「総合職」という名の社畜
日本の大企業で広く採用されている「総合職」。一見すると、幅広い業務経験を積むことができる魅力的な職種に思えるかもしれない。
総合職とは、配置転換や転勤を前提とし、将来の幹部候補生として様々な部署を経験する職種を指すことが多い。しかし、実態は企業の都合に振り回される「社畜」そのものだ。この制度が従業員にもたらす弊害は計り知れない。
なぜ総合職は社畜になってしまうのか?
そもそも、この原因を理解したいしておきたい。あくまで筆者の見解にはなるが、ここでは大きく5つの問題点を挙げたい。
総合職の問題点①:専門性の欠如
総合職の最大の問題は、専門性が身につきにくいことだ。数年ごとに異なる部署に異動させられるため、特定の分野で深い知識や経験を積むことが困難になる。
結果として、ジェネラリストとしての能力は身につくかもしれないが、スペシャリストとしての価値は低くなる。これは転職市場での評価にも直結し、総合職経験者は専門性を求められる職種への転職が難しくなる。
これにより、勤務先に隷属することとなり、社畜と化すのだ。
総合職の問題点②:過度な残業と長時間労働
総合職は往々にして「何でも屋」として扱われる。新しい部署に配属されるたびに一から業務を覚え直し、さらに幅広い業務をこなすことが求められる。これは必然的に長時間労働につながる。
また、管理職への昇進を目指す過程で、残業や休日出勤が当たり前になってしまう風潮もある(働き方改革で徐々に無くなりつつあるが)。
結果として、ワークライフバランスは崩壊し、私生活まで犠牲になることもある。
総合職の問題点③:キャリアパスの不透明性
総合職のキャリアパスは往々にして不透明だ。昇進基準が曖昧で、単に年功序列に基づいていることも多い。自分の適性や希望とは無関係に配属が決まることもあり、自己実現も困難になる。
結果として、自分のキャリアを主体的に構築することが難しくなり、会社任せのキャリア形成を強いられる。
総合職の問題点④:給与体系の不合理性
多くの日本企業では、総合職は年功序列型の賃金システムが適用される。これは、個人の能力や成果が適切に評価されにくい制度だ。若手の頃は給与が抑えられ、中高年になって急激に上がるというパターンも珍しくない。このため、若いうちから高い能力を発揮しても、それに見合った報酬を得ることが難しい。
総合職の問題点⑤:メンタルヘルスへの悪影響
総合職は高ストレス環境に置かれやすい。常に新しい業務に適応することを求められ、長時間労働も相まって、精神的な負担が大きい。
また、自己実現の困難さや専門性の欠如による自信の喪失も、メンタルヘルスに悪影響を及ぼす。バーンアウトのリスクも高く、長期的なキャリア形成の障害となりうる。
遅々として進まない「総合職制度の見直し」
一部の日本企業では、総合職制度の見直しが始まっている。ジョブ型雇用の導入や、専門職制度の拡充などが試みられている。しかし、長年続いた制度を変更することは容易ではなく、多くの企業では依然として旧来の総合職制度が維持されている。
そのため総合職として働きながらも、個人でキャリアを構築する努力が必要だ。専門性を獲得するための自己投資、例えば資格取得や副業などが重要になる。また、自身のキャリアについて主体的に考え、必要であれば転職やキャリアチェンジも視野に入れるべきだ。
「総合職」からの脱却
「総合職」は、企業にとっては都合の良い制度かもしれないが、個人にとっては百害あって一利なしの制度だ。専門性の欠如、長時間労働、不透明なキャリアパス、不合理な給与体系、メンタルヘルスへの悪影響など、問題点は枚挙にいとまがない。
これからの時代、個人が自身のキャリアを主体的に構築し、専門性を磨いていくことが重要だ。昨今の自民党総裁選でも「解雇規制緩和」が主要な政策となっている。もしこれが実現すると、もはや荒野に放り出される社畜になりかねない。
「総合職」という名の社畜制度からの脱却は、日本の労働環境を改善し、個人と企業の双方にとって有益な変革が起きることを望みたい。
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