ればこんなに楽しいんだよ、っていうのをわかってほしいんです。」
「(バックダンサーは単に上手い人よりも)踊っているときの顔見て、いちばん気持ちよさそうにしているヤツを選んだんだ。」
風見慎吾 BP, shueisha 1985
それまでは「カッコ良く見せるため」「自分に自信がある人がやること」、それがダンスでした。そんな中、踊りの本質「やってみたい、楽しい! 」を出発点にした現象が生まれました。
「うわっ、こんな不思議に…。同じ人間なのに不思議に見える動き、やりたいっっ!!!」 TAKAHIRO/上野隆博 (ダンサー・振付家) GROWING REED J-WAVE 81.3FM 2019/02/24
「勇気がなくて怖くて、クラスでいつも目立たない端っこに近いところにいた自分が、一番前でやってるような子がするような目立つことをしたいと。突き動かされたんです。それがビッグバン、宇宙の弾き。」
TAKAHIRO/上野隆博(ダンサー・振付家) イントロ NTV 2022年5月15日
☆彡
「子供たちが街角や学校でダンスして遊んでるみたいな、そんな光景を目撃できたら最高にハッピーなんだけどね!」 風見慎吾 shueisha 1985
最高にハッピーなんだけどね!
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「風見慎吾さんは自由なんですよ! 好きに踊って。なんて自由なんだ!」
TAKAHIRO/上野隆博(ダンサー・振付家) シューイチ NTV 2022年5月15日
「音楽がかかると体が動き出す。微動だにしないでいられる人が不思議でならない」 50歳女性 回答者
「スポーツに負けない汗かいて、スポーツ以上の爽快感! 道具なんかいらない、審判もルールもいらない、音楽さえあればいい。
踊る阿呆に見る阿呆 同じ阿呆なら踊らにゃ損々
ポケーッと見てないで、キミもやってみたら?」 風見慎吾 shueisha 1985