見出し画像

イケメンじゃなければよかったのに

「顔がイイ。カッコイイ。ひょうきんで踊りもウマイ。芝居もできるしもうサイコー !」    イベントに押し寄せた600人の女子高生たち   
「僕ブレイクダンスしちゃいます!」  magazine h  1985

以前も書いたように、慎吾ちゃんがイケメンアイドルだったからこそブレイクダンスが普及した一方、そうだったが故に彼のアーティストとしての功績が認知されにくかったという説を持っております。

ルックスの良さは、その持ち主の知性から他者の目をそらせるというのは結構な定説です。

On account of his good looks, people underestimated his intelligence.
【英語例文】彼はイケメンだったせいで、知性が過小評価されていた

DSC01139 - コピー

お顔も頭脳も一級品

これが例えば見栄晴クンだったら。彼も欽ちゃんファミリーで慎吾ちゃんと年も近いですが、アイドルという位置づけではありませんでした。理由は明白です。もし彼が踊っていたとしたら。きっと世間から「結構芸があるヤツじゃないか」と、能力に着眼してもらえたと思います。若者や子供たちが彼に憧れマネして踊るかどうかは別として。

近年、歌って踊れる、仮名トロワさんという芸能人がいるのですが、その人を語るにあたって慎吾ちゃんが引き合いに出されるとき「でもトロワさんはアイドルじゃないしね(=実力派だもんね。だから慎吾ちゃんとは違う)」みたいに言われたりします。ここでふと思う。彼がたまたまルックスが良いタイプじゃなかったからそういう存在となる流れにあった、という見方もできるのではないかと。もしルックスが良かったら彼はどういうふうに捉えられる運命にあっただろう。

例えば、ルックスがいまひとつでアイドルとして売れなくて暇で文芸系映画に出演したら実はたいしたことないのに「実力派俳優」みたいな扱いになった、ということはわりとあります。「え、演技も能力もフツーじゃん」ぐらいでも、イケメンじゃないことがかえって本格派っぽく見えたりして。大衆はなんとなくでしか分からないから、マスコミや宣伝次第で簡単にイメージコントロールを受けちゃいますね。(トロワさん自体に実力がないという意味ではないです! このへん意図がうまく伝えられなくてもどかしい。)

その反対にイケメンゆえにアイドルにされちゃって、そのことで非本格派に見られてしまうこともよくあることです。特に80年代。

画像5

このころデビュー当時と別人 TBS  1985

特に慎吾ちゃんはカッコイイに加え、めちゃくちゃカワイイ男の子でした。1984年の夏、岡山のイベントに行く新幹線で一緒になったバンドSALLYのメンバーは、手記で慎吾ちゃんのことを「白いサマーセーターに身を包んだ、いかにも芸能人といった感じの美少年」だったと書いていました。同じ夏、万座ビーチのイベントで慎吾ちゃんを見た沖縄の女の子の感想では「色が白くて可愛くて、やっぱりスターは違うなぁと思った」と。そんなこんなで、本人の意に反しワーキャーのアイドルになってしまった慎吾ちゃん。

画像6

万座ビーチでブレイクダンス shueisha 1984

慎吾ちゃんがもし可愛い系イケメンじゃなかったらどうだっただろう。アイドルと呼ばれることもなく、俗に言う「アーティスト」みたいに「実力派(ダンスの)」あるいは「文化人」的な扱いだったんだろうか。その名の通り、彼の本質はインテレクチャル

昭和の濃いハンサム系ではなく、今どきの繊細なイケメン風

昭和末期、本当は慎吾ちゃんに感化されて踊り始めたのにアイドルに影響を受けたと思われるのがシャクで、そのきっかけとして「フラッシュダンスです」「映画『(横文字)』です」「BBです」「ハマーです」って洋モノ出していた男の子は全国に25万人くらいいたと思います。数字の根拠は得意の妄想です。中学生ぐらいになると見栄張って本場ぶったりしたくなるもんね。正に中二病。それだけアイドルは軽いイメージを持たれていました。

「風見慎吾さんという存在。欽ちゃんファミリーなんですけど、油断してたんですよ。我々は風見慎吾さんのこと、甘く見積もっていました。すごい優しい、ただの可愛らしいアイドルだと思ってたんですけど…」
マキタスポーツ「ザ・カセットテープ・ミュージック」 BS12 2020/4/12

“アイドルになる気なんてなかったんですけどね”   oricon  1983

ところで慎吾ちゃんは近年、「80年代アイドル」の括りで取り上げられますが、世間でのイメージは「欽ちゃんファミリー」が一番強いはず。当時、彼はテレビではそこまでアイドルしていませんでした。ジャニーズのように恒常的に歌番組やアイドル系バラエティー番組に出ていたわけじゃないし。

どこでアイドルしていたかというと、雑誌。ここでかなりの存在感があり、なぜか上半身着てナイ率が高いのです! ビーチの波打ち際、プール、温泉、シャワー。上半身に限らず。80年代ってそんな感じでした。そして女子たちはそんな切り抜きを透明下敷きに挟むのです。

画像5

アイドル雑誌って罪深い  shueisha 1983

尖りがちな世間の男子中高生がアイドルを認めたくないという気持ちはまぁ分かります。「女の子にモテたくて踊っているわけじゃない、アイドルの真似じゃないんだ」と。だから慎吾ちゃんから影響を受けたとは言わずに横文字並べたり、あれはヒップホップじゃないとイキってみたり。

そう言われるのも二枚目の悲劇。イケメンじゃなければよかったのにね。

100万回の3

写真集『いま。風見慎吾』 発売広告    shueisha 1984

☆彡

だからって見栄晴クンみたいだったらよかったのに、という理屈には決してなりません。