パラダイスキラー(Paradise Killer)の感想
コンセプトでしょうか。
リゾートとシティポップの組み合わせって憧憬といいますか、情勢も相まって、縁遠い希薄な存在で。眩しい海、パームツリー、天上の人々と神の存在、象徴的な団地…そして殺人。
不思議な魅力を放っています。
なんともクセが強い分、愛着もあり、終わっちゃったなぁとさみしさもあり…。オープンワールドのクローズドサークルって言葉遊びのようですね。パラダイスキラーの感想になります。
この単語の並びを見るとグラスホッパー・マニファクチュアさんの「花と太陽と雨と」を彷彿とさせます。
須田ゲーは異色の世界観で有名ですが、本作もその影響があるようで、難解な言い回しや舞台設定で、ゲーム開始時は文章そのものの意味を理解することに一苦労です。
仕事だ!キャサリン!
はじめに。
とにかく音楽が大変素敵でした!
まさにコンセプト通り、シティポップは憧れで出来ていると友人が評しておりましたがその通りだな〜。OPの波の音を誰が嫌いになれるでしょうか。ずーっと聞いていても耳にノイズが残らない、粒揃いの良質なゲームサウンドトラックです。
ただ公式から驚きの10時間ループ動画があがっています。需要!なっっが!
別の記事で「ヴェイパーウェイヴ」と書かれており、なるほど確かに。
MACINTOSH PLUSのこのアルバムでしょうか。
UIやインタラクト演出で影響されているように見受けられます。
道中、ちょっとしたノイズ音が聞こえて不思議に思っておりましたが、アイテムが近づくとジリジリとしたSEが鳴っていることに気づいてからは、そんなに気にならなくなりました。ゲームらしいところはゲームらしく作られたプロの仕事…!
特にオープニングの島へダイブする時とエンディングで声が聞こえてきた瞬間はおお~となりました。マップ移動で曲名が表示されるのって良いですよね。
デザインでは、英語版メインフォントが大文字が特徴的なCentury Gothic系とモダンなAbelやDIN系です。スターライトは昔のPCのGUIっぽいのかな。
Century Gothic系は特徴的な分、あまりゲームではお目に書かれないので心が躍ります。
インベントリアイコンはわざと低解像度にしてPS1やドリームキャストを彷彿とさせるようにしてあります。(本当はResident Evilのように3Dで回転させたかったそうです)
どの要素を拾い上げてこのアイテム作ったんだろうかと思うくらいつよめの遺物たち。
背景(ENVIRONMENTS)もまた不思議なもので。
タワマン、プール、艶めくドクロや謎の巨像、屋根瓦の家屋に議事堂…。社会階級がそのまま貧富の差へ繋がっているのでしょうか。中にはおどろおどろしいマップもありましたが、大半は明るいものです。
アートブックに、一部には日本の影響を受けていると明記されていました。そんなの日本にあったっけ…?というぐらい局所的スポイトですが
それもまた面白いですね。onigiri!
そうそう、朝から夜までライティングが施されていたおかげで移動の退屈を紛らわせて、美しいサンセットビーチも拝めました。
移動時間にほぼロードを挟まないのもありがたいことです。
電柱が表に出ているところもまた日本の影響かもしれません。
ゲーム中では運よく序盤で足湯から二段ジャンプを獲得できたのでキャラコンでごり押しできる場面も多かったです。中にはギミックを解く前に先に進んでしまい、正規ルートを後からやり直したりする場面もありましたが、ゼルダよろしく遠景を眺めて「あの山いけそう…!」というのは純粋にわくわくしました。
フィールド自体は島一つ分なので、移動できる距離ではありますが、目で覚えている風景と、平面マップの記憶が結び付かずタクシー(ファストトラベル)も有料な上に、セーブとインクリボン方式なため肝を冷やしていました…。使いどころが分かった終盤はガンガン使ってました。アセット管理とは…今考えると、足湯からスキルを獲得できるってどういうことなんでしょうね。
世界観もまたローカライズの影響なのか、原文からなのか汲み取り難い部分も多く、日本語を読むのも一苦労でした。シンジケートってなぁに?
その分、一つ一つを紐解いていくと、それぞれのキャラクターの抱えているものは案外普通の、それこそどこかしら共感できるような作りになっておりました。しかし話を聞いていくうちに、だんだんと嫌な予感もしてきます。
身分の違う恋人を助けたい、知らないことを知りたい、強く格好よくなりたい、伴侶と新しい普通の世界で生きたい…きっかけになってしまったのが、新しい島への移住であり、殺人に繋がってしまったのは残念です。
私はクリムゾン・アシッド(CRIMSON ACID)が好きだったのですが
残念ながら最終的には処刑してしまいました。
というか大半が死んでしまった。
意地でもヘンリーは助けてやる!と思って頑張ってみたものの、いざ釈放にこぎつけても、「悪魔憑きで庶民」のヘンリーは次の島に行けないんですよね…。
切ないな
終盤にワン・ラスト・キスが語り始めたときは
「全部知ってるなら最初から教えておくれ…」と思いましたが、自分の足で話を聞いてきたからこそ、
説明で充足を実感できた部分でもあります。
殺人事件というシステム上、解決(裁判)で収束するようにはなっているのですが、一本道の解答が用意されておらず、万人がアドベンチャーゲームに求めている形からは逸れているため、多分、人を選ぶタイトルではあるんでしょう。
ただ、島中を駆け回り、関係者から何度も話を聞き出し
自分なりにメモを照らし合わせ考えて、
一問一答、結論を出していく…というのは、
手間ながらも、楽しいひと時でした。
パラダイスキラー楽しませて頂きました、どうもありがとうございました。
あなたも月に辿り着きますように。
写真引用
名作がDSで蘇る『花と太陽と雨と -終わらない楽園-』
https://www.inside-games.jp/article/2007/12/04/25503.html
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